在宅勤務でもめるのは、働きぶりではありません。誰がいくら払うのか、そして一日のどこからどこまでが労働時間なのか。この2点が決まっていないと、運用をどれだけ丁寧にしてもほころびます。厚生労働省のガイドラインを手がかりに、規程に書くべきことを条文の単位で整理します。
結論:先に決めるのは、費用負担と労働時間の切れ目
在宅勤務でトラブルになる原因は、多くの場合「サボっているかどうか」ではありません。誰がいくら払うのかと、一日のどこからどこまでが労働時間なのか。この2点を条文で固めれば、残りの多くは運用の工夫で足ります。
手がかりは厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」です。同ガイドラインは、導入目的、対象業務、対象となり得る労働者の範囲、実施場所、テレワーク可能日、申請等の手続、費用負担、労働時間管理の方法や中抜け時間の取扱い、通常又は緊急時の連絡方法等をあらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めておくことが重要としています。とくに労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、就業規則に規定しなければならないとされ(労働基準法第89条第5号)、中抜け時間の取扱いも就業規則等において定めておくことが重要とされています※1。
規程に書くかどうかの基準は2つ。後から変えたときに不利益になり得るかと、法令上、書くことが求められているか。それ以外は別表と運用マニュアルへ逃がします。常時10人以上の従業員を使用する使用者は就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされており※5、変更には手続が伴うからです。
| 層 | 入れるもの | 変えるときの重さ |
|---|---|---|
| 規程本体 | 目的、適用範囲、就業場所、労働時間制度、中抜けの扱い、時間外等の手続、費用負担、遵守事項、安全衛生、改廃 | 就業規則の変更手続に準じる |
| 別表・様式 | 対象業務の一覧、申請書・報告書の様式、貸与機器の一覧、費用の費目 | 所管部門の判断で更新できる形に |
| 運用マニュアル | 連絡手段の使い分け、会議の作法、機器の設定手順、問い合わせ先 | 随時 |
本記事は規程の条文をどう書くかに絞ります(管理職側の役割はAI時代に管理職に求められる役割の変化で整理)。個別事案の判断は所轄の労働基準監督署・労働局にご確認ください。
対象者の決め方と、許可・申請の手続
線は「人」ではなく「業務」に引きます。条文には業務要件・環境要件・手続要件の3つを書きます。ガイドラインは、一般にテレワークを実施することが難しいと考えられる業種・職種であっても個別の業務によっては実施できる場合があり、オフィスに出勤する労働者のみに業務が偏らないよう、留意することが必要としています。また正規・非正規の不合理な待遇差の禁止から雇用形態の違いのみを理由として対象者から除外することのないよう留意する必要があるとされ、派遣労働者には「派遣労働者等に係るテレワークに関するQ&A」が案内されています※1。
| 条文に書く基準 | 書き方の例 | 注意 |
|---|---|---|
| 業務要件 | 担当業務が別表に定める対象業務に該当すること | 職種名で切らず業務単位で書く |
| 環境要件 | 通信環境および情報を適切に管理できる作業環境を確保できること | 自己負担を前提にしない |
| 手続要件 | 所定の手続により許可を受けていること | 許可の基準を別表で示す |
| 雇用形態のみを理由とする除外 | 条文に書かない | 除外しないよう留意が求められている※1 |
偏りが生じる場合は実施する者の優先順位や頻度等について、あらかじめ労使で十分に話し合うことが望ましいとされます。実施は労働者本人の納得の上で行う必要があり、在宅を希望しない人にはサテライトオフィス勤務やモバイル勤務も考えられます。新入社員、中途採用の社員及び異動直後の社員には、コミュニケーションの円滑化に特段の配慮が望ましいとされています※1。
手続は「誰が決めるか」と「いつまで有効か」を分けて書くと整理できます。
| 都度申請型 | 期間包括許可型 | |
|---|---|---|
| 手続の単位 | 実施する日ごとに申請 | 一定期間の許可を受け、実施日は届出のみ |
| 向く場面 | 試行期間中/頻度が低い | 制度として定着/頻度が高い |
| 弱点 | 形骸化して事後申請が常態化しやすい | 要件を満たさなくなった場合の見直しが遅れやすい |
