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サステナブル調達と企業の環境対応 — 方針を調達基準に落とす手順

最終更新日 2026.07.13

監修:株式会社UNPLACED

「環境に配慮した調達を推進します」——方針にそう書いた会社は多いのに、購買の現場では去年と同じ発注が続いている。この差は担当者の意識ではなく、判断の基準が文書になっているかどうかで生まれます。方針を調達基準に落とし、取引先に伝え、評価に反映するまでの実務を整理します。

結論:方針は表明、調達基準は条文。現場が動くのは後者

サステナブル調達が動かない会社に共通するのは、方針の表明で止まっていることです。方針には「環境に配慮した調達を推進します」と書かれているのに、現場では去年と同じ品番が同じ取引先に発注され続けている。

担当者の意識の問題ではありません。発注の瞬間に見ている書類に、環境の項目が無いからです。見積依頼書、仕様書、取引先評価表、稟議書。この4つに載っていないものは、実務上は存在しないのと同じです。

方針を調達基準の条文に落とし、見積依頼と評価表に載せたときに、はじめて発注が変わります。方針だけを整えると、対外的な説明と現場の実態が離れていきます。

素材の技術的な違いはバイオプラスチックの種類と選び方で扱います。本記事は購買・調達部門が基準をつくり、取引先に伝え、運用するまでの実務に絞ります。

グリーン購入法が示す、民間企業の立ち位置

制度上の立ち位置を先に確認します。誤解すると「法律で決まっているから」という誤った説明をしてしまいます。

環境省は、グリーン購入を「製品やサービスを購入する際に、環境を考慮して、必要性をよく考え、環境への負荷ができるだけ少ないものを選んで購入すること」と説明しています※1。グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)は、「国等の機関にグリーン購入を義務づけるとともに、地方公共団体や事業者・国民にもグリーン購入に努めることを求めている」とされています※1

主体制度上の位置づけ調達実務での意味
国等の機関義務づけられている基本方針に沿った品目・基準で調達が行われる
地方公共団体努めることを求められている自治体ごとに独自の調達方針を持つ場合がある
事業者・国民努めることを求められている守るべき数値基準は与えられない。自社で決めるしかない

この表の3行目が出発点です。民間企業には統一の判断基準が与えられていません。基準は自分たちで書くしかない、というのが制度上の現実です。

基本方針は更新され続けており、環境省のページでは令和8年2月3日にグリーン購入法基本方針を改定したことが示されています※1。官公庁や自治体を顧客に持つ企業は、基本方針が入札条件や仕様書に反映されるため、自社の納入品目が特定調達品目に含まれるかを確認しておくと安全です。適用関係は発注元や所管機関に直接確認してください。

方針・調達基準・仕様書 — 3つの文書と、現場が動かない理由

サステナブル調達に必要な文書は3層あります。多くの会社に欠けているのは、真ん中の層です。

文書主な読み手書く内容更新の頻度
サステナビリティ方針社外・取引先・求職者姿勢と方向。目標を置く場合もある数年単位
調達基準購買部門・取引先判断のルール、求める情報、評価への反映年1回程度
仕様書・見積依頼書取引先の営業担当個別案件の具体的な要求案件ごと

方針だけで調達基準が無いと、方針の抽象度のまま仕様書を書くことになります。「環境に配慮した梱包材」と書いても、何を満たせばよいのかが決まっていないため、まともな見積は返ってきません。逆に調達基準さえ整っていれば、方針の文言が抽象的でも現場は動きます。

購買担当者の立場に立つと、方針だけでは動かない理由ははっきりしています。

  • 評価されないから。購買は品質・価格・納期で評価され、指標に環境の項目が無ければ優先順位は上がりません。
  • 判断できないから。定義が無く、判断できないときの安全策は前回と同じものを買うことです。
  • 要求として伝える根拠が無いから。方針文書を送っても、取引先には要求として届きません。
  • 価格差を説明できないから。説明の型が無ければ、担当者は提案を持ち込みません。
  • 記録が残らないから。選択の理由が残らないと、担当が代わると元に戻ります。

