「うちも対象なのか」——この法律でいちばん多い問いは、たぶんこれです。プラスチック資源循環促進法は、製品を作る人、配る人、捨てる人、集める人のそれぞれに別々のことを求めています。まず自社がどの立場に当たるかを見極めれば、やるべきことは絞り込めます。誰に・何が・いつから求められているのかを、条文と省令の範囲で整理します。
結論:立場ごとに求められることが違う。施行は2022年4月1日
プラスチック資源循環促進法(正式名称「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」・令和3年法律第60号)は、令和4年(2022年)4月1日に施行されています※1。プラ新法とも呼ばれます。
この法律の分かりにくさは、「事業者」を一括りにしていないところにあります。製品を設計する人、消費者に配る人、事業活動でごみを出す人で、求められることが違います。まず自社がどこに当たるかを確かめてください。
| 立場 | 求められること | 線引きの数値 |
|---|---|---|
| プラスチック使用製品の製造事業者等 | 設計指針に即した設計 | — |
| 特定プラスチック使用製品の提供事業者 (12品目を無償で渡す小売・飲食・宿泊など) | 使用の合理化 | 前年度5トン以上で「多量提供事業者」※2 |
| 排出事業者 (事業活動でプラスチックごみを出す事業者) | 排出の抑制・分別・再資源化等 | 前年度250トン以上で「多量排出事業者」※2 |
| 市区町村 | 分別収集・再商品化 | — |
| 製造・販売事業者 | 自主回収・再資源化(任意の認定制度) | — |
もう一点。この法律の中核は「判断の基準となるべき事項」であって、違反すれば直ちに罰金という作りにはなっていません。指導・助言があり、取組が著しく不十分な場合に勧告、従わなければ公表、それでも措置を取らない場合に命令、という段階を踏みます※1。
環境省・経済産業省が公表している法令・政令・省令・告示および普及啓発資料で確認できた内容に限って書いています。自社が対象に当たるかは業態・数量・契約関係で変わる個別判断です。
法律の目的と、なぜ「製品」まで対象を広げたのか
条文の第1条は、この法律が何をしようとしているかを次のように定めています※1。
この法律は、国内外におけるプラスチック使用製品の廃棄物をめぐる環境の変化に対応して、プラスチックに係る資源循環の促進等を図るため、プラスチック使用製品の使用の合理化、プラスチック使用製品の廃棄物の市町村による再商品化並びに事業者による自主回収及び再資源化を促進するための制度の創設等の措置を講ずることにより、生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
ここで読み取っておきたいのは、対象が「容器包装」から「プラスチック使用製品」全体に広がったことです。
それまでの日本のプラスチックリサイクルは、容器包装リサイクル法を軸にしていました。弁当容器やトレー、レジ袋といった「包む」ものが中心です。しかし実際に出るプラスチックには、バケツ、ハンガー、文具、おもちゃ、家電の部品といった製品そのものが大量に含まれ、容器包装ではないため分別ルートに乗りにくい状態が続いていました。
この法律は、その「製品」の側にも制度を用意しました。だから対象事業者の範囲が広く、「うちは容器包装を扱っていないから関係ない」という理屈が通らなくなったわけです。背景としては、プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化への対応が挙げられています※3。
3R+Renewable — 順番に意味がある
この法律の基本方針は、経済産業省・環境省の告示として定められています※4。そこで基本原則とされているのが「3R+Renewable」です。告示は次のように説明しています。
回避可能なプラスチックの使用は合理化(Reduce・Reuse)した上で、(中略)再生素材や再生可能資源(紙・バイオマスプラスチック等)に適切に切り替え(Renewable)、徹底したリサイクルを実施し(Recycle)
実務で効いてくるのは、この並び順です。
| 順 | 考え方 | 現場での問い |
|---|---|---|
| 1 | Reduce・Reuse(使用の合理化) | そもそも、それは要りますか |
| 2 | Renewable(再生素材・再生可能資源への切替) | その素材でなければいけませんか |
| 3 | Recycle(徹底したリサイクル) | 使った後、資源として戻せますか |
