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AIエージェントとは — 任せられる業務と導入前に決めること

最終更新日 2026.10.11

監修:株式会社UNPLACED

AIエージェントを名乗る製品は増えましたが、どの業務をどこまで任せてよいのかは、製品の説明を読んでも見えにくいままです。AI事業者ガイドラインと情報通信白書、デジタル庁の資料をもとに、定義と仕組み、生成AIやRPAとの違い、任せる範囲の線引き、導入前に決めておく権限・承認点・操作履歴のルールを順に整理します。

結論:AIエージェントとは、目標に向けて手順を組み、作業まで進めるAIです

AIエージェントとは、人が渡した目標に向けて必要な作業を自分で組み立て、検索や社内システムなどの道具を使って作業を進めるAIのことです。AI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月31日)は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義しています※1。

チャット型の生成AIが文章を返して終わるのに対し、AIエージェントはメールの下書きを保存したり、表に入力したりと、画面の中の操作まで進めます。そのぶん、間違えたときの影響は文章の誤りより重くなります。どこまでを任せるかという線引きを先に決めることが、導入でいちばん大切な作業です。

問い答え
AIエージェントとは目標を受け取り、手順を組んで道具を使い、作業まで進めるAI
生成AIとの違い文章を返して終わらず、メールの送信やシステムへの登録といった操作まで行う
任せやすい業務調査、照合、下書き、社内向けの定型処理のように、結果を人が確かめられる作業
人が持つ業務社外への送信や支払いの承認、採用・評価・契約の判断
導入前に決めること渡す権限、人が止めて確かめる承認点、操作履歴の点検

導入の前に決めることは、渡す権限、人が止めて確かめる承認点、あとから追える操作履歴の3つです。2026年3月のガイドライン改定でも、人間の判断を介在させる仕組みの構築や最小権限の設定が、AIエージェントについて留意すべき事項として加わりました※2。製品を比べる前にこの3つを書き出せるかどうかで、試験運用の進み方が変わります。

AIエージェントの定義と仕組み — 国の資料はどう説明しているか

国の資料では、AIエージェントは、目標や自然言語の指示を受けて自動でタスクを決め、必要に応じて細かく分けて実行するAIと整理されています※3。令和7年版の情報通信白書によると、AIエージェントを標榜するサービスが多く開発・展開されるようになったのは、2024年後半からです※3。白書は、定義が開発企業によって異なると断ったうえで、AIエージェントと呼ばれるものの傾向をこのように整理しています。

ガイドライン※1の定義で押さえたいのは「自律」の幅で、脚注には、高度な自律状態だけでなく、ある程度の自律性を持つものも含むと書かれています。人の承認を待ちながら一歩ずつ進む仕組みも、この定義ではAIエージェントの一種です。複数のAIエージェントが自律的に意思決定し、行動を起こす仕組みは「エージェンティックAI」と呼ばれます。ガイドラインは、これをAIエージェントより包括的な概念として脚注で紹介しています※1。

わかりやすく言い換えると:作業ではなく目標を渡すAI

出張の手配で比べると、違いがつかみやすくなります。チャット型の生成AIには「大阪駅から歩いて10分以内で、1泊1万5千円以下のホテルの候補を3軒挙げて」と作業を1つずつ頼み、予約は人が自分の手で進めます。AIエージェントには「来週火曜の大阪出張を、社内の出張規程の範囲で手配して」と目標を渡し、候補探し、規程との照合、予約画面への入力までを任せる、という頼み方です。

AI事業者ガイドラインも、2026年3月の改定で、旅行先の予約や提案をするエージェントをAIシステム・サービスの例に加えています※2。この例で人が持つべき場面は、予約を確定して費用が発生する直前です。目標だけを渡すと、AIは目標に向けて最後の手順まで進もうとするため、どこで止めて人に確かめさせるかを先に決めておく必要があります。

