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スキルマップの作り方 — 何を軸に、どの粒度で作るか

最終更新日 2026.06.15

監修:株式会社UNPLACED

スキルマップが形骸化するのは、更新が面倒だからではありません。◯を付けた人と付けなかった人の差が説明できず、次に何をすればよいかが出てこないからです。行の割り方、粒度、尺度、記述の書き方という4つの設計判断を、公的な型に沿って順に決めていきます。

結論:◯×表ではなく、職務行動の記述にする

スキルマップは「できる/できない」を◯×で埋める表ではなく、「何ができていれば『できる』と言えるのか」を行動の記述に落とした表にしてください。この一点で、その表が3年後も使われているかどうかが決まります。

◯×表が形骸化する理由は「更新が面倒だから」ではありません。◯を付けた人と付けなかった人の差を誰も説明できず、空欄を見ても次に何をすればよいかが出てこないからです。誰も真剣に埋めず、埋めない表は更新されません。

これを解くのが行動での記述です。厚生労働省の職業能力評価基準は、「知識」と「技術・技能」に加えて「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を業種別・職種別・職務別に整理したものだとされています※1。この3つ目が入っているかが、表の寿命を分けます。

要素表に書くもの空欄だったときに打てる手
知識知っておくべきこと座学・資料の整備
技術・技能手を動かしてできること実習・反復・指導者を付けた実作業
職務行動例成果につながる行動として観察できること任せる範囲の拡大・同行・振り返り

要素が違えば、打つべき手も変わります。「知識」の空欄は資料で埋まることがありますが、「職務行動例」の空欄は埋まりません。◯×表はこの区別を持たないため、空欄が出ても「研修をやろう」以上の結論が出ません。

作り始める前に決めるのはこの表を何のために作るのか。そして目的は1つに絞ってください。厚生労働省のカスタマイズ手順でも最初の段階に「目的を明らかにする」が置かれ、自社の経営課題から何のために使うかを決める順序が示されています※8

目的必要な粒度主な使い手更新頻度
育成計画を作るやや粗い(1人30〜50行)本人と上司年1回+随時
人事評価に使う粗い(等級と対応)評価者と人事評価期ごと
要員配置を組む細かい(工程・設備単位)現場の管理者月次〜随時
認証・監査への対応中程度(記録の要件に合わせる)品質保証審査の周期

1枚で兼ねようとすると、細かい要求に引きずられて行が増え、頻度の高い更新で運用が破綻します。厚生労働省の企業事例でも活用の切り口は目的ごとに分かれており※15、ひとつの表がすべてを兼ねる前提にはなっていません。本記事は「育成計画を作る」を軸に説明します。

公的な「型」を借りる — 職業能力評価基準の構成

ゼロから設計する必要はありません。公的な型があり、無償で参照できます。職業能力評価基準は、仕事の内容を「①職種」→「②職務」→「③能力ユニット」→「④能力細目」に細分化し、行動例を「⑤職務遂行のための基準」、前提知識を「⑥必要な知識」として体系化したものです※2

単位資料での説明※2スキルマップでの置き場所
①職種内容や性質が類似している「職務」を括ったものシートの単位
②職務概ね1人が責任をもって遂行すべき仕事の集まり列または大分類
③能力ユニット必要な職業能力を活動単位で括ったもの行の大分類
④能力細目能力ユニットを構成する細目行そのもの(=評価する単位)
⑤職務遂行のための基準確実に遂行できるか否かの判断基準となる典型的な行動例や技能・技術セルの判定根拠
⑥必要な知識前提として必要となる知識別シート・補足欄

注目したいのはです。◯を付けてよいかどうかを判定するための行動が、基準の側にあらかじめ書かれている——自作の◯×表に欠けているのはここです。資料は全体構成(様式1)、職種別能力ユニット一覧(様式2)、能力ユニット別職業能力評価基準(様式3)と「職務概要書」で構成され※2一覧と詳細を分ける構造は真似できます。

公開範囲も確認しておきます。業種横断的な経理・人事等の事務系9職種および電気機械器具製造業、ホテル業、在宅介護業等の56業種を整備しているとされ※3、キャリアマップ・評価シート及び導入・活用マニュアルは16業種とされています※7。事務系職種の評価シートは、人事、労務管理、総務、経理、営業等に対応し、レベル1からレベル4の区分で用意されています※5