| 4 | 熱回収によるエネルギー利用 | 戻せない場合、どうしますか |
素材を切り替える話が先に来がちですが、制度の順序としては「減らす・繰り返し使う」が先です。ここを飛ばして代替素材の検討から入ると、「使う量は変わらないまま単価だけ上がった」となりやすくなります。
この基本方針には、令和元年5月策定の「プラスチック資源循環戦略」が掲げたマイルストーンも引用されています。2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制、2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入、2035年までに使用済プラスチックを100%有効利用などです※4。事業者ごとの義務ではなく国全体の方向性ですが、取引先から求められる水準の背景として押さえておく価値があります。
製造事業者等 — 設計指針と設計認定制度
プラスチック製品を作っている事業者に向けて、国は「プラスチック使用製品設計指針」を告示で示しています※5。令和4年1月19日付の告示で、法律の施行日と同じ令和4年4月1日から適用されています。対象は「プラスチック使用製品製造事業者等」で、特定の業種に限定されていません。指針が挙げる事項は、大きく「構造」と「材料」に分かれます。
| 区分 | 指針が挙げる項目 |
|---|---|
| 構造(8項目) | 減量化/包装の簡素化/長期使用化・長寿命化/再使用が容易な部品の使用又は部品の再使用/単一素材化等/分解・分別の容易化/収集・運搬の容易化/破砕・焼却の容易化 |
| 材料(4項目) | プラスチック以外の素材への代替/再生利用が容易な材料の使用/再生プラスチックの利用/バイオプラスチックの利用 |
| その他 | 製品のライフサイクル評価/情報発信及び体制の整備/関係者との連携/製品分野ごとの設計の標準化並びに設計のガイドライン等の策定及び遵守 |
実務として使いやすいのは、この項目をそのまま設計レビューのチェック欄に落とすやり方です。新製品を起こすときに「単一素材化はできないか」「分解して分別できるか」を必ず一度は問う。それだけでも後工程のリサイクルしやすさは変わります。
ただし、指針にあるとおりライフサイクル全体で見ることが求められます。薄くすれば減量化にはなりますが、壊れやすくなって交換頻度が上がれば意味がありません。項目どうしが引っ張り合う場面では、どれを優先したのかを記録に残すことが対外的な説明で効いてきます。
設計認定制度 — 認定を受けるとどうなるか
設計指針に適合していることについて、主務大臣の認定(設計認定)を受ける制度が用意されています※6。任意の制度で、取らなければ違反になるものではありません。環境省の説明では、認定を受けた製品について「グリーン購入法上の配慮をすることやリサイクル設備を支援すること」が示されています※6。公的調達で評価されやすくなる方向の措置です。
実務上の注意点は、認定の基準が製品分野ごとに定められていることです。環境省の関連法令ページに掲載されている認定基準は、現時点では清涼飲料用ペットボトル容器/文具/家庭用化粧品容器/家庭用洗浄剤容器の4分野についてのものです※7。分野ごとに「申請の手引き」と様式類一式も公開されています。
自社製品がこの分野に当たらない場合、現状では申請できる基準が用意されていないことになります。ただし基準は追加され得るので、検討しているなら最新の掲載状況を確認してください。
認定を取らない場合でも、設計指針に即した設計を行うこと自体は、あらゆる製造事業者等に向けられています。認定はその上に乗る任意の仕組みだと捉えてください。
特定プラスチック使用製品 — 12品目・対象業種と、5トンの線
もっとも話題になったのがこの部分です。スプーンやストローの話は、ここから来ています。法律は「特定プラスチック使用製品」を、商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品(容器包装リサイクル法上の容器包装を除く)として政令で定めるものと定めています※1。政令(施行令)の別表が、次の12品目を挙げています※2。
| グループ | 品目 | 対象となる業種 |
|---|---|---|
| 食事用具・ストロー | フォーク/スプーン/テーブルナイフ/マドラー/飲料用ストロー | 各種商品小売業(無店舗を含む)、飲食料品小売業(特定小売業を除く。無店舗を含む)、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業※8 |
| アメニティ | ヘアブラシ/くし/かみそり/シャワーキャップ/歯ブラシ | 宿泊業※8 |