仕組み:考える・道具を使う・結果を見て次を決める

AIエージェントの中は、役割の違う部品の組み合わせでできています。主な部品と、請求書の照合に当てはめた例を表にしました。

部品役割請求書の照合での例
考える部分(大規模言語モデル)目標を手順に分け、次に何をするかを決める「照合」を、読む、突き合わせる、差異を書き出す、の3段に分ける
道具(外部ツールとの連携)検索、メール、表計算、社内システムを操作する会計システムから支払予定の一覧を取り出す
参照する情報社内文書や過去のやり取りを読み、判断の材料にする経理規程を読み、支払条件を確かめる
結果の確認操作の結果を読み取り、次の手を変える金額が合わない行だけを担当者に回す

定義にある「環境を感知し」は、道具を使った結果を読み取り、次の行動を変える部分に当たります※1。道具や社内文書とのつなぎ方には、共通の方式も使われ始めています。デジタル庁は2025年10月、文書レビュー用AIエージェントの開発に向けた情報提供依頼書を出しました※4。その中で、RAGやMCPを活用してガイドラインを参照する方式を、提案を求める技術領域に挙げています。RAGは社内文書などを検索して回答の材料にする仕組みで、MCPはAIと外部の道具をつなぐための共通の取り決めです。

仕組みの上で注意したいのは、AIが示す理由と実際の処理が一致するとは限らない点です。2026年3月の改定では、大規模言語モデルの根拠提示は内部の決定ロジックの説明ではなく、もっともらしい理由を出力しているにすぎない旨が明記されました※2。AIエージェントが何をしたかは、説明の文章ではなく操作の記録で確かめます。

AIエージェントの種類 — 自律の度合いと動く場所で分ける

製品名で並べるときりがありませんが、業務で使うときは「どこまで自分で進めるか」と「どこで動くか」の2つの軸で分けると判断しやすくなります。自律の度合いで分けた型を、向いている作業と並べました。

型動き方向いている作業
提案型調べて案を出し、実行は人が行う調査、比較、文書の下書き
承認型手順を進め、決めた地点で人の承認を待つ社外へのメール送信、システムへの登録
自動実行型決めた範囲の中では承認なしで実行する社内向けの通知、定型の集計

動く場所で見ると、チャット画面の中、メールや表計算などの業務アプリの中、ブラウザやパソコンの画面の上、自社で開発したシステムの中の4つに分かれます。画面の上で動く型は、人の代わりにマウスやキーボードを操作するのが特徴です。同じ「AIエージェント」でも、触れられるデータと操作できる範囲は動く場所で変わるため、権限の決め方も変わります。

1体ですべてをこなす型のほかに、調達と在庫の管理を別々のAIエージェントが受け持つように、複数のエージェントが分担する型もあります※5。

AIエージェントを表すイメージ。白い机の上に2本のリボンが道のように伸び、灰色のピンが並んだ先の交わるところに黄色いピンが立っている構図

生成AI・RPAとの違い — 手順を決めるのは人かAIか

違いが表れるのは、手順を誰が決め、どこまで実行するかという点です。総務省のガイドブック※6によれば、RPAは、普段人が行う定型的なパソコン操作をソフトウェアのロボットが代わりに行うものです。処理のルールを定義した「シナリオ」に沿って、表計算ソフトや業務システム、メールなど複数のアプリケーションをまたいで動きます。チャット型の生成AIは指示に答えて文章や案を返し、AIエージェントは目標から手順を組んで操作まで進めます。

比べる点チャット型の生成AIRPAAIエージェント
動かし方人が1回ずつ指示する人が作ったシナリオで動く人が目標と任せる範囲を渡す
手順を決めるのは人人(シナリオを作るとき)AI(人が決めた範囲の中で)
得意な作業要約、下書き、案出し大量の定型操作の繰り返し調べて判断し、複数の道具を使う作業
誤りの出方もっともらしい誤りを文章で返す例外や仕様変更がなければ指示どおりに動く※6判断の誤りが操作として実行される
人の関わり方出力を読み、使うかを決める例外への対応とシナリオの保守承認点で確かめ、操作履歴を点検する