この5つはすべて文書と仕組みの問題で、意識啓発では解決しません。なお基準を社外に公開するかは別の論点で、まずは取引先への配布にとどめるのが現実的です。

サステナブル調達を表すイメージ。白い机を真上から見た構図。見開きの本、四角い素材見本、格子状の板、シャーレ、資料と二人の手が並んでいる

調達基準に落とす手順

着手の順序が重要です。基準の文章から書き始めると、実態に合わないものができあがります。棚卸しが先です。

1. 棚卸し何をいくら買っているか
2. 優先順位手を付ける品目を絞る
3. 起案判断の基準を書く
4. 通知取引先に伝える
5. 反映評価と稟議に載せる

1. 棚卸し。購買データから品目・金額・数量・取引先を一覧にします。ここで気づくのは、金額の大半がごく少数の品目に集中していることです。全品目を対象にする必要はありません。

2. 優先順位。金額または数量が大きい、代替の選択肢が実際にある、切り替えても業務が止まらない。この3条件を満たす品目から始めます。

3. 起案は次節の10項目に沿って。4. 通知では、いつから・どの品目・何を求めるのかを伝えます。5. 反映で初めて発注が変わります。様式を変えるのが、もっとも効きます。書く欄があれば、書くために考えるからです。

1と5を飛ばす会社が多く見られます。棚卸しを飛ばすと対象が絞れず、様式への反映を飛ばすと基準が読まれません。基準の文章より、その前後の作業のほうが効果を左右します。

調達基準に書く10の項目

調達基準に入れる要素はおおむね次の10です。「何のために」から始めて「どう見直すか」で終わると、読み手が迷いません。

#項目書く内容
1目的何のためにこの基準があるか。方針との関係
2適用範囲対象となる品目・部門・取引形態。全部を対象にしない場合は明記する
3判断の基準何を満たせば要求を満たしたことになるか。抽象語を使わない
4認めるエビデンス第三者認証、試験報告書、仕様書のどれをどこまで認めるか
5取引先に求める事項提出してほしい情報と、その提出時期
6評価への反映取引先評価のどの項目に、どの重みで入れるか
7例外の扱い満たせない場合の手続き。承認者と記録の残し方
8価格差の扱い単価が上がる場合、どこまで許容し、誰が判断するか
9記録判断の経緯をどこに、どの形式で残すか
10改訂と所管誰が管理し、いつ見直すか

実務が回るかを決めるのは3・4・7です。3が抽象的だと現場は判断できず、4が曖昧だと回答がばらつき、7が無いと基準そのものが無視されます。基準を満たす製品が市場に無い品目は必ず存在し、例外の手続きが無いと、担当者は基準を見なかったことにして発注します。例外を認めない基準は、守られない基準になります。完璧に書く必要はありませんが、10の枠だけは最初に作っておくと、後から埋めるときに構造が崩れません。

「環境に配慮した」を、判断できる言葉に置き換える

ここが基準づくりの核心です。抽象語を、確認できる問いに置き換える作業をします。

よくある書き方判断できる書き方への置き換え
環境に配慮した製品次のいずれかを満たすもの。(a) 再生材料の使用割合が数値で示されている (b) 使用後の処理経路が指定できる (c) 第三者認証を取得している
環境負荷の少ない素材想定する廃棄経路が特定でき、その経路で処理できることが確認できる素材
脱プラに対応した製品プラスチック部材の用途・部位・おおよその量が説明でき、代替の可否について回答が得られる製品
サステナブルな取引先環境に関する方針を文書で持ち、問い合わせの窓口が明確な取引先
過剰包装でないこと包装の階層数と、それぞれの目的(保護・表示・輸送)が説明できること

原則は1つ。「製品の良し悪し」ではなく「確認できるかどうか」を基準にすることです。良し悪しは条件で変わりますが、確認できるかどうかは誰が読んでも同じ判断になります。この形なら、基準に無い品目が出てきても「再生材料の割合が示せるか」「廃棄経路が特定できるか」「認証があるか」の3つの問いで応用が利きます。

数値基準を安易に置かないことも重要です。「再生材料50%以上」は分かりやすい一方、根拠を説明できなければ「なぜ50%なのか」に答えられません。当面は「割合が示されていること」にとどめ、実績が集まってから水準を設定するほうが破綻しません。