自社の業種が見つからないとき
近い業種の様式2(能力ユニット一覧)を2〜3業種ぶん見比べると、共通して出てくる能力ユニットが分かります。職業情報提供サイト job tag では、職業の内容や求められる知識・スキルが公開されています※12職種名ではなくスキルの側から探すと、業種が違っても流用できます。
スキルマップを表すイメージ。白ブラウスの人とグレースーツの人が、円グラフと棒グラフが印刷された書類を両側から手にしている

4つの設計判断 — 軸・粒度・尺度・記述

次に決めるのは行の割り方です。結論は「1人が責任をもって引き受けられる仕事のまとまり」で割ること。公的基準は「職務」を概ね1人が責任をもって遂行すべき仕事の集まりとし、それを構成する「課業」を、単なる作業や動作ではなく達成すべき目的があってそれ自体が仕事としてまとまりを持つ最小の活動単位、と定義しています※2

「誰かに丸ごと任せられるか」「任せた結果に責任を持たせられるか」にイエスと言えるまとまりが行の候補です。「ボタンを押す」は作業ですが、「生産計画に合わせて設備を立ち上げ、初品を確認して量産を開始する」なら課業です。

向く場面弱点
職種軸育成計画・評価と接続したいとき多能工の現場では粗い
工程軸応援・シフト調整に使いたいとき工程が変わると作り直し
設備軸設備ごとの資格・訓練が明確な現場設備の更新で寿命が尽きる
顧客・案件軸案件ごとに対応が違うサービス業汎用性が残らない

育成が目的なら、職種軸を主に、工程を行の大分類として従属させます。逆にすると工程が変わるたびに表が死にます。「段取りができる」「異常に気づいて止められる」は工程が変わっても残るからです。軸を決める前に現に発生している仕事を全部書き出すと精度が上がります。job tag の企業向けツール「タスク整理」※12は、500以上の職業情報を基にタスクを設定できます※13

粒度は、設計でもっとも失敗が集中する箇所です。1シート50行を上限の目安に。細かすぎると、更新コストが人数に比例して膨らみ(100行×30人で3,000セル)、評価者が場面を思い出せず印象で埋まり空欄の意味が読めなくなります(「機会がなかっただけ」と育成ニーズの区別がつきません)。

粒度行数の目安1行の書き方の例向く目的
大分類のみ10〜15行「◯◯業務の全体を回せる」報告・要員計画
中分類まで30〜50行「◯◯の段取りを、標準時間内で完了できる」育成計画・面談
小分類まで100行以上「◯◯装置の××設定値を材料に応じて変更できる」設備の訓練管理

公的基準が能力ユニット→能力細目の2段で止めている※2のは示唆的で、細目より下の具体は行を増やさず行動例の側で表現する設計です。全体は中分類で作り、必要なところだけ小分類に割るのがおすすめ。厚生労働省の資料でも、詳しく見たい業務は項目を分割し、自社に存在しない業務は削除する方法が示されています※9削るほうを先に。

評価尺度を何段階にするか

尺度は4段階を基本に、段階の名前ではなく「境目の条件」で定義してください。形容詞の尺度は評価者ごとにずれます。職業能力評価基準では会社において期待される責任・役割の範囲と難易度により4つの能力段階(レベル区分)を設定しているとされています※2できばえではなく、任せられる範囲で切るということです。

段階境目の条件(自社で書き換える)誰が判定できるか次の一手
0担当していない/未経験本人見学・同行の機会を作る
1指導を受けながらであれば実施できる指導者回数を積む
21人で実施でき、結果に責任を持てる上司イレギュラーな場面を任せる
3他者に教えられる/判断の理由を説明できる上司+第三者後進の指導役に指名

1と2の間に「1人でできるか」、2と3の間に「教えられるか」という、誰が見ても判定できる線が引かれている点に意味があります。事実で切っているので、判定が食い違ったときに何を確かめるかがはっきりします。3段階だと真ん中に寄り、5段階以上だと隣の段階との違いを説明できなくなります。

自社に等級制度があるなら対応させます。厚生労働省の資料でも「レベル区分(レベル1〜レベル4)を自社の職能等級や各種資格制度の段階に合わせてきめ細かく設定する」ことが挙げられています※8。レベルを時間軸に並べたものがキャリアマップで、キャリアの道筋/習熟の目安となる年数/レベルアップのカギとなる経験・実績/関連する資格・検定が一目で分かる形とされます※6

