プレスリリースが読まれるかどうかは、書き出しの一文でほぼ決まります。「誰の何が変わるのか」を短く言えるか——そこが分岐点です。自社で書いて自社で出したい広報担当・経営者に向けて、構成の型から配信設計、出したあとの動きまでを実務の順序で整理します。
結論:「誰の何が変わるのか」を1文で言えるか
プレスリリースが取り上げられるかどうかを分けるのは、文章のうまさでも発表内容の立派さでもありません。「誰の、何が、どう変わるのか」を1文で言えているかどうかです。
受け取る側は、その1文だけを見て読み進めるかを決めています。記者も見込み客も取引先も同じで、冒頭で「これは自分に関係がある話だ」と分からなければ、そこで読むのをやめます。
ところが実際のリリースの多くは主語が自社のままです。「株式会社○○は、新サービス『△△』の提供を開始しました」。これは事実の報告であって、変化の説明ではありません。直し方は、主語を読み手側に移すこと。誰が、どんな場面で、いま何に困っていて、それがどう変わるのか。ここが書ければ、タイトルもリード文も本文も自然に決まります。1文で書けないうちは、リリースを出す時期ではない可能性があります。
何をリリースにすべきか — ニュースになる事実の見分け方
最初のつまずきは「書き方」ではなく「何を出すか」です。判断の軸は「社外の誰かにとって、これは新しい情報か」。社内では大事件でも社外から見れば日常、逆に社内では当たり前の取り組みが外から見ると珍しい、ということもあります。
| 切り口 | 該当する事実の例 | 補強に必要なもの |
|---|---|---|
| 新規性 | 新商品・新サービス・新事業・新拠点・新制度の開始 | 「何が新しいのか」を既存のものと比べて説明できること |
| 実績 | 導入数・出荷数・利用者数などの節目、継続年数の節目 | 数え方の定義(いつ時点の、何の数か) |
| 社会性 | 環境・人手不足・地域課題など、社会的な文脈に接続する取り組み | 自社の取り組みと課題のつながりの説明 |
| 地域性 | 地元での出店・提携・雇用・イベント | 地域にとっての意味(雇用・利便・話題) |
| 季節性・時事性 | 制度改正や季節需要に合わせた対応 | いつまでの話かという時間の枠 |
| 意外性 | 業種の常識と違う取り組み、異業種との組み合わせ | 常識のほうを先に説明すること |
「どれか1つ当てはまれば出せる」という意味ではありません。右列の「補強に必要なもの」が用意できて初めてリリースになると考えてください。
前提として押さえたい考え方があります。中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の経営ハンドブックでは、メディアによる取材は基本的にすでに実績がある商品・サービスを対象とするものであり、メディアは「売れていない商品を後押しする存在」ではなく「売れている商品をさらにアピールしてくれる存在」と捉えるべきだと整理されています※4。
実績がないうちは何も出せない、という意味ではありません。実績が乏しい段階のリリースは、メディア掲載を主目的にしない設計にすればよいのです。自社サイトに載せて検索から見つけてもらう、営業先に見せる、採用候補者に読んでもらう。目的を変えれば、出す価値のあるリリースは広がります。
リリースの型 — 7つの構成要素と、原稿・素材のつくり方
構成は業種を問わずおおむね共通で、上から順に重要度が下がる形(逆三角形)が基本です。途中で読むのをやめられても、そこまでで要点が伝わるようにするためです。
| # | 要素 | 書く内容 |
|---|---|---|
| 1 | タイトル | 誰の何が変わるのかを1行で。ここだけで内容が分かる状態にする |
| 2 | サブタイトル | タイトルに入りきらなかった条件(開始日・対象・価格・地域など)を1行で補う |
| 3 | 発信日・発信主体 | 発表日と正式な会社名。本文の「いつから」とは別物として書く |
| 4 | リード文(前文) | 5W1Hを2〜3文で。ここまでで全体が分かるようにする |
| 5 | 本文 | 背景 → 内容の詳細 → 今後の展開、の順。図表・写真はここに置く |
| 6 | 会社概要 | 社名・所在地・代表者・設立・事業内容・URL |
| 7 | 報道関係者向け問い合わせ先 | 部署・担当者名・電話・メール・受付時間 |
省略されがちなのは2番のサブタイトルと7番の問い合わせ先です。サブタイトルがないとタイトルに条件を詰め込むことになり、長く読みにくくなります。分量はA4で1〜2枚を基本に。長くなるのは、たいてい背景の説明が過剰なときです。