取引先への伝え方 — 通知文と質問票

基準を作っても、取引先に伝わらなければ発注は変わりません。伝え方は通知文質問票の2つです。通知文には次の4点を書きます。

  • いつから適用するか。次回見積からか、次期契約からか。日付を書きます。
  • どの品目が対象か。全品目でないなら明記します。曖昧だと、相手は自社が対象か判断できません。
  • 何を提出してほしいか。質問票の回答、仕様書、認証の写しなど。提出期限も添えます。
  • 回答が無い場合どうなるか。書かないと後回しにされます。ただし「取引を停止する」と書くかは慎重に。取引条件の一方的な変更は、別の問題を生じ得ます。

質問票は10問以内に。超えると回答率が落ち、回答の質も下がります。

質問これで何が分かるか
主要な原材料の構成代替素材を検討できるかどうかの起点になる
使用後に想定される処理経路自社の廃棄物管理と接続できるかが分かる
第三者認証・試験の状況情報の確度が分かる。取得済みか申請中かまで聞く
環境方針の有無と窓口継続的な対話ができる相手かどうかが分かる
代替品・改良品の提案可否切り替えが現実的かどうかがもっとも早く分かる

「答えられない」も情報だと扱うこと。空欄で返る場合と「現時点では不明だが調べる」と返る場合では、その後の進み方がまったく違います。また、質問票を送るときは自社の基準も一緒に渡してください。何のために聞かれているのかが分かれば、相手も提案しやすくなります。

取引先の回答をどう扱うか — 評価とエビデンス

評価に載らないものは動きません。ただしすべてを点数化すると形骸化します。点数を取りに行く行動が目的化し、実態が変わらないまま数字だけが良くなるからです。

評価軸点数化理由
質問票への回答有無向く事実として確認でき、判断が分かれない
認証・試験の有無と段階向く段階を区分すれば客観的に扱える
代替提案の実績向く件数として記録できる
環境への取り組み姿勢向かない評価者によってぶれる。所見として記述するほうがよい
将来の改善見込み向かない約束と実績を混同させる

既存の取引先評価表に環境の項目を追加する形にし、最初の配点は小さくします。大きな比重にすると、取引関係が実態と無関係に揺れます。使い方は、新規取引先の選定材料、年次の対話材料、代替提案を依頼する相手の判断材料の3つ。いきなり取引の可否に直結させないことが、運用を続けるコツです。

評価が低いことを理由に発注を減らす、条件を変更する、取引を打ち切るといった判断は、下請取引や優越的地位に関する法令との関係が問題になる可能性があります。実施の前に、必ず法務および所管機関に確認してください。

返ってきた資料の扱いも決めておきます。決めないと判断がばらつきます。

資料の種類扱い確認すること
第三者認証(取得済み)確度が高い認証の対象範囲(製品単位か、工場単位か)と有効期限
試験機関の報告書条件を確認すれば使える試験条件が自社の使用条件と近いか。試験機関名が明記されているか
メーカーのカタログ値出典と条件を確認するどの条件下の値か。第三者検証を経ているか
営業担当の口頭説明記録に残す書面での回答を依頼する。判断の根拠にする場合は必須
「環境にやさしい」等の表示のみ根拠を確認する何が、どの条件で、どう優れているのか。答えられない場合は判断材料にしない

認証は「あるかないか」ではなく「どの段階か」を聞いてください。取得済み、申請中、検討中、未着手。段階によって確度が違います。一方で求めすぎないことも重要です。分厚い資料一式を中小の取引先に求めると、応えられる会社だけが残り、選択肢が狭まります。線引きは「この情報が無いと判断できないか」

サステナブル調達を表すイメージ。重ねた紙片、白いフレーク、細かな粒、芽の出た土が順に並ぶ、分解の段階を表した造形

素材を切り替えるときの3つの検討軸 — 用途・条件・総コスト

素材の切り替えを検討する段階になったら、見るべき軸は3つです。用途・条件・総コスト。どれか1つでも外すと、導入後に問題が出ます。

確認すること外すと起きること
用途その部材に何を求めているか。強度、保存性、印刷適性、法令上の要求機能が足りず、現場から差し戻される
条件使用中の環境(温度・湿度・接触物)と、使用後にどこへ行くか分解性をうたう素材でも、想定した環境では期待どおりに働かない
総コスト購買単価だけでなく、保管・作業工数・廃棄までを含めた合計単価だけで比較して「高い」と結論づけ、検討が止まる