RPAとAIエージェントの違い — 決めた手順か、手順を組むか

RPAの強みは、決めたとおりに動くことです。総務省のガイドブックは、RPAはシナリオで定義された指示どおりに動作するため、例外的な状況や仕様変更の場合を除いて処理を誤ることはないと説明しています※6。そのぶん、書式が取引先ごとに違う書類の読み取りや、内容に応じた振り分けのように、その都度判断が要る作業は苦手です。

同じガイドブックは、RPAの自動化には3段階のレベルがあるという整理を紹介しています※6。AIを搭載した2段階目以上であれば、その都度判断を要する非定型の作業も自動化できるという説明です。ただし、いま普及しているRPAツールは1段階目でAIを含まず、AIを搭載した他のツールと組み合わせて使う形です※6。

実務では、判断が要る部分をAIエージェントに、確定した入力をRPAに分ける組み合わせが現実的です。たとえば、書式がばらばらの注文書から品名と数量を読み取り、確認用の一覧を作る作業はAIエージェントに、確認済みの一覧を基幹システムへ登録する作業はRPAに任せます。すでにRPAで動いている処理を置き換える必要はなく、例外として人に回っていた作業から試すと、前後の差を比べやすくなります。

チャット型の生成AIとの違い — 答えを返すか、操作まで進むか

チャット型の生成AIでは、出力された文章を人が読み、使うかどうかを決めてから、転記や送信も人の手で行うのが普通です。誤りがあっても、人が読んだ時点で止められる構造です。AIエージェントはメールの送信やシステムへの登録まで自分で進めるため、誤りがそのまま操作として外に出るおそれがあります。

2026年3月の改定では、AI事業者ガイドラインにAIエージェントのリスクが追記されました※2。追記されたのは、自律的な行動による人間の意図しない動作、連携先が増えることによる攻撃対象の拡大、内部データが不正に外部へ送信されるリスクなどです※2。どれも、AIが文章を返すだけなら起きにくく、操作の権限を持ったときに表に出るものです。生成AIの利用ルールをすでに作っている会社でも、AIエージェントについては「操作」の決まりを足す必要があります。

AIエージェントの業務での例 — 白書とデジタル庁の資料から

AIエージェントの業務での例には、調達・在庫の管理、空調機の点検、設備の故障診断、経費精算、行政の文書レビューがあります※5※4。いずれも令和8年版の情報通信白書とデジタル庁の資料に載っている例で、白書の例は企業の発表やヒアリングにもとづく紹介です。実証実験や試験運用の段階のものも含まれます※5。

業務資料に載っている内容段階
調達・在庫調達や在庫の管理を受け持つ複数のAIエージェントを組み合わせ、輸送や在庫補充の判断、生産スケジュールの最適化を目指す(製薬会社)※52025年12月に実証実験の開始を発表
点検・修理作業員が身に着けた端末の映像から、空調機の点検・修理作業の抜け漏れを自動で確かめ、結果を担当者のスマートフォンに知らせる(空調機メーカー)※5自社で開発
設備の故障診断見つけた異常をテキストで質問すると、故障かどうかと、故障の場合の原因と対策を示す(設備図面や過去の保全記録を取り込み)※5共同で開発・導入
経費精算領収書を選ぶだけで精算データを作り、事前申請やカード明細との紐づけ、勘定科目の入力を自動化(社内ルールに沿うかを確かめる機能つき)※5サービスとして提供
行政の文書レビュー設計書やテスト計画書を、ガイドラインや庁内のチェックリストに沿って確かめ、不備の指摘と是正の提案を出す※42025年10月に情報提供を依頼

表の例を並べると、AIエージェントが受け持っているのは、照合、点検、診断の材料の提示、申請データの作成といった、人が判断する手前の作業が中心です。点検の例では結果が担当者のスマートフォンに届き、故障診断の例では原因と対策を示すところまでをAIが担います※5。在庫補充の判断まで自動で最適化しようとする調達の例は、2025年12月に実証実験の開始が発表された段階です※5。