| 衣類関連 | 衣類用ハンガー/衣類用カバー | 各種商品小売業(無店舗を含む)、洗濯業※8 |
見落とされやすいのが、「無償で提供される」ことと「容器包装を除く」ことの2点です。
- 販売しているものは対象外です。店頭で歯ブラシを商品として売っているなら、特定プラスチック使用製品ではありません。宿泊施設が客室に無償で置いているものが対象です。
- 弁当容器やレジ袋は対象外です。容器包装リサイクル法上の容器包装に当たるため、定義から除かれています。
- 業種で切られています。アメニティ5品目の対象は宿泊業です。オフィスで来客用に配っている、という話とは別の枠組みです。
自社が該当するかは、「品目」と「業種」の両方が合致するかで判断します。
使用の合理化として、実際に何をするのか
12品目が対象になったからといって、提供をやめなければならないわけではありません。省令は「使用の合理化」のための措置をいくつも並べており、そこから選ぶ形です※9。大きくは2系統に分かれます。
| 系統 | 措置の例(省令が挙げるもの) |
|---|---|
| 提供方法の工夫 | 有償で提供すること/使用しないよう誘引するための景品等の提供(ポイント還元等)/提供について消費者の意思を確認すること/繰り返し使用を促すこと |
| 製品そのものの工夫 | 薄肉化・軽量化その他の設計の工夫/商品又はサービスに応じて適切な寸法のものを提供すること/繰り返し使用が可能な製品を提供すること |
コンビニで「スプーンは要りますか」と聞かれるようになったのも、ホテルでアメニティがフロント前の棚に移ったのも、この枠組みの中の選択です。有償化は省令が挙げる選択肢の一つであって、法律が一律に有料化を命じたわけではありません。
加えて省令は、情報の提供(店頭での掲示、インターネットでの公表、製品への表示といった方法で取組を消費者に伝えること)と、責任者の設置と従業者への研修についても定めています※9。
この2つは見落とされがちですが、現場のオペレーションを変える以上、決めた人と伝える手段がなければ回りません。誰が決め、どう掲示し、新人にどう伝えるかまで書き出しておいてください。
多量提供事業者(前年度5トン以上)に加わること
特定プラスチック使用製品を扱う事業者のうち、前年度に提供した量が5トン以上の事業者は「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」と位置づけられます※2。政令が定める要件です。
この線を越えると、行政の関与の仕方が変わります。整理すると次のようになります※1※8。
| すべての提供事業者 | 多量提供事業者(5トン以上) | |
|---|---|---|
| 判断基準への対応 | 求められる | 求められる |
| 指導・助言 | 対象 | 対象 |
| 勧告 | 対象外 | 取組が著しく不十分な場合に対象 |
| 公表 | 対象外 | 勧告に従わなかった場合に対象 |
| 命令 | 対象外 | 公表後も措置を取らない場合に対象 |
「5トン」はプラスチックの重量です。スプーン1本の重さを考えると相当な提供量にならないと届かない水準ですが、チェーン展開している小売・飲食・宿泊では現実に問題になります。まずは年間の提供量を概算で押さえるところから始めてください。仕入数量と単重が分かれば計算できます。あわせて省令は、提供量や取組とその効果を公表するよう努めることも定めており※9、その意味でも数量の把握は避けて通れません。
排出事業者の責務 — 求められる措置と、250トンの線
12品目の話に比べて注目されにくいのですが、関係する事業者の数でいえばこちらのほうが圧倒的に多いのが排出事業者の規定です。環境省は「事務所、工場、店舗等で事業を行う多くの事業者が対象」と説明しています※10。
法律上の「排出事業者」は、プラスチック使用製品廃棄物のうち産業廃棄物に該当するもの、又はプラスチック副産物を排出する事業者と定義されています※1。製造業に限りません。事務所から出る梱包材やファイル類、店舗から出る什器や資材も、産業廃棄物として出るなら関係します。求められることは判断基準を定めた命令に整理されており、柱は「排出の抑制」と「再資源化等」です※11。
| 柱 | 命令が挙げる措置 |
|---|---|
| 排出の抑制 | 製造・加工・修理の過程での原材料の使用の合理化、端材の発生の抑制/流通・販売で使うプラスチック製包装材の簡素な包装の推進、プラスチックに代替する素材の活用/使用するプラスチック使用製品をなるべく長期間使用すること、過剰な使用の抑制 |