落とし穴になりやすいのが2つ目の「使用後にどこへ行くか」です。生分解性をうたう素材でも、分解が進む条件は製品ごとに違います。産業用のコンポスト設備が前提の素材を、そうした設備に運ばれない用途に使っても期待した結果になりません。素材の区分の違いはバイオプラスチックの種類と選び方で整理しています。

そして全社一律で切り替えないこと。屋内で使い分別回収されるものと、屋外で使い流出の可能性があるものでは、選ぶべき素材が違います。切り替えないという判断が正しい用途もあります。基準に「対象外とする用途」を書いておくと、無理な検討に時間を使わずに済みます。

3つ目の総コストです。環境配慮型の素材は購買単価では不利になることが多く、それでも検討する価値があるのは比べるべき費目が単価だけではないからです。

費目見えているか予算を持つ部門
購買単価見えている購買
保管・在庫部分的に見えている物流・工場
現場の作業工数(詰替え・回収・分別)見えていない現場部門
廃棄物の処理費見えている総務・工場
不適合・クレーム対応見えていない品質・営業
説明資料の作成見えていない広報・営業

重要なのは右の列です。費目ごとに予算の持ち主が違うため、購買部門だけで比較すると必ず「高い」という結論になります。1品目に絞り、費目を1枚の表に集める。全品目でやると途中で止まります。とくに作業工数は測らないと分かりません。1回あたり何分かを1週間記録するだけで、判断の精度が変わります。

プラスチック資源循環法と、排出事業者としての自社

買う側だけでなく出す側の制度も見ておく必要があります。買った資材は、いずれ廃棄物になるからです。

環境省のページによると、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」は令和3年6月11日に公布、令和4年4月1日に施行とされています※2。同じページには、関連法令として「プラスチック使用製品設計指針」、「特定プラスチック使用製品提供事業者の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準」、「排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準」などが掲載され、排出事業者向けの手引きも公開されています※2

先にやるべきことは自社がどの立場に当たるかの確認です。複数に同時に当たることも珍しくありません。

立場関わり方の例調達への影響
設計・製造する立場自社製品にプラスチックを使っている部材の選定そのものが設計の話になる
販売・提供する立場商品とともに使い捨ての製品を提供している提供品の見直しが調達の対象になる
排出する立場事業活動から廃プラスチックが出る買う量と種類が、そのまま出る量と種類になる

3行目が調達部門にもっとも直接的です。買う量を決めているのは調達であり、出る量を決めているのも実質的には調達です。廃棄物の管理部門と購買データを突き合わせてみてください。結びついていない会社が多く、結びつけた時点で改善の候補が見えます。どの規定が適用され、どの手続きが必要かは事業内容や規模により異なります。所管省庁や自治体の窓口に確認してください。

サプライチェーン排出量(Scope3)と調達

温室効果ガスの算定に取り組む場合、調達は数字に直結します。

環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームでは、Scope1を「事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)」、Scope2を「他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出」、Scope3を「Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)」と説明しており、Scope3を15のカテゴリに分類するとしています※3

このうちカテゴリ1は「購入した製品・サービス」で、該当する排出活動の例として「原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達」が挙げられています※4。カテゴリ2は「資本財」、カテゴリ3は「Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動」とされています※4

カテゴリ調達部門の関わり方
カテゴリ1 購入した製品・サービス原材料・消耗品・外部委託の選定そのもの
カテゴリ2 資本財設備投資の選定と時期
カテゴリ3 燃料及びエネルギー活動調達している燃料・電力の契約内容

購買の判断が、そのまま算定の対象になります。サステナブル調達を「環境部門の仕事」と切り分けている会社ほど、算定に着手した段階で困ります。数字の元になるデータを持っているのは購買部門だからです。実務上は算定の方法論を学ぶ前に、購買データの整理を先にするほうが進みます。品目・数量・金額・取引先の一覧は、算定にも調達基準づくりにも質問票にも使えます。算定方法や排出原単位の扱いはガイドラインを確認し※3、転記の際は出典と参照日を残してください。

小さく試す — パイロットの設計と記録

基準ができたら、いきなり全品目に適用せず1品目で試します。全面切り替えは、失敗したときの後戻りが大きすぎます。

1. 品目を選ぶ数量が多く仕様が単純なもの
2. 要件を書く用途・条件・数量を明文化
3. サンプル確認実物で現場が触る
4. 限定運用期間と範囲を決めて使う
5. 記録して判断数字と現場の声を残す