デジタル庁の依頼書※4は、提案を求める技術領域の1つに「人間作業とAI作業の境界線についての方針(Human in the loop)」を挙げています。どこまでをAIに任せ、どこから人が持つかという線引きは、行政でも企業でも、導入を決める段階で答えを求められる問いです。

業務自動化で任せられる業務・任せられない業務

任せてよいかどうかは、作業の種類よりも、誤ったときに何が起き、結果が誰に届くかで決まります。デジタル庁の生成AIガイドライン(DS-920、2026年6月12日)は、行政での利用について、高リスクかどうかを判断するための3つのリスク軸を示しています※7。会社の業務に読み替えたものを右の列に置きました。

リスク軸(DS-920)ガイドラインの考え方会社の業務への読み替え
業務の性格生成物の誤りが、国民の基本的権利や安全、生命・身体・財産、法人の事業に重大な影響を及ぼすおそれのある業務ほどリスクが高い誤ったときに、人の権利やお金、安全に関わるか
利用範囲不特定の外部者が使うサービスは、職員が府省庁内で使う場合よりリスクが高い結果が顧客や取引先に届くか、社内で止まるか
人の判断出力の適切さを職員が判断せず、そのまま使う業務設計はリスクが高い実行の前に人が確かめるか

同じガイドラインは、相手のメールの内容に応じた返信を作り、職員の確認を経ずに自動で返信するものを、高リスクの例に挙げています※7。返信文を作るところまでなら任せやすい作業でも、確認なしの送信まで任せると扱いが変わるということです。

区分業務の例任せ方
任せられる業務公開情報の調査と要約、社内文書どうしの照合、請求書と発注データの突き合わせ、問い合わせの分類と回答案の作成、定型の集計結果を人が見てから使う
承認を挟む業務取引先へのメール送信、顧客管理や会計システムへの登録・更新、発注書の発行、日程の確定実行の直前に人が承認する
任せられない業務採用の合否、人事評価、与信や契約の可否、支払いの確定、資格や法令の解釈が要る最終判断AIは判断の材料をそろえるところまで

白書によれば、ヒアリングに応じた先進企業の多くは、業務プロセスを作り直す際に人間とAIの役割分担の設計を重視しています※5。業務領域の特性や人間が負うべき責任の範囲を見極め、どのタスクをAIによる判断の補助にとどめ、どのタスクを自律的に実行させるかを検討しているという内容です※5。仕事そのものがAIに置き換わるのかという問いは、AIに仕事は奪われるのかで業務の単位に分けて整理しました。

任せない線の引き方 — 取り消せるか、社外に出るか、説明できるか

現場で迷ったときは、次の問いで確かめると線を引きやすくなります。

  1. 取り消せるか。下書きの保存や社内向けの集計はやり直せますが、送ったメール、確定した支払い、消したデータは元に戻せません。
  2. 社外に出るか。顧客や取引先に届く操作は、誤りがそのまま自社の信用に響きます。
  3. 理由を説明できるか。AIが示す理由は実際の処理を説明したものとは限らないため、採用や与信のように理由の説明を求められる判断は人が行います※2。

3つの問いのどれか1つにでも当てはまる操作は、承認を挟む側か、人が行う側に置くのが原則です。どの業務からAIを試すかの洗い出しは業務の見極め方と棚卸しの手順で扱っているので、ここでは洗い出した業務のうち「どの操作まで任せるか」を決めることに絞ります。

AIエージェントを業務フローに組み込む — 止める場所を先に決める

業務フローに組み込むときは、AIエージェントに渡す区間と、人が止めて確かめる地点を流れ図に書き込んでから設定に入ります。請求書の照合を例にすると、AIエージェントと人の分担は次のような流れです。