条文に書くのは、①申請の単位(期間単位なら有効期間) ②申請の期限と方法 ③決裁者と代理 ④不許可・取消の事由 ⑤変更の手続の5点。とくに④が最も抜けます。列挙しておかないと、個別の取消が恣意的に見えます。なお取消は労働条件の変更に踏み込む可能性があります。個別事案の判断は所轄の労働基準監督署・労働局にご確認ください。
就業場所をどう定めるか
「自宅」とだけ書いた規程は足りません。場所を列挙するのではなく、許可の基準を示したうえで包括的に書くのが実務的です。ガイドラインも、労働者の都合に合わせて柔軟に選択できる場合には使用者の許可基準を示した上で、「使用者が許可する場所」においてテレワークが可能である旨を定めておくことが考えられるとしています。形態は在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイル勤務の3分類で、ワーケーションも後二者の一形態として分類できるとされています※1。
| 場所 | 条文での扱い | 許可基準に入れる観点 |
|---|---|---|
| 自宅 | 原則の就業場所として明記 | 作業環境、情報の見え方、緊急時の連絡 |
| サテライトオフィス等 | 会社が指定または承認した施設 | 入退場記録、通信環境、費用の負担者 |
| 実家・帰省先など | 「使用者が許可する場所」として包括的に | 期間、連絡方法、通信環境の確保 |
| 移動中・公共スペース | 原則不可、または業務を限定 | 画面と音声の管理、回線の安全性 |
| 国外 | 個別に判断する旨を明記 | 税務・社会保険・在留資格が絡む |
見落とされやすい論点が2つ。最低賃金は、場所の如何に関わらずテレワークを行う労働者の属する事業場がある都道府県の最低賃金が適用されるとされています。労働条件の明示は、労働基準法第15条・同施行規則第5条第1項第1号の3に基づき、雇入れ直後からテレワークを行わせることが通常想定される場合は雇入れ直後の就業の場所として、契約期間中に想定される場合は変更の範囲として、「使用者が許可する場所」も含め明示する必要があるとされています※1。規程を直したら労働条件通知書の様式も見直してください。
労働時間制度の選択肢と、向き不向き
在宅勤務のために労働時間制度を変える必要は、必ずしもありません。ガイドラインは全ての労働時間制度でテレワークが実施可能であるとし、導入前の制度を維持したままテレワークを行うことが可能と明記しています※1。
| 制度 | テレワークとの関係/規程で書くこと※1 |
|---|---|
| 通常の労働時間制度・変形労働時間制 | 始業終業の時刻や所定労働時間はあらかじめ定めるが、就業規則に定めておくことでテレワーク時に労働者が始業・終業の時刻を変更できるようにすることが可能 |
| フレックスタイム制 | 労働者が始業終業の時刻を決定できる制度でなじみやすい。テレワーク日はコアタイムを設けず、出勤日は設ける運用も可能 |
| 事業場外みなし労働時間制 | 労働時間を算定することが困難なときに適用。要件の充足は個別に確認する |
| 裁量労働制・高度プロフェッショナル制度 | 業務遂行の方法、時間等を労働者の自由な選択に委ねる制度。対象業務・対象者は各制度の要件による |
迷いやすいのが事業場外みなし労働時間制です。次の2つをいずれも満たす場合に適用できるとされ※1、改定の概要でも適用要件の明確化が挙げられています※2。
① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
①は、自分の意思で回線を切断できる、機器から離れられ応答のタイミングを判断できる、会社支給の携帯電話等でも折り返しのタイミングを判断できる場合に満たすとされ、機器を所持していることのみをもって適用されないことはないとされています。②は、指示が業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものでない場合に満たすとされています※1。
「在宅勤務だから事業場外みなしが使える」わけではありません。要件は実態に即して判断されます。断定せず、所轄の労働基準監督署にご確認ください。なお制度ごとに、フレックスは労働時間の適切な把握、事業場外みなしは実態に合ったみなし時間かの労使確認と業務量の見直し、裁量労働制は時間配分の裁量が事実上失われていないかの労使確認が求められています※1。
始業・終業の記録をどう取るか
条文で記録方法を1つに固定しないでください。「客観的な記録による把握を原則とし、これによりがたい場合は自己申告による」という二段構えにしておけば、機器を入れ替えても条文を書き直さずに済みます。ガイドラインは「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日基発0120第3号)も踏まえ、次を挙げています※1。