品目の選び方は、数量が多く、仕様が単純で、失敗しても業務が止まらないもの。梱包材や事務用の消耗品が選ばれやすいのはこのためです。要件は用途・使用環境・必要数量・譲れない機能。サンプルは購買部門だけで判断せず、実際に使う部署が触ってください。そして期間と範囲を先に決めます。区切らないと「試している」状態が延々と続きます。

記録する項目も先に決めます。後から思い出そうとしても出てきません。

  • 作業工数の変化。感覚ではなく分単位で。
  • 不具合の内容と件数。件数がゼロでも記録に残します。
  • 現場からの声。要約せず、そのまま書きます。
  • 費目ごとの増減。単価だけでなく、保管・廃棄・工数まで。

結果が悪くても記録は資産です。「なぜ採用しなかったか」が残っていれば、数年後に同じ検討を一から繰り返さずに済みます。

社内への説明 — 稟議で価格差をどう書くか

単価が上がる案件を通すには、説明の型が必要です。3段構えで組み立てます。

  • 1段目:何がどう変わるか。費目ごとの増減を1枚の表にし、差引を出します。見込みで構いませんが、根拠は明記します。
  • 2段目:なぜ今なのか。質問票が来た、入札条件に環境項目が入った、廃棄物の処理費が上がった。事実だけを書きます。「時代の流れ」とは書かないこと。決裁者が判断できません。
  • 3段目:やめられるか。「不具合が◯件を超えたら従来品に戻す」のように撤退条件を先に書きます。撤退条件があると決裁は通りやすくなります。

避けたいのは効果の盛りすぎです。根拠のない削減率は後で必ず検証を求められます。実測していない数字は書かず、「パイロットで測る」と書くほうが安全です。

稟議で避けたい書き方
・「環境に良いから」という理由だけを書く
・出典のない削減率や比較データを載せる
・全面切り替えを前提にした金額だけを示す
・撤退条件を書かない

説明の相手を間違えないことも大切です。経理・財務には費目と金額、営業には顧客への説明材料、現場には作業がどう変わるか。

求められる側になったときの備え

ここまでは基準をつくる側の話でした。実際には、取引先や顧客から質問票を送られてくる側になるほうが先に起きる会社も多いはずです。次の5つを用意しておくと、回答にかかる時間が大きく変わります。

求められるもの用意しておくもの
環境に関する方針文書と、社外から見られる場所(自社サイトなど)
使用素材・原材料の情報主要製品の部材表と、それぞれの入手先
廃棄・回収の説明使用後に想定される処理経路。回収の仕組みがあればその内容
認証・試験の状況取得済み/申請中/検討中の区分まで整理した一覧
問い合わせ窓口担当者名と、回答にかかる期間の目安

回答できないことが失注につながる場面は実際にあります。価格でも品質でも勝っているのに、質問票に答えられずに候補から外れる。理由が見えにくい形で起こるため、対策が後回しになりがちです。

調達基準をつくる過程で集めた情報は、そのまま回答資料になります。何を聞くかを考える作業は、何を聞かれるかを考える作業と同じだからです。回答の姿勢も決めておいてください。分からないことは分からないと書く。推定で埋めるのは、後の訂正コストのほうが大きくなります。この姿勢はサステナビリティへの取り組みにも明記しています。

サステナブル調達を表すイメージ。白い台にジュートの繊維束、樹脂のペレット、成形した白いサンプルを並べたもの

調達基準の運用 — 例外・改訂・記録

基準は、作った後の運用で価値が決まります。

例外の運用。誰が承認し、どこに記録し、いつ再検討するか。この3つを決めておけば、例外は抜け穴ではなく改訂のための材料になります。同じ項目で例外が集中していれば、その基準が実態と合っていないという意味だからです。

改訂の運用。定例の見直しを年1回置き、臨時に見直す条件を3つ書いておきます。

  • 参照している制度や公的な基準が改定されたとき。グリーン購入法の基本方針のように、更新される文書を参照している場合は必須です※1
  • 主要な取引先の構成が変わったとき。調達先が変われば、求められる情報も変わります。
  • 重大な不適合や苦情が発生したとき。基準に穴があった可能性を確認します。