| 再資源化等 | リチウムイオン蓄電池を使用する機器その他、再資源化等を著しく阻害するおそれのあるものの混入を防止すること/再資源化が実施できない場合に熱回収を行うこと。その際は可能な限り効率性の高い方法をとり、委託先も効率性の高い熱回収を行う者を選定すること/飛散・流出・悪臭その他による生活環境の保全上の支障が生じないよう必要な措置を講ずること |
このほか命令は、委託時の情報提供(排出・分別の状況、性状、荷姿などを受託者に伝えること)、従業員への教育訓練、事業場ごとの責任者の選任その他管理体制の整備、関係者との連携への配慮を定めています※11。
実務でまず効くのは混入の防止です。リチウムイオン電池が名指しされているのは、処理工程での発火事故が現実に起きているからで、この一点だけでも周知の価値があります。
多量排出事業者(前年度250トン以上)の目標設定と公表
排出事業者のうち、前年度のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上の事業者は「多量排出事業者」となります※2。判断基準の命令で、次のことが定められています※11。
- 目標の設定… 事業活動に伴い生ずるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等に関する目標を定めること。
- 情報の公表… 毎年度、排出量と目標の達成状況に関する情報を、インターネットの利用その他の方法により公表するよう努めること。
公表について命令は「努めるものとする」と書いています。義務の強さは条文の語尾に表れるので、「するものとする」と「努めるものとする」は別だと読んでください。とはいえ、取組が著しく不十分と認められれば勧告・公表・命令の対象になり得ます※1※10。放置してよい話ではありません。
250トンは中小企業には遠い数字に見えるかもしれません。ただし「事業者単位」で見る点に注意が必要です。拠点ごとでは小さくても、全社で足すと届くことがあります。多拠点で製造や配送を行っているなら、一度合算してみてください。
市区町村の分別収集と、事業者による自主回収・再資源化
家庭から出るプラスチックについては、市区町村の役割が定められています。環境省は、市区町村がプラスチック使用製品廃棄物の分別の基準を策定し、その基準に従って適正に分別して排出されるよう市民に周知するよう努めなければならないと説明しています※12。努力義務です。集めたものを再商品化するルートは2つあります※12。
| 指定法人ルート | 再商品化計画の認定ルート | |
|---|---|---|
| やり方 | 容器包装リサイクル法に規定する指定法人(公益財団法人日本容器包装リサイクル協会)に委託して再商品化を行う | 市区町村が単独で又は共同して再商品化計画を作成し、国の認定を受けて、認定計画に基づき再商品化実施者と連携して行う |
これは自治体の話で、直接に事業者の義務が生まれるわけではありませんが、無関係でもありません。
1つは、自社製品が家庭でどう分別されるかが変わること。製品プラスチックが分別収集の対象になれば、その先で選別・再資源化されます。設計指針が「分解・分別の容易化」「単一素材化等」を挙げているのは、この出口とつながっています※5。もう1つは、地域によって運用が違うこと。市区町村ごとに分別の基準が定められるため、多拠点なら拠点ごとに自治体のルールを確認する必要が出てきます。本社の常識で全社に周知すると、現場で食い違いが起こります。
製造・販売事業者の自主回収・再資源化
自社が作った、あるいは売った製品を、使用後に自分たちで回収したい——という取り組みを後押しする仕組みもあります。「自主回収・再資源化事業計画」の認定制度です※13。対象は当該プラスチック使用製品を製造、販売又は提供する事業者で、認定を受けると廃棄物処理法に基づく業の許可がなくても、使用済プラスチック使用製品の自主回収・再資源化事業を行うことができるという効果があります※13。
ここが実務上の勘所です。通常、他人の廃棄物を集めて運ぶには廃棄物処理法上の許可が要ります。自社製品を店頭で回収したいと考えても、この壁で止まることが多くありました。認定はその壁を越えるための仕組みです。制度としては任意で、環境省も「積極的に自主回収・再資源化を行うことが期待されています」という書き方をしています※13。
なお、排出事業者側にも再資源化事業計画の認定という別の仕組みがあり、それぞれ申請の手引きと様式が公開されています※7。計画の内容や処理体制について求められる事項があるため、手引きで要件を確認するところから始めてください。
行政措置と罰則 — どこまでが「義務」なのか