尺度だけ作って判定の目安を作らないのも落とし穴です。ジョブ・カード関連のモデル評価シートには「判定目安表(評価ガイドライン)」が用意され、合わせて使うことが求められると案内されています※11尺度と目安はセット。自社でも「2」と「3」は、何が観察できたら付けてよいかを1〜2行で書き添えてください。

「できる」を行動で書く — 記述の作り方

行の文言は、主語を「その人」、述語を「観察できる行動」にしてください。公的基準は「職務遂行のための基準」を、確実に遂行できるか否かの判断基準となる典型的な行動例や技能・技術を列挙したものと説明しています※2判断基準になる、典型的な、行動例。この3条件を自作の行に当てます。

使われなくなる書き方行動に落とした書き方
知識の行◯◯に関する知識がある◯◯について、新人からの質問に、手順書を見ずに理由まで説明している
技能の行◯◯が一通りできる◯◯を、標準時間内に、手直しなしで仕上げている
姿勢の行積極的に改善に取り組む担当工程の不具合について、月次の会議で原因と対策を自ら提起している
判断の行状況に応じて適切に対応できる異常を検知した際、自分で止める範囲と上司に上げる範囲を区別して行動している

右側の共通点は①成果まで書いてある ②観察できる場面が特定されている ③判定に主観が入る余地が小さいの3つです。

職業能力評価シートは業界汎用性を意識して作成されているため、従業員にとって分かりやすく納得しやすい基準に置き換える必要があるとされます。もう1つ効くのが頻度の低い業務は頻度を文言に埋め込むことで、定期的に発生する業務でない場合は「必要に応じて〜」「〜の場合には」を追加する方法が挙げられています※9。年1回の業務を毎年空欄にすると、育成ニーズとして誤って読まれます。

書くときの3つの禁止語
「理解している」——観察できません。何をしていれば理解していると言えるかに置き換えます。
「適切に」——何をもって適切とするかが書かれていません。基準そのものを書きます。
「一通り」——範囲が定義されていません。範囲を列挙するか、代表的な1つに絞ります。

誰が評価するか — 自己評価と上司評価のズレの扱い

本人と上司の両方が付ける。ズレは誤差ではなく、面談の議題として扱う。厚生労働省の説明でも、本人と上司でチェックすると認識の違いが生じる場合があるとしたうえで、その違いをフィードバック(面談)を通じて本人に気付きを与え、行動改善や自己啓発を促すきっかけとすることが重要だとされています※4

パターン読み方面談で確かめること
本人が高く、上司が低い本人が基準を軽く見たか、上司が実績を見ていないかその行動をした場面を挙げてもらう
本人が低く、上司が高い自信不足か、上司が印象で付けたか「何ができていれば2か」を語ってもらう
両方が低い育成ニーズか、機会がないか機会の有無を先に確認する
両方が高い(全項目)尺度が緩いか、処遇に直結すると意識されている「3」の判定根拠を1つ聞く

全員が全項目で高い表ができたら、それは尺度の問題で、人の問題ではありません。面談は次の3段階に固定すると回ります。

1. 一致から始める両者が同じ評価を付けた項目を先に確認する
2. ズレを1〜2件だけ扱う全部を潰さない。差が大きいものに絞る
3. 次の3か月の1項目を決める1つだけ選び、期限と機会を決める

1時間で20項目をすり合わせると確認作業だけで終わります。なお事務系職種の評価シートには、評価シート本体や必要な知識に加えて「OJTコミュニケーションシート」が含まれるとされています※5評価シートと面談メモを1つのファイルにまとめておくと、翌年の面談で前回の約束を確認できます。

職種別の作り分けと、共通スキルの置き場所

職種が複数あると「どこまで共通にするか」で迷います。共通スキルを別シートに切り出し、職種別シートには職種固有の項目だけを残してください。公的基準も、能力ユニットに「職務の別によらず、職種に共通している能力」「各職務の遂行のために固有に求められる能力」という区別を置いています※2

入るもの誰が作り、更新するか行数の目安
全社共通報告・連絡、安全衛生、情報の取り扱い、社内システム人事・総務が年1回見直す8〜12行
職種共通その職種なら誰でも必要な段取り・判断・記録職種の責任者10〜20行
職務固有製品・工程・顧客に固有の作業と判断現場の管理者が随時追記10〜25行