末尾の会社概要と問い合わせ先は形式的に見えますが、ここが不十分だと、届いた関心が連絡につながりません。
| 欄 | 記載する項目 |
|---|---|
| 会社概要 | 正式社名/所在地/代表者名/設立年月/事業内容/コーポレートサイトのURL |
| 報道関係者向け窓口 | 部署名/担当者名/電話番号/メールアドレス/受付時間 |
| 一般のお客様向け窓口 | 報道向けと分けて記載する。問い合わせフォームのURLでもよい |
報道向けと一般向けの窓口を分けるのがポイントです。同じにすると取材の連絡が問い合わせに埋もれ、報道向けしか書かないと見込み客が連絡先を見つけられません。連絡先は個人の携帯や個人アドレスではなく、会社の代表番号・部署のアドレスを使います。リリースは担当者の異動後も残り続けるからです。会社概要は毎回同じ内容なので、テンプレートとして保存し、書き直さないでください。書き直すたびに表記が揺れます。
タイトルの付け方 — 4つの型と、避けたい書き方
タイトルにかける時間は本文と同じかそれ以上でよい、と考えてください。読まれるかどうかの大半はここで決まります。使いやすい型は4つ。変化型(「〜ができるようになる」。主語を読み手側に置く汎用型)、数値型(「〇〇件を突破」。数え方の定義を本文で示す)、対比型(「従来の〜に代えて〜」)、宣言型(「〜の提供を開始」。読み手が既に自社を知っている場合に限り機能します)。
| 避けたい書き方 | なぜ弱いか | 直し方 |
|---|---|---|
| 社名から始める | 読み手が社名を知らないと、最初の数文字が情報にならない | 変化を先に書き、社名は本文と発信主体欄に置く |
| 製品名だけを押し出す | 名前だけでは何をするものか分からない | 製品名の前に、何をするものかの説明を1語添える |
| 形容詞を重ねる | 「画期的」「革新的」は検証できず、判断材料にならない | 形容詞を削り、事実の記述に置き換える |
| 条件を詰め込む | 長くなり、一覧表示では途中で切れる | 条件はサブタイトルに移す |
| 社内用語・略語を使う | 社外では意味が通じない | 一般名詞に開くか、本文で定義する |
長さは配信先の一覧画面で切れない範囲という基準で考えると判断しやすくなります。一覧や検索結果ではタイトルが途中で切れることがあるため、前半だけを読んでも意味が通る語順にしておきます。なお「業界初」「No.1」を入れる場合は、後述する表示上の注意が関わります。
リード文(前文)の書き方
リード文はここまで読めば全体が分かる要約であり、本文の書き出しではありません。入れる要素は5W1Hですが、順序が重要です。
| 順 | 要素 | 書き方の注意 |
|---|---|---|
| 1 | 誰が(発信主体) | 正式な社名。初出は「株式会社」まで含める |
| 2 | 何を | サービス名ではなく「何をするものか」を先に |
| 3 | いつから | 開始日・発売日。発表日と混同しない |
| 4 | 誰に向けて | 対象者を具体的に。「すべての企業」は対象を示していない |
| 5 | どこで | 提供地域・販売チャネル・オンラインか対面か |
| 6 | なぜ | 背景は1文まで。長い背景はリード文を殺す |
もっとも多い失敗は6番の「なぜ」から書き始めることです。「近年、働き方の多様化が進み……」と一般論から入ると、2文目まで読んでも何の発表なのか分かりません。背景は本文の冒頭に置けば十分です。
もう一つ避けたいのが体言止めの多用。主語と述語の関係が曖昧になり、そのまま引用しにくい文になります。リリースは引用される前提の文書なので、1文が単独で成立する形にしてください。全体で2〜3文、長くても4文。5文以上になるときは、本文に移すべき内容が混ざっています。
本文の展開 — 事実と主張を分けて書く
本文は「背景 → 内容の詳細 → 今後の展開」の順に展開します。そのうえで最大の分岐が事実と主張の書き分けです。
| 事実として書けること | 主張として書くなら根拠が要ること | |
|---|---|---|
| 内容 | 仕様・機能・提供条件・価格・開始日・対象 | 「使いやすい」「高性能」といった評価 |
| 実績 | 自社が数えられる数値(導入社数・出荷数) | 「業界初」「No.1」など他社との比較 |
| 効果 | 自社での実測値(測り方を明示できるもの) | 「○○%削減」といった一般化した効果 |
| 評価 | 第三者の発言を、発言者を明示して引用したもの | 書き手による「好評です」といった要約 |