罰則規定は置かれています。ただし、いきなり適用されるものではありません。条文上の段階を押さえておくと、社内で説明するときに誤解が減ります。特定プラスチック使用製品の提供事業者について、法律は次の順序を定めています※1。
(すべての提供事業者)
(多量提供事業者・著しく不十分な場合)
(勧告に従わないとき)
(公表後も措置を取らないとき)
排出事業者についても、第45条(指導及び助言)、第46条1項(勧告)、同4項(公表)、同5項(命令)というほぼ対称の構造が置かれています※1。命令に進むには審議会等の意見を聴くことが条文上の要件とされており、行政の側にも手続の重さがあります。そのうえで罰則です※1。
| 条 | 対象となる行為 | 罰則 |
|---|---|---|
| 第62条 | 第30条4項・第46条5項の命令に違反した場合 | 50万円以下の罰金 |
| 第64条 第65条 | 報告をせず若しくは虚偽の報告をしたとき、又は立入検査を拒み、妨げ、忌避したとき | 30万円以下/20万円以下の罰金 |
| 第66条 | 両罰規定(上記の違反について、行為者のほか法人にも刑を科す) | 各本条の刑 |
整理すると、「12品目を配ったら罰金」ではありません。取組が著しく不十分と判断され、勧告・公表を経てもなお正当な理由なく措置を取らず、命令にも違反した場合に、はじめて罰則の話になります。一方で報告や立入検査への対応は別枠です。どの規定がどう適用されるかは個別の事実関係によります。
中小企業にとっての実務 — 何から手をつけるか
ここまでの内容を専任部門のない会社が全部やるのは現実的ではありません。効き目の大きい順に4つだけ挙げます。
1つ目。自社がどの立場に当たるかを確定する。製造事業者等か、12品目の提供事業者か、排出事業者か。複数に該当することも普通にあります。製造業なら「製造事業者等」と「排出事業者」の両方に当たるのが通常です。ここが曖昧なまま調べ始めると、関係のない条文を読み込むことになります。
2つ目。数量を概算する。12品目を扱うなら年間の提供量、プラスチックごみを出すなら年間の排出量。5トン・250トンの線に対して自社がどこにいるかが分かれば、対応の重さが決まります。廃棄物の量はマニフェストや処理委託の記録から拾えることが多く、ゼロから測る必要はありません。
3つ目。責任者を決める。省令・命令のいずれにも、責任者の設置や管理体制の整備に関する定めがあります※9※11。担当が決まっていないことが、いちばんよくある止まり方です。
4つ目。混入防止と分別を現場に伝える。再資源化を著しく阻害するおそれのあるものの混入防止は、命令が明示している項目です※11。掲示1枚から始められます。
・多量提供事業者・多量排出事業者に当たるかの判断が微妙なとき
・自主回収や再資源化の事業計画の認定申請を検討するとき
・廃棄物の処理委託の枠組み自体を変えるとき
・取引先から契約書で環境対応を求められたとき
取引先から求められる対応 — 法令より先に来ることがある
実務でよくあるのは、法令の義務より先に取引先からの要請が来るという順序です。とくに上場企業や大手小売と取引がある場合、法律が直接求めていない情報まで聞かれることがあります。問われやすいのは次のような内容です。
| 聞かれること | 準備しておくとよいもの |
|---|---|
| 納品物に使っているプラスチックの種類と量 | 材質と重量が分かる仕様書。単一素材か複合材かの区別 |
| 梱包材の削減の取組 | 簡素な包装への切替の記録※11 |
| 再生材やバイオマス素材の使用有無 | 使用している場合の配合率と、その根拠資料 |
| 廃棄物の処理・再資源化の状況 | 委託先と処理方法。再資源化なのか熱回収なのか |
| 設計での配慮 | 設計指針の項目に沿った検討の記録※5 |
押さえておきたいのは、「やっていること」と「示せること」は別だという点です。実際に包装を簡素化していても、いつ何をどう変えたかの記録がなければ質問に答えられません。取組を始めるときに、同時に記録の形を決めておくことをおすすめします。
要請の背景には取引先自身の目標があるので、相手が何を達成しようとしているのかを聞くと過不足のない答え方ができます。調達方針を基準に落とす側の視点はサステナブル調達と企業の環境対応 — 方針を調達基準に落とす手順で、調達要件への対応の遅れが取引を失うリスクとして事業の継続性に関わる点はゴーイング・コンサーンとは — 継続企業の前提と、事業を続けるための備えで扱っています。
代替素材の選択肢と、選ぶときの見方