  1. AIエージェントが届いた請求書を読み取り、取引先、金額、支払期日を抜き出す
  2. 発注データと突き合わせ、一致したものと差異のあるものに分ける
  3. 差異のあるものについて、考えられる理由と確認先を一覧にする
  4. 担当者が一覧を確かめ、支払いを承認する(承認点)
  5. 承認されたものだけを会計システムに登録する

この流れで人が持つのは4番目の承認点で、想定外の入力が来たときの扱いもあわせて決めておきます。総務省のRPAガイドブックは、想定外の入力データが来たときに、自動処理を止めて職員の判断を入れるか、処理を飛ばして後で職員が確かめる安全対策を挙げています※6。AIエージェントでも、読み取れない書類や大きな金額の差異が出たら処理を止めて人に回す設定が必要です。

AIエージェントを表すイメージ。写真のプリントの上に置いたルーペを指でつまみ、細かいところを確かめている手元

AIエージェントのリスクと対策 — 2026年3月の改定で加わった項目

AIエージェントに特有のリスクは、2026年3月のAI事業者ガイドライン改定で、便益とあわせて整理されました※2。便益として挙げられたのは、複数のシステムと連携しながら自律的に動くことで、調整・分析・意思決定などの業務を効率化できる点です※2。リスクと、それに対応する留意事項を表に並べました。

リスク業務で起きうること対策
人間の意図しない動作※2目標に向けて、想定していない手順や操作を選ぶ人間の判断を介在させる仕組みを作り、取り消せない操作は承認制にする
攻撃対象の拡大※2読み込んだ文書やWebページに、AIへの指示に見える文章が紛れ込む連携するツールやシステムを必要なものに限る
内部データの外部送信※2アクセスできるデータベースの内容が外部へ送られる扱うデータを必要最小限にし、権限を最小にする
制御の難しさ※2構造が複雑で、何が起きたかを追いにくい操作履歴を残し、定期的に確かめて報告する
事実と異なる出力※5誤った情報を前提に作業を進める結果を人が確かめてから使う

表の対策のうち、権限と操作履歴は、製品を選ぶ前に社内で決められる項目です。

最小権限で始める — 連携先とデータを絞る

権限は、担当者が持っている権限をそのまま渡すのではなく、その業務に要る分だけを渡します。改定後のガイドラインも、最小権限の設定と、AIエージェントが使う連携ツールやシステムの制限を留意事項に加えました※2。実務では、AIエージェント専用のアカウントを用意し、最初は読み取りだけを許します。そのうえで、下書きの保存、社内への送信、社外への送信と、試験運用の結果を見ながら1段ずつ広げます。

渡すデータの絞り方も、権限と同じ考え方です。白書は、AIが参照するデータの範囲を絞り、部門や職階によってアクセスすべきでない情報を出力しないようにする対策が、先進企業でとられていると紹介しています※5。顧客情報や人事情報は、最初の試験運用では対象から外しておくと安全です。入力してよい情報の決め方は、生成AIの社内ガイドラインの作り方の考え方をそのまま使えます。

操作履歴を定期的に見る — AIの説明ではなく実際の操作で確かめる

改定後のガイドラインは、AI利用者に向けて、AIエージェントは自律性を持って行動するため、定期的な操作履歴の確認や報告が重要だとしています※2。見る項目は、読み込んだデータ、実行した操作、承認を求めた場面、人が直した箇所の4つで足ります。

確かめる頻度は、試験運用のあいだは毎日、安定してからは週に1回というように段階で変えると、担当者の負担が続く範囲に収まります。人が直した箇所が多い作業は、指示か権限の決め方を見直す合図です。出力の中身を確かめる観点そのものは、AI時代に管理職に求められる役割の変化で検収の考え方として扱っています。