ここで有効なのがコメント(談話)欄です。本文は事実の記述に徹し、主観的な意気込みや評価は「代表取締役 ○○のコメント」として括り出す。コメントは、主観を書いてよい唯一の場所だと考えてください。
効果の数値を書く場合は測り方を必ず添えます。いつ、誰が、どの作業を、どう測ったのか。自社1社での試行結果ならその旨を明記します。条件を書けない数値は、書かないほうが安全です。第三者の声を載せる場合は掲載前に本人・その企業の許諾を取ってください。社名・部署名・役職まで出すのか匿名にするのかも、事前に確認します。
表示に関する注意 — 「業界初」「No.1」を書く前に
広告や商品の表示については、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)が関わります。プレスリリースも、内容によっては商品・サービスの表示として扱われる可能性があります。消費者庁は、不当表示の類型を次のように整理して公表しています※1。
| 類型 | 消費者庁の説明 |
|---|---|
| 優良誤認表示(5条1号) | 商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示。実際のものより著しく優良であると一般消費者に示す表示、または競争業者に係るものより著しく優良であると示す表示 |
| 有利誤認表示(5条2号) | 価格その他の取引条件についての不当表示。取引条件が実際より著しく有利であると一般消費者に誤認される表示、または競争業者のものより著しく有利であると誤認される表示 |
| その他の不当表示(5条3号) | 取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ、内閣総理大臣が指定する表示 |
あわせて不実証広告規制があります。消費者庁のページでは、商品内容について優良誤認表示に当たるかを判断する必要がある場合に、消費者庁長官が期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされています※1。実務上の含意はシンプルです。資料を出せない表現は書かない。「業界初」と書くなら、いつ時点で、どの範囲を、どう調べた結果なのかを説明できる状態にしておく。
「No.1」の表示についても、消費者庁は令和6年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しています※3。使う予定がある場合は、書き始める前に確認してください。
画像と素材 — 何を、どこまで用意するか
画像は「あるとよい」ものではなく、配信の実務上ほぼ必須です。配信サービスの一覧画面や自社サイトの記事一覧では、サムネイル画像とタイトルが並びます。画像がないリリースは、一覧の中で存在感を失います。
| 素材 | 用途 | 準備の注意 |
|---|---|---|
| メイン画像 | 一覧表示・SNS共有時のサムネイル | 小さく表示されても内容が分かる構図にする |
| 製品・サービスの写真 | 本文中の説明 | 使用シーンが分かるものを1枚は入れる |
| 画面キャプチャ | ソフトウェア・Webサービスの説明 | 顧客名・個人名・実データの写り込みを確認する |
| 図表 | 仕組み・比較・数値の説明 | 図中の数値と本文の数値を一致させる |
| 人物写真 | 代表コメント・現場の様子 | 被写体本人の掲載許諾を取る。第三者の写り込みを確認する |
| ロゴデータ | 媒体側での二次利用 | 背景透過など、使いやすい形式で添える |
権利の確認は撮影者・被写体・写り込みの3つで見ます。外部カメラマンの写真は契約で利用範囲が限定されていることがあり、人物が写る場合は本人の許諾が要ります。素材サイトの画像は、報道用途・商用利用の可否を利用規約で確認します。配信先を決めてから素材を作ると、作り直しが減ります。文字を焼き込んだ画像より文字なしの写真のほうが記事で使われやすいため、2種類を用意しておくと両方の用途に対応できます。
配信の設計 — 経路の組み合わせとタイミング
配信先は「どれか1つを選ぶ」ものではありません。3つの経路を、目的に応じて組み合わせます。
| 経路 | 強み | 弱み | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 自社サイトに掲載 | 費用がかからない。内容を自分で管理でき、検索から見つかる資産になる | 自社を知らない人には届かない | すべてのリリース(起点として必ず行う) |