記録の運用。どの案件で、どの基準に照らして、なぜその判断をしたか。稟議書に一項目を足すだけでも機能します。あわせて所管を決めてください。更新する人が決まっていない文書は、制度が変わっても更新されません。効いているかを見る指標を1つ挙げるなら「例外申請が出ているか」です。1件も出ていない基準は、守られているのではなく読まれていない可能性が高いと考えてください。

最初の90日でやること

着手する担当者向けに、3か月で「第1版」を出す段取りを示します。

1か月目棚卸しと所管の決定
2か月目基準の起案と関係部門レビュー
3か月目取引先への通知と様式の改定

1か月目は棚卸しと所管の決定。品目・金額・数量・取引先の一覧を作り、対象品目を3つから5つに絞ります。所管が決まらないと先に進みません。2か月目は10項目の枠を作って判断の基準を書き、品質・現場・廃棄物管理・法務にレビューを依頼します。とくに例外の手続きと取引条件に関わる部分は、法務の確認を経てください。3か月目は取引先への通知文・質問票の送付と、見積依頼書・取引先評価表・稟議書の様式改定です。様式の改定を後回しにすると、基準は運用に乗りません。

3か月後に確認したいのは、質問票の回答が返ってきているか稟議書の環境欄が実際に書かれているか例外申請が出ているかの3点です。確認できたら、金額の大きいものから対象品目を広げます。

整えた取り組みは、対外的に説明できる資産にもなります。伝える場面ではプレスリリースの書き方と配信設計が使えます。

よくある質問

購買データの棚卸しからです。品目・金額・数量・取引先を一覧にすると、金額の大半がごく少数の品目に集中していることが分かります。そのうち、代替の選択肢が実際にあり、切り替えても業務が止まらない品目を3つから5つ選んでください。基準の文章を先に書き始めると、実態に合わないものができあがります。

環境省の説明では、グリーン購入法は国等の機関にグリーン購入を義務づけるとともに、地方公共団体や事業者・国民にもグリーン購入に努めることを求めているとされています。つまり民間企業には統一の数値基準が与えられていないため、自社で基準を決める必要があります。個別の適用関係は発注元や所管機関に確認してください。

既存の評価表に追加する形にし、最初の配点は小さくしてください。いきなり大きな比重にすると、既存の取引関係が実態と無関係に揺れます。なお、評価が低いことを理由に取引条件を変更する場合は、法務および所管機関に確認してください。

環境方針の文書と公開場所、主要製品の部材表と入手先、使用後に想定される処理経路、認証・試験の状況を段階まで整理した一覧、問い合わせ窓口。この5つを用意しておくと回答時間が大きく変わります。分からないことは分からないと書き、確認中であれば時期を添えてください。

環境省のページでは、同法に関連して設計・製造、販売・提供、排出のそれぞれの立場に向けた指針や判断の基準、手引きが公開されています。まず自社がどの立場に当たるかを確認してください。複数に該当することもあります。どの規定が適用され、どの手続きが必要かは事業内容や規模によって異なるため、所管省庁や自治体の窓口に確認してください。

環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームでは、Scope3のカテゴリ1「購入した製品・サービス」に該当する排出活動の例として、原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達が挙げられています。つまり購買の判断がそのまま算定の対象になります。着手する前に、品目・数量・金額・取引先の一覧を整理しておくと、調達基準づくりにも質問票にも同じデータが使えます。

参考文献

  1. ※1 グリーン購入について(グリーン購入法・基本方針) 環境省(2026.08.02確認)
  2. ※2 プラスチック資源循環法関連 環境省(2026.08.02確認)
  3. ※3 サプライチェーン排出量全般 環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(2026.08.02確認)
  4. ※4 Scope3排出量とは(サプライチェーン排出量算定について) 環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(2026.08.02確認)

Author

株式会社UNPLACED

「場所にとらわれず、居場所をつくる。」を理念に、企業向けのAI基礎研修・AIコンサルティング、ジュート由来の生分解性プラスチック「ソナリ」、ワークマネジメントサービス「OginAI」を提供しています。人手不足・DX・環境対応という経営課題に向き合う企業と伴走します。

環境・素材

この記事は株式会社UNPLACEDが制作しています。掲載内容は公開時点の情報にもとづくもので、制度や仕様は変更される場合があります。

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