AIエージェントを表すイメージ。白い建築模型の一か所に黄色い部材が置かれ、奥で人が机の資料を見ながら検討している構図

導入前に決めること — 目的・権限・承認点・操作履歴・中断の手順

製品を選ぶ前に、AIエージェント1つごとに次の項目を書き出しておきます。書けない項目が残っているうちは、試験運用に進まないほうが安全です。

  1. 目的と完了の条件(何ができたら終わりか、成果物は何か)
  2. 権限と連携先(読む、下書きする、実行する、のどこまでを、どのシステムに許すか)
  3. 承認点(どの操作の前に、誰が確かめるか)
  4. 操作履歴の点検(誰が、どの頻度で、何を見るか)
  5. 中断の手順(異常に気づいたときに誰が止め、どこまで戻すか)

決めた内容は、エージェントごとに1行の管理表へまとめます。総務省のRPAガイドブックは、管理が不十分なまま放置されたRPAを通称「野良ロボット」と呼び、セキュリティ上のリスクにもなりうると注意しています※6。そのうえで、適用業務や操作対象のシステム名、管理者などを管理台帳で一元管理する方法を示しました※6。AIエージェントは業務の担当者が自分で作れる環境が広がっているため、同じ管理の考え方がそのまま役に立ちます。

社員が自分で作る場合のルールも、ここで決めます。デジタル庁のガイドラインは、利用者がAIエージェントを作れる環境について、ルールの整備を定めています※7。出力の適切さを判断せずにタスクを実行するものは作成を制限するか、作った場合は利用開始前に報告させる、という内容です※7。白書※5も、社員が個人の判断でAIを業務に使う「シャドーAI」には、機密情報の流出などのリスクがあると指摘しています。

AIエージェントの作り方 — 3つの方式と試験運用の進め方

作り方は、開発の度合いによって3つの方式に分かれます。特定の製品の操作手順は製品ごとに違うため、ここで扱うのは方式の選び方と、試験運用の進め方です。

方式中身向いている会社
既存ツールの機能を使う使っているメールや表計算、業務システムに付いたエージェント機能を設定する開発の担当がいない会社
作成サービスで組み立てる画面上で目標、指示、使う道具、権限を設定して組み立てる※2業務の担当者が自分で試したい会社
開発して組み込むAPIや開発用の基盤を使い、自社のシステムやデータとつなぐ※4社内に開発の体制がある会社

白書の企業調査では、生成AIに組織的に取り組む日本企業のうち、社員が生成AIを活用したアプリやAIエージェントを開発できる技術環境にあると答えた割合は15.3%でした※5。米国は22.1%、ドイツは27.4%、中国は31.1%です※5。開発の体制がない会社は、既存ツールの機能か作成サービスから始めるのが現実的です。

同じ調査で、社内データを生成AIに学習させたり、参照用のデータベースを作ったりしている日本企業は24.5%で、米国・ドイツ・中国はいずれも5割を超えました※5。白書※5が紹介する有識者の指摘のとおり、AIエージェントを生かすにはデータの精度と鮮度が一段と重要になります。方式が決まったら、試験運用は次の順番で進めるのが確実です。

  1. 業務を1つ選び、完了の条件を一文で書く(例:月末の請求書と発注データを照合し、差異の一覧を作る)
  2. 使ってよい道具とデータ、禁止する操作を書き出す
  3. 過去の実例を集め、AIエージェントの結果と人の結果を比べる
  4. 承認点を残したまま、実際の業務で期間を決めて動かす
  5. 操作履歴と人が直した箇所を見て、指示と権限を直す
  6. 任せる範囲を広げるか、元に戻すかを判断する

「おすすめ」を探す前に確かめること — 連携・権限・承認・履歴・費用

「おすすめのAIエージェント」を探す前に、自社の業務に照らして確かめる項目を決めておくと、製品の比較に振り回されずに済みます。製品名を並べた比較表よりも、下の表の項目を各製品の資料で埋めていくほうが、自社に合うかを判断しやすくなります。