| 配信サービスを使う | 複数の媒体・読者にまとめて届く。掲載ページが残る | 費用がかかる。掲載は保証されない | 広く知らせたい発表 |
| 媒体へ個別に送る | 相手に合わせた説明ができる。関係が続く | 手間がかかる。宛先の調査と維持が必要 | 業界紙・専門誌・地元メディア |
起点は必ず自社サイトです。配信サービスに出しても媒体に送っても、詳細を確認する人は自社サイトを見に来ます。そこに元のリリースがなければ裏付けが取れません。掲載してから、そのURLを配信先や送付先に添えてください。
個別送付の宛先については、J-Net21の経営ハンドブックに実務的な指摘があります。地方紙はエリアごとに担当記者がいて、地元の話題になる経営者や商品を紹介する企画を定期的に実施しており、常に取材先を探しているという点です※4。全国紙や大手媒体に一斉に送るより、地元メディアを最初に狙うほうが成功しやすいと整理されています※4。業界紙・専門誌にも同じ考え方が当てはまります。「読者が少ない媒体」ではなく「読者が絞られている媒体」と捉えると、優先順位が付けやすくなります。
配信日時に唯一の正解はありませんが、決め方の順序はあります。①事実の日から逆算——予約を取りたいなら事前告知、実物を見せたいなら当日以降が自然です。②狙う媒体の周期を確認——月刊誌なら発売日の1か月以上前に情報が必要なこともあります。③社内の受け入れ体制——ここが見落とされがちです。配信日は「担当者が席にいる日」に設定してください。④重複の確認——自社が同じ週に複数のリリースを出すと、どちらも埋もれます。
出したあとの動きと、二次利用の注意
リリースは出した瞬間がゴールではありません。問い合わせや取材の連絡は、配信直後に集中します。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 配信前日まで | 想定問答(Q&A)を作る。誰が何を答えるかを決める |
| 配信当日 | 社内共有(営業・サポート・受付)。自社サイトの導線を確認する |
| 配信後1〜3日 | 問い合わせ・取材依頼への一次返答。反応の記録 |
| 配信後1週間 | 掲載状況の確認。掲載ページのURLを社内に共有する |
| 配信後1か月 | 結果の振り返り。次の発表に向けた材料の整理 |
想定問答は少なくとも5問。「なぜ今なのか」「既存のものと何が違うのか」「価格・条件はどうなっているか」「実績はどのくらいあるか」「今後どうしていくのか」。即答できない状態で配信すると、取材の機会があっても十分に答えられません。社内共有も軽視しないでください。リリースを見た顧客が営業担当に問い合わせたとき、担当者が内容を知らないという事態は珍しくありません。配信当日の朝に全社へ流すだけで防げます。
1本のリリースは、自社サイトのコラム(リリースは事実の告知、コラムは背景の説明と役割を分ける)、SNS、営業資料、採用の場面、社内の発表履歴に展開できます。ただし二次利用ではステルスマーケティングの規制を押さえておく必要があります。
消費者庁は、令和5年10月1日からステルスマーケティングが景品表示法違反となることを公表しています※2。同庁のページでは、規制の対象は「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」とされ、インターネット上の表示(SNS投稿、レビュー投稿など)だけでなく、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌等の表示にも適用されると説明されています※2。また、規制対象となるのは商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は規制対象ではないとされています※2。
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| 費用を払って記事として掲載してもらう | 広告であることが読者に分かる形になっているか |
| 外部の第三者に依頼して紹介してもらう | 依頼の事実が読者に分かる形になっているか |
| 自社の従業員がSNSで紹介する | 自社の関係者であることが分かる形になっているか |
| 利用者の声を掲載する | 対価の有無、依頼の有無を整理しておく |
注意すべきは規制の対象が広告主である自社の側だという点です※2。依頼した相手に任せていた、という説明は成り立ちにくくなります。外部に紹介を依頼する場合は、依頼する時点で表示の方法まで決めておくのが実務的です。個別の表示が規制に当たるかは内容と文脈によって変わり得るため、迷う場合は消費者庁の公表資料を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。