| 方法 | ガイドラインの記述 | 規程での書き方 |
|---|---|---|
| 客観的な記録 | 情報通信機器の使用時間の記録等により把握する | 原則とする旨を書き、機器名は書かない |
| 入退場の記録 | 記録を把握できるサテライトオフィスではその記録等による | サテライトオフィス勤務の条項に紐づける |
| 自己申告 | 使用時間の記録が始業・終業の時刻を反映できない場合に考えられる | 補完的な位置づけとして書く |
| 簡便な方法 | 一日の終業時に、始業時刻及び終業時刻をメール等にて報告させる | 様式は別表に置く |
自己申告による場合に必要な措置は3点です。①労働者と、実際に労働時間を管理する者の双方への十分な説明。②パソコンの使用状況など客観的な事実と申告時刻に著しい乖離があるときの補正。③時間外労働の申告時間数に上限を設けるなど適正な申告を阻害する措置を講じないこと。「著しい乖離」の例は、申告時間以外にメールが送信されている、申告時刻の外で長時間パソコンが起動していた記録がある、といった事実です※1。上限を設けない旨と乖離時は補正する旨を条文に入れてください。
中抜け時間の3つの扱い方
質問が多いのが中抜け時間です。ガイドラインはこれを「一定程度労働者が業務から離れる時間」と表現し、まず労働基準法上、使用者は把握することとしても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでもよいとしています※1。把握するかしないかから決める、という順序です。
| 型※1 | 内容 | 注意 |
|---|---|---|
| ①休憩として扱い終業を繰り下げる | 把握したうえで休憩時間として取り扱い、終業時刻を繰り下げる | 繰り下げの上限や深夜帯に及ばない扱いを決める |
| ②時間単位の年次有給休暇 | 把握したうえで時間単位の年次有給休暇として取り扱う | 導入要件があるため可否は所轄の労働基準監督署に確認 |
| ③把握せず労働時間として扱う | 始業及び終業の時刻の間の時間について、休憩時間を除き労働時間として取り扱う | 「離席した分を後で引く」運用と両立しない |
把握する場合は一日の終業時に労働者から報告させることが考えられるとされ、取扱いはあらかじめ就業規則等において定めておくことが重要とされています。フレックスタイム制なら、中抜け時間も労働者自らの判断により終業時刻を遅くしたり、清算期間の範囲内で他の労働日において調整したりすることが可能で、申請自体を不要にできます※1。
混同されやすい2点も整理しておきます。就業場所間の移動時間は、自由利用が保障されていれば休憩時間として扱うことが考えられる一方、急きょ出勤を求めるなど移動を命じ自由利用が保障されていない場合は労働時間に該当するとされています。休憩の一斉付与は労働基準法第34条第2項の原則がありますが、テレワークを行う労働者について労使協定により適用除外とすることが可能とされています※1。
時間外・休日・深夜労働を申請制にする
在宅勤務で労働時間が伸びるのは意欲の問題ではなく、切れ目がないことが原因です。条文では「原則禁止・事前申請」と書き、申請しやすい受け皿を用意します。テレワークでも時間外・休日労働には三六協定の締結、届出や割増賃金の支払が必要で、深夜労働には深夜割増賃金の支払が必要とされています※1。
| 長時間労働を防ぐ手法※1 | 実装先 |
|---|---|
| 時間外等にメールを送付することの自粛を命ずること等 | 規程(遵守事項)+運用 |
| 所定外深夜・休日は事前許可がない限りシステムにアクセスできない設定 | 情報システム側 |
| 労使の合意により、時間外等の労働が可能な時間帯や時間数を設定する | 規程(手続条項) |
| 労働時間の記録を踏まえた注意喚起、システムによる自動警告 | 運用 |
| 勤務間インターバル制度 | 規程(導入する場合) |
手続については、時間外等の労働を行う場合の手続等を就業規則等に明記しておくことや、テレワークを行う労働者に対して書面等により明示しておくことが有効であるとされています※1。「夜の連絡に応答しなくてよい」を規程に明記すると、現場の判断が揃います(人事評価との関係は後述します)。上限規制や三六協定の内容は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
通信費・光熱費・機器と、手当の設計