確かめる項目確かめること理由
連携できる道具自社のシステムとつながるか、つなぐ先を限定できるか連携するツールやシステムの制限が留意事項に入った※2
権限の細かさ読む、下書きする、実行する、を分けて許せるか最小権限で始めるため
承認の機能送信や登録の前に、人の承認を必須にできるか人間の判断を介在させる仕組みを作るため
操作履歴いつ、何を読み、何を操作したかを後から見られるか定期的な確認と報告のため
データの扱い入力したデータの保存場所、学習への利用の有無、参照範囲の設定扱うデータを最小限にするため
止める手段実行中の作業を止め、設定を前の状態に戻せるか意図しない動作に備えるため
費用の単位利用者の人数、処理の量、その両方のどれで決まるか件数が増えたときの費用を見積もるため

承認の機能と操作履歴は、資料の記載だけでなく、試験運用の前に実際の画面で確かめてください。承認を必須にする設定を誰が変えられるかも、あわせて確かめておきます。

AIエージェントの費用の考え方 — 利用料・構築・運用の3つで見る

費用は、製品の利用料だけで比べると見誤ります。設定や連携にかかる構築の費用と、動かし始めてからの運用の手間を足して見積もるのが基本です。

費用の種類中身見積もりの単位
利用料製品の月額料金、AIモデルの利用量に応じた料金利用者の人数、処理の件数と量
構築設定、連携、指示文の作成、過去の実例を使った確認社内の作業時間、外部への委託費
運用操作履歴の点検、指示の見直し、連携先の仕様変更への対応月あたりの担当時間
人の確認承認点で人が確かめる時間1件あたりの確認時間と件数

利用量に応じた料金は、読み込ませる文書の長さと処理の件数で変わります。デジタル庁の依頼書も、数万から数十万文字に及ぶ設計文書を効率よく扱う方式と、LLMのコストを最適化する方式を、提案を求める技術領域に挙げています※4。試験運用で1件あたりの利用量を測り、本番の件数を掛けて見積もると、ずれが小さくなります。

運用の手間について、総務省のRPAガイドブックは、RPAを使い続けるには停止や誤作動、制度改正への対応など、シナリオの手直しを続ける必要があると述べています※6。AIエージェントも、指示や連携先の見直しが続くと考えておくのが安全です。効果は「人が行っていた作業時間」から「承認点での確認時間」を引いた差で見ると、任せる範囲を広げるかどうかの判断に使えます。

試験運用の始め方 — 1つの業務を「読む・下書きする」権限だけで回す

最初の試験運用は、結果を人が確かめられる社内向けの業務を1つ選び、読み取りと下書きの権限だけで始めます。令和8年版の白書も、まずは少ない投資で、社員が安全に汎用的なAIツールを使える環境を整えるところから始める進め方を示しています※5。読み取りと下書きだけなら、誤っても社外に出る前に人が止められる範囲です。

期間を決めて動かし、操作履歴と人が直した箇所を見てから、下書きの保存、社内への送信と、1段ずつ権限を広げます。社内のほかの部署へ広げる段階の進め方は、生成AIが社内で使われない理由と、定着のさせ方で扱っています。まずは、照合や下書きのように結果を確かめやすい業務を1つ選び、完了の条件を一文で書くところから始めてください。

よくある質問

目標を伝えると、達成までの段取りをAI自身が考え、メールや表計算、社内システムといった道具を操作して仕事を進める仕組みです。AI事業者ガイドライン(第1.2版)は「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義しており、人の承認を待ちながら進むものも含まれます。

チャット型の生成AIは、質問や指示に対して文章や案を返すところまでで、使うかどうかと次の操作は人が決めます。AIエージェントは目標から手順を組み、送信や登録などの操作まで進めます。誤りが文章ではなく操作として表に出るため、権限と承認点の設計が欠かせません。

どちらか一方を選ぶより、作業の性質で分担を決めるのが基本です。手順が決まっていて件数の多い操作はRPA、書式が毎回違う書類の読み取りや内容に応じた振り分けのように判断を伴う作業はAIエージェントが向いています。総務省のRPA導入ガイドブックも、RPAはシナリオどおりに動くため、例外や仕様変更がなければ処理を誤らないと説明しています。判断の部分をAIエージェント、確定した入力をRPAに分ける組み合わせも有効です。