利点は更新の責任者が層ごとに分かれることです。全社共通の行を現場に更新させると誰も触らず、職務固有の行を人事が管理すると実態に追いつきません。層と所管をセットで決めてください。

全社共通の層で迷ったら、厚生労働省のポータブルスキル見える化ツールが手がかりです。「業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」として、【仕事のし方】「現状の把握」「課題の設定」「計画の立案」「課題の遂行」「状況への対応」【人との関わり方】「社内対応」「社外対応」「上司対応」「部下マネジメント」の枠組みが示されています※14。この9つは見出しとして流用できます。ただし中身は前節の要領で行動に落としてください。

人事評価と統合するか、切り離すか

最初の1〜2年は切り離してください。評価が処遇に直結すると分かった瞬間、自己評価が上振れし、空欄が消えます。空欄が消えた表は、育成の材料としての価値をほぼ失います。

人事評価と統合する切り離して運用する
記入の正直さ下がりやすい保ちやすい。「できない」と書ける
本人の関心高い。処遇に関わるため真剣に見る低くなりがち
更新の継続性評価の周期に乗り止まりにくい意識しないと止まる
向く段階尺度が安定してから導入初期

公的な資料でも、カスタマイズの考え方は人材育成向けと人事評価向けで別々に整理されています※8※9。統合するなら、①判定目安が全項目に書かれている ②評価者の目線が揃っている ③本人が事前に基準を見られるの3つが揃ってからにしてください。

期待値も率直に書きます。スキルマップを作れば生産性が上がる、と断言することはできません。表は現状を映す道具であって、それ自体が人を育てるわけではないからです。効果が出るとすれば、空欄が打ち手に変換され、それが実行されたときです(研修のROIをどう見るか)。

空欄をどう読むか — 育成ニーズへの変換

表ができたら本番はここからです。まず空欄を3種類に分けてください。見た目は同じでも意味が違います。

空欄の種類見分け方打つべき手
機会がない同じ行が、同期入社の全員で空いている機会の配分を変える。順番に担当させる
教えていない特定の人だけ空き、教える人はいる指導者を指名し、期限と回数を決める
優先度が低い本人の役割上、当面は不要「該当なし」として外す

「空欄=研修」と短絡すると、機会の問題に研修を当てることになり埋まりません。研修で埋まるのは主に「知識」の空欄で、「技術・技能」と「職務行動例」は任せ方の設計と指導者の指名でしか埋まりません。次に縦と横の2方向から読みます。横(1人分)は育成計画で、空欄が10個あっても取り組むのは1つに絞ります。縦(1項目)は組織のリスクを映し、1人しか「できる」が付いていない行は要注意点です。

打ち手向く空欄設計で決めること
実務のなかで教える技術・技能、職務行動例指導者、期間、任せる範囲
社内勉強会・手順書知識、社内固有のやり方教材を誰が作り、保守するか
外部研修社内に教えられる人がいない領域試す場を先に確保する
外部に任せる頻度が低く習得コストが見合わない業務社内に残す判断を切り分ける

外部研修は受講後に実務で試す場を、申し込みの時点で決めておいてください(選び方は社員研修の選び方)。新しい職種を設ける場合は、ジョブ・カード関連で公開されているモデル評価シートとモデルカリキュラム(主な職業訓練の科目、事務系職種、業種別の区分)が下敷きに使えます※10

スキルマップを表すイメージ。白い布の起伏の上に、小さな粒が格子状に並んで奥へ続く抽象的なイメージ

更新の頻度と、形骸化する5つのパターン

年1回の全面更新と、随時の追記を分けて設計してください。公的資料でも定期的に内容を見直し、より良い評価基準に改善していくことが必要だとされています※8。借りてきた型自体も古くなります。導入・活用マニュアルの内容は基本的に策定当時の情報である旨が明記されており※7更新の責任は自社側にあります。

更新のきっかけ更新する範囲誰が起こすか
年1回の定期見直し全項目。削除を先に行う所管部門
設備・システムの更新職務固有の行のみ現場の管理者
新製品・新サービス能力ユニットの追加職種の責任者
入退社・異動人の列の追加・削除のみ人事
認証審査・監査の前記録欄の点検品質保証

止めないための仕掛けは3つ。所管を1人にする(部署名では誰も動きません)。更新の場を新設しない(既存の会議に15分相乗り)。差分だけを配る。あわせて削除と追加の件数を毎年記録し、2年続けてゼロなら表が実態から離れていないか疑ってください。