費用負担の条文は「誰が」「いくらまで」「どうやって請求するか」で組み立てます。ガイドラインは労使のどちらがどのように負担するか、使用者が負担する場合における限度額、費用を請求する場合の請求方法等を労使で十分に話し合い就業規則等に規定しておくことが望ましいとしています※1。労働者に一部でも負担させるなら書く、という向きの規律です(労働基準法第89条第5号)。
| 費目 | 方式の選択肢 | 条文での書き方 |
|---|---|---|
| 情報通信機器 | 貸与/個人所有の利用を認める | 貸与を原則にすると負担の論点が小さくなる |
| 通信費 | 実費/定額/会社回線の貸与 | 方式を明記し、金額は別表に置く |
| 電気・水道等 | 実費/定額/負担しない | 切り分けの困難さを前提に選ぶ |
| 消耗品・印刷、サテライト利用料 | 会社支給/立替精算/不可 | 情報管理の条項と整合させる |
| 出社時の交通費 | 定期券/実費精算 | 切替えは賃金規程の変更を伴う |
実費方式は、通信費や電気料金等が増加する場合に実際の費用のうち業務に要した実費の金額を在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえて合理的・客観的に計算し、支給することも考えられるとされています※1。定額方式は、事業主向けリーフレットに通信回線の使用料等は個人使用と業務使用との切り分けが困難であるため、一定額を会社負担としている例も見られるとの記載があります※3。金額の水準は本記事では扱いません。なお社内教育や研修制度の定めも就業規則への規定が求められます(同条第7号)。
手当を作る前に確定させるのは、その手当が「実費の弁償」なのか「賃金」なのかです。源泉所得税の課税関係は国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(令和3年1月15日)が案内されており※1、税務上の取扱いは同資料と所轄の税務署にご確認ください。あわせて割増賃金の算定基礎、社会保険・労働保険への影響、出社日・欠勤・休職の扱いを先に決めます。規程本体には支給する旨・考え方・支給しない場合を書き、金額と計算方法は賃金規程または別表に置いてください。
安全衛生 — 作業環境と健康確保
自宅は会社が用意した作業場ではありません。ただし事業者の措置がなくなるわけではない、というのがガイドラインの立て方です。労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、自宅等においてテレワークを実施する場合においても、事業者は労働者の安全と健康の確保のための措置を講ずる必要があるとされ、項目が列挙されています※1。
| 項目 | 根拠条文(労働安全衛生法)※1 |
|---|---|
| 健康相談を行うことができる体制の整備 | 第13条の3 |
| 雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育 | 第59条 |
| 必要な健康診断とその結果等を受けた措置 | 第66条から第66条の7まで |
| 長時間労働者への医師による面接指導と労働時間の状況の把握 | 第66条の8、第66条の9、第66条の8の3 |
| ストレスチェックとその結果等を受けた措置 | 第66条の10 |
| 健康教育及び健康相談その他健康の保持増進のための措置 | 第69条 |
作業環境については明快な整理があります。自宅等では事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則の一部、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号)は一般には適用されないが、これらの衛生基準と同等の作業環境となるよう、事業者は教育・助言等を行い、チェックリスト(労働者用)を活用すること等により状況の報告を求めることが重要、とされています※1。つまり会社が立ち入るのではなく、労働者が自己点検して報告する設計です。チェックリストは事業者用・労働者用の2種類が掲載ページで公開され※4、労働者向けリーフレットでも案内されています※6。
| 労働者用チェックリストの観点※1 | 確認の中身 |
|---|---|
| 作業場所・姿勢 | 手足を伸ばせる空間があるか。眼、肩、腕、腰に負担がかからない姿勢で作業できるか |
| つまづき・電気設備・地震対策 | 障害物やカーペットの継ぎ目、電源コード等はないか。プラグ・コンセント・配電盤は良好か。落下や転倒の措置を講じているか |