年間の発信計画の立て方
継続を前提にするなら、年間の計画を先に作るのがもっとも確実です。思いついたときに書く運用では、繁忙期に止まります。
第1段階、確定している予定を並べます。新商品の発売、拠点の開設、制度の開始、決算、周年、展示会への出展、採用の開始。カレンダーに置くと、埋まる月と空いている月が見えます。
第2段階、空いた月にテーマを割り付けます。確定した予定だけでは年に数本しか出せません。
| 種類 | 内容 | 準備の負担 |
|---|---|---|
| 節目の報告 | 導入数・継続年数・利用者数などの節目 | 低い(数え方だけ決めればよい) |
| 取り組みの紹介 | 環境・地域・働き方などの社内の取り組み | 中(写真と担当者コメントが要る) |
| 調査・実態の共有 | 自社で集めた事実の整理・公開 | 高い(集計と定義の設計が要る) |
| 他社との連携 | 提携・共同の取り組み | 中(相手方の確認工程が入る) |
| 体制・人の話 | 採用・組織変更・資格取得 | 低い |
第3段階、ネタが集まる仕組みを作ります。広報担当が社内の出来事をすべて把握するのは無理があります。月1回の定例で「外に出せそうな話はありますか」と聞くだけでも、かなり集まります。候補は台帳に記録し、日付・部署・概要・確度を残します。過去のリリースと台帳を検索できる状態にしておくと、重複の確認や以前の表現の参照ができます(Gemini Notebookで社内マニュアルを「答えてくれるAI」にする方法)。
まずは四半期に2〜3本を、期日どおりに出せる状態を目標にしてください。年8本から12本のペースです。出せなかった四半期があっても、翌期に取り戻そうとしないこと。まとめて出すと、1本あたりの扱いが小さくなります。J-Net21の経営ハンドブックでも、繰り返し発信することで目を引く確率が高まること、短期ではなく中期的な目線での対応が重要であることが指摘されています※4。1本目の反応が薄いのは通常のことだと考えて、計画に織り込んでください。
社内体制と、AIをどこまで使うか
広報の専任者がいない会社では、誰が書き、誰が確認し、誰が承認するかを先に決めておくと運用が安定します。
| 役割 | 担当 | 見るところ |
|---|---|---|
| 起案 | 発表内容を持つ部署 | 事実関係。数値の定義。日程 |
| 執筆・編集 | 広報担当(兼務可) | 構成。タイトル。読み手視点への翻訳 |
| 事実確認 | 起案部署に差し戻し | 数値・仕様・日付・固有名詞 |
| 表示の確認 | 法務または外部の専門家 | 比較表現・効果の記述・第三者の権利 |
| 承認 | 経営層 | 出す/出さないの判断。時期 |
小さな組織では1人が複数の役割を兼ねますが、「執筆した人と、事実確認をする人を分ける」ところだけは崩さないようにしてください。ここを兼ねると、誤りが通ります。生成AIについても同じ線引きで、使えるのは構成と表現の部分、使ってはいけないのは事実の部分です。
| 任せてよい | 任せてはいけない | |
|---|---|---|
| 作業 | 構成案の作成、タイトル候補の量産、冗長な文の圧縮、表記の統一 | 数値・日付・固有名詞の生成、他社との比較の記述 |
| 理由 | 判断材料を増やす作業であり、最終判断は人が行う | 確認できない記述が混じると、そのまま公開されてしまう |
とくに危ないのが数値と固有名詞です。もっともらしい数字が入った下書きは、そのまま通ってしまいがちです。AIが出した数値は、出所を確認するまで存在しないものとして扱ってください。社内のルールづくりは生成AIの社内ガイドラインの作り方、任せられる業務の見極めはAIで効率化できる業務の見極め方と棚卸しの手順で扱っています。
最初の1本を出すまでの4週間
これから始める場合の段取りを、現実的な形で示します。
1週目。各部署に「外に出せそうな話」を聞いて回り、候補ごとに「誰の何が変わるのか」を1文で書いてみます。書けたものが1本目の候補です。書けないものは、まだ発表の時期ではないか、切り口を変える必要があります。
2週目。7つの構成要素に沿って書き、起案部署に差し戻して数値・日付・仕様を確認します。この段階では文章の完成度より、事実の正確さを優先してください。あわせて内容を知らない人が読んで意味が通るかを確認する工程を必ず入れます。書いた本人は自分の意図で読んでしまうため、誤字や社名表記の揺れに気づきにくくなります。