使われなくなった表には共通の型があります。いずれも作り直しではなく、設計判断を1つ戻すことで回復します。

  • 目的が2つ以上ある。主目的を1つ選び、他の目的の列を別シートに逃がします。
  • 行が多すぎる。2年続けて全員が同じ評価の行を統合するか削除します。差が出ない行は情報を持っていません。
  • 尺度が形容詞で、判定目安がない。まず「2(1人でできる)」と「3(教えられる)」の2つだけに目安を書き足します。モデル評価シートに判定目安表が対応づけられている構成※11が参考になります。
  • 評価はするが、面談をしない。全項目のすり合わせをやめ、差が大きい1〜2件だけの15分の面談に切り替えます。
  • 所管が決まっていない。個人名で所管を決め、既存の会議に相乗りさせます。

5つに共通するのは、どれも「表の出来」の問題ではないことです。初年度の表は不完全で構いません。1年回して直すほうが早く使えるものになります。

ISO等の力量管理表との関係

認証を受けている会社では必ずこの論点が出ます。1つの表で兼ねること。ただし主を育成、従を記録の順に置きます。順序が逆だと、審査の直前に埋められて面談では使われない表になります。

品質マネジメントシステムの規格では、業務に必要な力量を明確にし、その力量を満たしていると判断した根拠を記録として保持することが求められるとされています。ただし要求事項の解釈や、審査で求められる記録の範囲は認証機関や審査員によって異なる場合があります。自社の適用範囲が要求を満たすかは認証機関・審査機関にご確認ください。

足しておく列何を書くか育成目的だけなら
判定日評価を付けた日付あったほうがよい
判定者誰が判定したか必要(ばらつきを追える)
判定の根拠実作業の確認、試験、資格、指導実績必要(面談で説明できる)
教育訓練の記録受講・OJTの実施日と内容あったほうがよい

判定者と根拠が残っていれば、翌年の面談で「去年はなぜ2だったのか」を再現できます。外部の物差しを1列持つのも有効で、厚生労働省のページには職業能力評価基準に準拠した検定を紹介する項目もあります※1。ただし資格は「根拠の1つ」として扱い、資格だけで上位の段階を付けないでください。なお定期見直しは審査の2〜3か月前に置きます。

導入の90日 — 小さく始める手順

全社一斉に始めないでください。1職種・1シート・1レベルから始めます。

1〜30日目的の決定・所管の指名・対象1職種の選定・公的な型の入手
31〜60日削除→追加→組換え・尺度と判定目安の作成・5名程度で試行
61〜90日対象職種の全員が記入・面談・空欄の集計・育成計画への変換

1〜30日。目的を1つ選び、所管を個人名で決めます。対象職種は人数が5〜15名程度で、教える人がいる職種を。少なすぎると尺度を検証できず、多すぎると初回の面談が回りません。公的な型は事務系9職種および56業種が整備されているとされているので※3、近いものがあれば入手します。

31〜60日。順序は削除→追加→組換え。厚生労働省の資料でも、自社に存在しない職務や能力ユニットの削除、記述されていないものの追加、自社の職制に合わせた組換え、レベル区分の調整の4つが挙げられています※8削除を最初に置くのが要点です。

作業判断の基準目安の時間
削除自社に存在しない業務の行を落とす半日
追加型に無い業務を、既存の行の書き方に揃えて足す1日
組換え自社の職制・職務分担に合わせて並べ替える半日
文言の置き換え自社の単語に直す。頻度の低い業務は条件を付ける1日
尺度と判定目安4段階の境目を条件で書き、「2」「3」に目安を添える1日
試行5名程度で記入し、所要時間と迷った行を記録1週間

試行の目的は完成度の確認ではなく、記入にかかった時間と、迷った行を拾うことです。1人30分を超えたら行が多すぎ、3人以上が同じ行で迷ったら文言が悪いということです。厚生労働省の資料でも、利用者への事前ヒアリングと一部試行的な使用による修正が、活用を円滑にする布石になるとされています※8

61〜90日。全員が記入し、本人と上司の両方が付けます。面談は15〜30分。空欄を集計し3分類に振り分けます。90日目に見るのは記入時間の中央値ズレが大きかった行1人しか「できる」が付いていない行の数の3つだけ。1職種目にかけた90日は、2職種目には要りません。