設計指針は材料に関する事項として、プラスチック以外の素材への代替/再生利用が容易な材料の使用/再生プラスチックの利用/バイオプラスチックの利用の4つを挙げています※5。排出事業者の判断基準の命令も、排出の抑制の手段として「プラスチックに代替する素材を活用すること」を挙げています※11。選択肢を整理すると次のようになります。
| 方向 | 内容 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 減らす | 薄肉化・軽量化、包装の簡素化、そもそも配らない | 3R+Renewableの順序では、これが最初 |
| 他素材へ | 紙、木、金属など | 強度・耐水性・コスト。回収ルートが変わらないか |
| 再生プラスチック | 使用済みプラスチックを原料に戻して使う | 供給の安定性。品質のばらつき |
| バイオマスプラスチック | 植物などの再生可能資源を原料とする | 原料由来と分解性は別の話。配合率の確認 |
| 生分解性プラスチック | 微生物の働きで分解される | どの環境で・どの期間で分解するのか |
混同しやすいのが、「バイオマス由来」と「生分解性」は別の性質だという点です。植物由来でも分解しないものがあり、石油由来でも生分解するものがあります。原料の話と、使い終わったあとの話は分けて確認してください。素材ごとの違いはバイオプラスチックの種類と違い — 生分解性・バイオマス由来の見分け方で整理しています。
もう一点、「分解する」という表現には条件がつきます。工業用のコンポスト設備で高温を保った場合にのみ分解するもの、土壌中で分解するもの、海水中で分解するもの——同じ「生分解性」でも成立する環境が違います。どの環境で、どの期間で、何にまで分解するのかを必ず確認してください。制度ごとに見ている性質も違います。レジ袋有料化で対象外となる袋の条件が「海洋生分解性プラスチックの配合率100%」「バイオマス素材の配合率25%以上」とされているのは、その一例です※14。
よくある誤解
説明していて繰り返し出てくる誤解を挙げます。
- 誤解1:12品目は提供が禁止された。禁止ではありません。求められているのは「使用の合理化」で、有償提供・意思確認・ポイント還元・薄肉化・繰り返し使用可能な製品への切替など、省令が挙げる措置から選ぶ形です※9。有償化はその選択肢の一つで、一律の有料化を命じた規定ではありません。
- 誤解2:レジ袋有料化もこの法律による。別の制度です。プラスチック製買物袋の有料化は令和2年7月1日から、容器包装リサイクル法に基づく判断基準省令の改正で行われています※14。施行時期も根拠法も異なります。
- 誤解3:弁当容器やレジ袋も12品目に含まれる。特定プラスチック使用製品の定義から容器包装リサイクル法上の容器包装は除かれています※1。
- 誤解4:中小企業は対象外。規模による適用除外はありません。5トン・250トンの線は「多量提供事業者」「多量排出事業者」を切り分けるためのもので※2、それ未満でも指導・助言の対象にはなります※1。
- 誤解5:違反すればすぐ罰金。指導・助言、勧告、公表を経た命令に違反した場合などが罰則の対象です※1。報告や立入検査の拒否・虚偽報告は別枠で対象になり得ます。
- 誤解6:認定を取らないと違反になる。設計認定も自主回収・再資源化事業計画の認定も任意です。
これから — 見直し条項と、いま備えること
この法律の附則には、政府は施行後5年を経過した場合において施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるという趣旨の検討条項が置かれています※1。制度は固定ではありません。対象品目や基準が将来見直される可能性を前提に構えておくのが現実的です。
そのうえで、いま備えておく価値があるのは次の3点です。
- 数量を継続的に把握する仕組み。提供量・排出量が分からないと、基準に対する位置も改善の効果も測れません。年1回でよいので、同じ方法で数える形を作ってください。
- 記録を残す習慣。包装を変えた、素材を切り替えた、意思確認を始めた——いつ何をしたかを残しておけば、取引先の質問にも行政の照会にも同じ資料で答えられます。
- 素材の選択肢を先に調べておく。切り替えが必要になってから探すと、供給や価格の条件で行き詰まります。
最後に。この法律への対応は環境対応であると同時に、業務の棚卸しでもあります。何をどれだけ使い、どれだけ捨てているかを数えることは、コストの構造を見直す作業と重なります。業務そのものを棚卸しする視点はAIで効率化できる業務の見極め方と棚卸しの手順でも扱っており、着手のしかたは近い発想です。