採用の合否、人事評価、与信や契約の可否、支払いの確定のように、人の権利やお金に関わり、理由の説明を求められる判断です。取り消せない操作や、顧客・取引先に直接届く操作も、少なくとも実行前の承認は人が持ちます。AIには、判断に使う材料をそろえるところまでを任せます。

その業務に要るデータだけを参照させることです。AI事業者ガイドラインの2026年3月の改定では、外部システムと連携する際に内部データが外部へ送られるリスクが追記されました。あわせて、扱うデータを必要最小限にすることが留意事項に入っています。個人情報を含むデータは、試験運用で結果が安定するまで渡さない運用にしておくと安心です。

業務の担当者と、エージェントを管理する責任者の2人で見る形が続けやすい方法です。試験運用のあいだは毎日、安定してからは週1回を目安に、読み込んだデータ、実行した操作、人が直した箇所を確かめます。改定後のAI事業者ガイドラインも、AIエージェントについて定期的な操作履歴の確認や報告を重要としています。

中小企業でも、任せる業務を1つに絞れば使えます。メールや表計算、会計などの業務ツールに付いたエージェント機能を選べば、開発をしなくても試せます。令和8年版の情報通信白書でも、汎用的なAIツールを安全に使える環境づくりは、企業がAI活用を広げていく最初の段階という位置づけです。人数が少ない会社ほど、承認点と操作履歴を見る担当を先に決めておいてください。

画面上で目標や指示、使う道具を設定して組み立てる作成サービスを使えば、プログラムを書かずに作れます。AI事業者ガイドラインも、2026年3月の改定でAIエージェント作成サービスをAIシステムの例に加えました。作るのが簡単でも、渡す権限と承認点は人が決める必要があるため、作成のルールを先に用意してください。

製品の利用料、設定や連携にかかる構築費、操作履歴の点検や指示の見直しにかかる運用の手間、承認点での確認時間の4つに分けて見積もります。従量制の製品は、試験運用の数十件で平均の利用量をつかんでから、月の件数に広げて計算すると見誤りにくくなります。

作ってよい範囲と届け出の条件を決めたうえで認める形が現実的です。デジタル庁のガイドライン(DS-920)は、人が出力を確かめずに実行するAIエージェントについて、作成を制限するか、使い始める前の報告を求めるルールを整えるよう定めています。届け出の窓口は、操作履歴を見る責任者と同じ人にしておくと漏れが出にくくなります。

誰が止めるか、どうやって止めるか、どこまで戻すかの3つです。実行中の作業を止める手順と担当者、元に戻すために残しておく操作履歴、影響が出た相手への連絡先を、使い始める前に書き出しておきます。送信や支払いのように取り消せない操作を最初から任せない設計にしておけば、誤りの影響を小さくできます。

参考文献

  1. ※1 AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編 総務省・経済産業省(2026.10.11確認)
  2. ※2 AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容(第1.2版への更新内容) 総務省・経済産業省(2026.10.11確認)
  3. ※3 令和7年版 情報通信白書「AI研究開発における最近の動向」 総務省(2026.10.11確認)
  4. ※4 ドキュメントレビュー支援AIエージェント開発に向けた情報提供依頼書(令和7年10月) デジタル庁(2026.10.11確認)
  5. ※5 令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節「企業におけるAI利用の現状」 総務省(2026.10.11確認)
  6. ※6 自治体におけるRPA導入ガイドブック(令和7年7月) 総務省(2026.10.11確認)
  7. ※7 DS-920 行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(2026年6月12日) デジタル庁(2026.10.11確認)

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株式会社UNPLACED

「場所にとらわれず、居場所をつくる。」を理念に、企業向けのAI実務研修・AIコンサルティング、ジュート由来の生分解性プラスチック「ソナリ」、ワークマネジメントサービス「OginAI」を提供しています。人手不足・DX・環境対応という経営課題に向き合う企業と伴走します。

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