| 明るさ・換気・温湿度 | 照明が不十分なら卓上照明を用いているか。グレアを防ぐ位置か。換気と冷暖房・通風の措置が可能か |
| 騒音・休憩・相談窓口 | 会議の音声が聞き取れるか。著しく集中力を欠かないか。水分補給と休憩ができるか。相談窓口を把握しているか |
点検の頻度にも手がかりがあります。事業者用チェックリストには定期的(半年に1回程度)に実施し、その結果を衛生委員会等に報告してくださいとの案内が置かれ、初回は事業者用・労働者用の両方を活用して労使で確認した上で作業を行わせることが重要とされています※1。「初回」と「半年ごと」を規程に書けば、点検が制度になります。
メンタルヘルスは、上司等が心身の変調に気づきにくい状況になる場合が多いとされ、健康相談体制の整備やコミュニケーション活性化の措置が望ましいとされています。労災は、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となるとされ、私的行為等が原因のものは認められません。労働者への周知や、労働時間・災害発生状況の記録も望ましいとされます。ハラスメントも出勤する働き方と同様に防止対策が必要です※1。個別事案の判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
情報管理 — 持ち出し・家庭内・共有スペース
情報管理の条文は、禁止の列挙から書き始めると穴が空きます。先に作るべきは「持ち出さなくても仕事が終わる状態」です。ガイドラインも、情報セキュリティの観点から全ての業務を一律にテレワークの対象外と判断するのではなく、業務毎に個別に判断することが望ましいとし、総務省「テレワークセキュリティガイドライン」等を活用した対策と教育が望ましいとしています※1。規程で決めるのは3つ。対象情報の区分(持ち出してよい/承認が要る/持ち出さない)、持ち出しと保存の可否(貸与端末に限るか、保存先、紙資料)、事故時の報告(報告先と手段、そして報告した人が不利益を受けない旨)。最後の一文がないと、紛失やのぞき見が会社に上がってきません。
| 場面 | 規程で決めること | 運用で足りること |
|---|---|---|
| 画面が同居者から見える | 第三者が視認できる状態で業務情報を扱わない旨 | 離席時の画面ロック、覗き見防止フィルム |
| 会議の音声が漏れる | 音声が第三者に聞こえる状態で機微な会議に参加しない旨 | ヘッドセットの貸与、時間帯の調整 |
| 紙への印刷 | 自宅での印刷の可否と、廃棄の方法 | 印刷が必要な業務を減らす |
| 私物端末・公共の通信回線 | 利用の可否と、認める場合の条件 | 貸与端末の在庫管理、接続手順の周知 |
| 端末・書類の紛失 | 報告義務と、報告者が不利益を受けない旨 | 連絡先を一枚に印刷して配る |
設計上の注意がひとつ。情報管理を理由にした常時監視は、目的と手段が釣り合っているかを先に確認してください。取得するなら範囲を規程に明記し事前に周知します。ガイドラインが労働時間の把握で挙げているのは機器の使用時間の記録・入退場の記録・自己申告であって※1、監視の強化ではありません。生成AIの利用ルールがある場合は表現を揃えてください(生成AIの社内ガイドラインの作り方)。
評価の扱いと、規程を改訂するときの手順
規程に書くのは評価制度そのものではなく、「テレワークを選んだことで不利にならない」という一文です。ガイドラインは人事評価について企業がその手法を工夫して、適切に実施することが基本であるとし、求める水準を具体的に示すこと、情意面は評価対象となる行動や評価方法を見える化すること、評価者訓練の機会を設けることを望ましい取組として挙げています。「適切な人事評価とはいえない」と明記されているのは2つで、時間外、休日又は所定外深夜のメール等に対応しなかったことを理由とする不利益な評価と、テレワークを実施せずオフィスで勤務していることを理由に出勤者を高く評価すること等です※1。規程には実施の有無を理由に処遇上不利に扱わない旨と時間外等の連絡に応答しなかったことを理由に不利益に扱わない旨を書き、評価項目や評価者訓練は人事評価規程と運用に置きます。
規程は、作るときより直すときに難しくなります。とくに対象者を絞る・頻度を減らす・手当を下げる方向の改訂です。就業規則は変更時も所轄の労働基準監督署長への届出が必要とされ、モデル就業規則の最新版として令和7年12月版が案内されています※5。定められた勤務場所等の範囲を超えてテレワークを行わせる場合は本人の合意を得た上での労働契約の変更が必要であり、合意を得ずに変更する場合には、労働者の受ける不利益の程度等に照らして合理的なものと認められる就業規則の変更及び周知によることが必要であるとされています(労働契約法第8条から第11条まで)※1。