社内に教えられる人がいない領域だけが外部研修の対象で、それ以外は指導者の指名と任せる範囲の設計で埋まります。定着の全体像はAIリスキリングとは?、公的な支援の考え方は研修費用に使える助成金・補助金の探し方もあわせてご覧ください。助成金の支給要件や個別の該当性については、所轄の労働局にご確認ください。

よくある質問

初年度はExcelで問題ありません。重要なのはツールではなく、行の割り方・粒度・尺度・記述の書き方という4つの設計判断です。システム化は項目と尺度が安定してから検討しても遅くありません。

育成を目的にする場合、1シート30〜50行を目安に。100行を超えると、更新コストと評価者の記憶の両方で運用が持ちません。全体は中分類で作り、特に詳しく見たい業務だけを分割するのが現実的です。

4段階を基本とし、段階の名前ではなく境目の条件で定義してください。「指導を受けながらできる」「1人でできる」「他者に教えられる」は誰が見ても判定しやすい線です。3段階は真ん中に寄り、5段階以上は隣の段階との違いを説明できなくなりがちです。

近い業種のものを2〜3件見比べ、共通して出てくる能力ユニットを取るのが実務的です。職業情報提供サイト job tag でも職業ごとに求められる知識やスキルが公開されているため、職種名ではなくスキルの側から探すと流用できる記述が見つかります。

ズレは誤差ではなく面談の議題として扱ってください。厚生労働省の説明でも、認識の違いを面談を通じて本人に気付きを与えるきっかけとすることが重要だとされています。全項目のすり合わせはせず、差が大きい1〜2件に絞ると前に進みます。

最初の1〜2年は切り離すことをおすすめします。処遇に直結すると自己評価が上振れし、空欄が消えるためです。統合するなら、全項目に判定目安があること、評価者の目線が揃っていること、本人が事前に基準を見られることの3つが前提です。

1つの表で兼ねる設計は可能ですが、主を育成、従を記録の順に置いてください。判定日・判定者・判定の根拠・教育訓練の記録の4列を足すと扱いやすくなります。ただし要求事項の解釈や審査で求められる記録の範囲は認証機関・審査員によって異なるため、認証機関にご確認ください。

空欄を「機会がない」「教えていない」「優先度が低い」の3つに分けてください。同期入社の全員で同じ行が空いていれば機会の問題で、育成ではなく担当の配分を変える話です。そのうえで1人しか「できる」が付いていない行を優先すると、業務継続上のリスクから順に手を打てます。

参考文献

  1. ※1 職業能力評価基準について 厚生労働省(2026.08.02確認)
  2. ※2 職業能力評価基準の構成 厚生労働省(2026.08.02確認)
  3. ※3 職業能力評価基準の策定業種一覧 厚生労働省(2026.08.02確認)
  4. ※4 職業能力評価シートについて 厚生労働省(2026.08.02確認)
  5. ※5 職業能力評価シート(事務系職種) 厚生労働省(2026.08.02確認)
  6. ※6 キャリアマップについて 厚生労働省(2026.08.02確認)
  7. ※7 キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアル(16業種) 厚生労働省(2026.08.02確認)
  8. ※8 職業能力評価基準のカスタマイズ活用(人材育成) 厚生労働省(2026.08.02確認)
  9. ※9 職業能力評価基準のカスタマイズ活用(人事評価) 厚生労働省(2026.08.02確認)
  10. ※10 モデル評価シート、モデルカリキュラム 厚生労働省(2026.08.02確認)
  11. ※11 判定目安表(評価ガイドライン)一覧表 厚生労働省(2026.08.02確認)
  12. ※12 職業情報提供サイト job tag 厚生労働省(2026.08.02確認)
  13. ※13 タスク整理(job tag 企業向けツール) 厚生労働省(2026.08.02確認)
  14. ※14 ポータブルスキル見える化ツール 厚生労働省(2026.08.02確認)
  15. ※15 職業能力評価基準 企業の取り組み事例 厚生労働省(2026.08.02確認)

Author

株式会社UNPLACED

「場所にとらわれず、居場所をつくる。」を理念に、企業向けのAI基礎研修・AIコンサルティング、ジュート由来の生分解性プラスチック「ソナリ」、ワークマネジメントサービス「OginAI」を提供しています。人手不足・DX・環境対応という経営課題に向き合う企業と伴走します。

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