3週目。画像は文字あり・文字なしの2種類。人物が写る場合は許諾を取ります。あわせて比較表現や効果の記述について根拠を示せるかを確認し※1、出せない表現は削ります。
4週目。自社サイトへの掲載を必ず含め、配信サービスと個別送付を組み合わせます。想定問答を作り、配信当日の社内共有の手順を決めます。担当者が席にいる日を配信日にすることを忘れないでください。
1本目を出したあとは3か月後に振り返ります。確認するのは3点。問い合わせが来たか(来ていなければ、届いていないか、問い合わせ先が分かりにくいかのどちらかです)。社内から次のネタが上がってきたか(上がってこないなら、導線がまだできていません)。自社サイトの掲載ページが検索から見られているか。広報は1本ごとの成果より、続けられる仕組みができているかのほうが重要です。書けたリリースは自社サイトに残り、会社が何をしてきたかの記録になります。
よくある質問
確定している予定(新商品・拠点・制度・周年・展示会)を並べたうえで、節目の報告(導入数・継続年数)、社内の取り組みの紹介、体制や人の話といった「作れるリリース」を配置します。実績が乏しい段階では、メディア掲載ではなく、自社サイトの資産づくり・営業資料・採用向けを目的にするという設計も有効です。
根拠となる資料を示せない表現は書かないでください。消費者庁は、優良誤認表示に当たるかを判断する必要がある場合に、期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとしています。またNo.1表示については、令和6年9月26日に実態調査報告書が公表されています。使う予定がある場合は、書き始める前に確認してください。
測り方を明示できるものに限ってください。「いつ、誰が、どの作業を、どう測ったのか」を本文に書けるかどうかが基準です。自社1社での試行結果であればその旨を明記します。条件を書けない数値は、書かないほうが安全です。
中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の経営ハンドブックでは、地方紙はエリアごとに担当記者がいて、地元の話題になる経営者や商品を紹介する企画を定期的に実施しており、常に取材先を探している、と指摘されています。全国紙に一斉送付するより、地元メディアや読者が絞られている業界紙のほうが成功しやすくなります。
曜日や時間より、決め方の順序で考えてください。開始日から逆算し、狙う媒体の発行周期を確認し、社内の受け入れ体制が整う日を選び、他の発表と重ならないかを見る、という順です。とくに見落とされがちなのが3番目で、配信日は担当者が席にいる日に設定してください。
配信前日までに想定問答を作り、当日に社内共有、1〜3日で一次返答、1週間後に掲載状況の確認、1か月後に振り返り、という流れです。想定問答は「なぜ今か」「既存との違い」「価格・条件」「実績」「今後」の5問を最低限そろえてください。
消費者庁は、令和5年10月1日からステルスマーケティングが景品表示法違反となることを公表しています。対象は「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」で、SNS投稿やレビュー投稿だけでなくテレビ・新聞・ラジオ・雑誌等の表示にも適用されるとされています。規制対象は広告主である事業者側であるため、外部に紹介を依頼する場合は、依頼の時点で表示の方法まで決めておいてください。
構成案の作成、タイトル候補の量産、冗長な文の圧縮、表記の統一といった作業には有効です。一方で、数値・日付・固有名詞の生成や、他社との比較の記述は任せないでください。もっともらしい数字が入った下書きはそのまま通ってしまいがちです。AIが出した数値は、出所を確認するまで存在しないものとして扱ってください。
参考文献
- ※1 表示規制の概要(景品表示法) 消費者庁(2026.08.02確認)
- ※2 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 消費者庁(2026.08.02確認)
- ※3 「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表について 消費者庁(2026.08.02確認)
- ※4 情報発信の意義と方法(経営ハンドブック) J-Net21/独立行政法人中小企業基盤整備機構(2026.08.02確認)
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