| 改訂の場面 | 確認先 |
|---|---|
| 対象者を絞る/認めていた範囲を狭める | 所轄の労働基準監督署・労働局 |
| 手当を下げる・廃止する | 所轄の労働基準監督署・労働局/税務は所轄の税務署 |
| 労働時間制度を変える | 所轄の労働基準監督署 |
| 就業場所の範囲を変える | 所轄の労働基準監督署 |
| 国外での勤務を認める | 所轄の税務署、所管の機関、出入国在留管理局 |
見直しの契機は条文の末尾に書いておきます。公的資料が改定されたとき、対象業務や対象者を変えるとき、費用の実態が変わったとき、事故やトラブルが起きたとき。所管部門と定例の見直し時期も明記してください。なお厚生労働省は令和3年3月にテレワークガイドラインを改定した旨を事業主向け※3・労働者向け※6のリーフレットで案内しており、改定でタイトルが現在の名称に改められた旨も示されています※2。掲載ページには本文・概要・パンフレット・チェックリストが並びます※4。
よくある質問
どちらでも構いませんが、対象者・費用・手続は変わりやすいため、別規程にして一覧を別表に逃がす形が扱いやすくなります。ガイドラインは、労使で協議して策定したルールを就業規則に定め、労働者に適切に周知することが望ましいとしています。
必ずしも必要ありません。ガイドラインは全ての労働時間制度でテレワークが実施可能であるとし、導入前に採用している制度を維持したままテレワークを行うことが可能であるとしています。
在宅であることだけでは決まりません。情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの2要件をいずれも満たす場合に適用できるとされています。充足は実態で判断されるため、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
ガイドラインは、労働基準法上、使用者は中抜け時間を把握することとしても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしてもいずれでもよいとしています。ただし取扱いは、あらかじめ就業規則等において定めておくことが重要とされています。
一律の定めはありません。ガイドラインは、どちらがどのように負担するか、限度額、請求方法等を労使で話し合って就業規則等に規定しておくことが望ましいとしています。ただし労働者に情報通信機器や作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、就業規則に規定しなければならないとされています(労働基準法第89条第5号)。
ガイドラインは、自宅等では事務所衛生基準規則や労働安全衛生規則の一部などは一般には適用されないとしています。ただし同等の作業環境となるよう教育・助言等を行い、チェックリストの活用等により状況の報告を求めることが重要とされています。
ガイドラインは、時間外、休日又は所定外深夜のメール等に対応しなかったことを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえないとしています。規程に明記しておくと、現場の判断が揃います。
ガイドラインは、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は業務上の災害として労災保険給付の対象となるとし、私的行為等業務以外が原因であるものは認められないとしています。個別事案の判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
参考文献
- ※1 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(本文) 厚生労働省(2026.08.02確認)
- ※2 テレワークガイドラインの改定 主な概要 厚生労働省(2026.08.02確認)
- ※3 (事業主、企業の労務担当者の方へ)テレワークガイドラインを改定しました 厚生労働省(2026.08.02確認)
- ※4 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(掲載ページ) 厚生労働省(2026.08.02確認)
- ※5 モデル就業規則について 厚生労働省(2026.08.02確認)
- ※6 (労働者の方へ)テレワークガイドラインを改定しました 厚生労働省(2026.08.02確認)
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