なお本記事は、公表されている法令・告示・普及啓発資料の範囲での整理です。自社への適用の可否や対応の水準は個別の事情によります。所管官庁の窓口や専門家への確認をおすすめします。
よくある質問
令和4年(2022年)4月1日から施行されています。正式名称は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(令和3年法律第60号)で、公布は令和3年6月11日です。基本方針と設計指針の告示は令和4年1月19日付で定められ、法律の施行日から適用されています。
施行令の別表で、フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー、ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ、衣類用ハンガー、衣類用カバーの12品目が定められています。商品の販売や役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるものが対象で、容器包装リサイクル法上の容器包装は除かれます。販売している商品は対象外です。
品目のグループごとに業種が分かれます。食事用具とストローは各種商品小売業、飲食料品小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業。ヘアブラシなどのアメニティ5品目は宿泊業。衣類用ハンガーと衣類用カバーは各種商品小売業と洗濯業です。品目と業種の両方が合致するかで判断します。
いずれも施行令が定める線引きです。前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上だと「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」、前年度のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上だと「多量排出事業者」に当たります。この区分に入ると、取組が著しく不十分な場合に勧告・公表・命令の対象になり得ます。
一律の有料化は求められていません。省令は使用の合理化の措置として、有償提供のほか、ポイント還元等による誘引、提供について消費者の意思を確認すること、繰り返し使用を促すこと、薄肉化・軽量化、適切な寸法のものを提供すること、繰り返し使用が可能な製品を提供することなどを挙げており、そこから選ぶ形になっています。
別の制度です。プラスチック製買物袋の有料化は令和2年7月1日から、容器包装リサイクル法に基づく判断基準省令の改正によって実施されています。プラスチック資源循環促進法の施行は令和4年4月1日で、根拠となる法令も時期も異なります。レジ袋は容器包装に当たるため、12品目にも含まれません。
罰則規定は置かれていますが、段階を踏んだ先にあります。まず指導・助言があり、取組が著しく不十分な場合に勧告、従わなければ公表、それでも正当な理由なく措置を取らない場合に命令、という順序です。その命令に違反した場合は50万円以下の罰金と定められています。報告をせず若しくは虚偽の報告をしたとき、立入検査を拒み妨げ忌避したときも別枠で対象になり得ます。適用の可否は個別の事実関係によります。
規模による適用除外は設けられていません。事務所、工場、店舗等で事業を行う多くの事業者が排出事業者として関係します。5トン・250トンの線は多量提供事業者・多量排出事業者を切り分けるためのもので、それ未満でも指導・助言の対象にはなります。自社がどの立場に当たるかと、年間の提供量・排出量の概算を押さえるところから始めるのが現実的です。
4つの順序をおすすめします。第一に自社がどの立場に当たるかを確定すること(複数該当が普通です)。第二に年間の提供量・排出量を概算すること。第三に取組の責任者を決めること。第四に、再資源化を阻害するものの混入防止と分別を現場に周知することです。数量はマニフェストや処理委託の記録から拾えることが多く、ゼロから測り直す必要はありません。
参考文献
- ※1 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(令和三年法律第六十号) e-Gov法令検索(デジタル庁)(2026.08.03確認)
- ※2 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令 e-Gov法令検索(デジタル庁)(2026.08.03確認)
- ※3 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律について(普及啓発ページ) 環境省(2026.08.03確認)
- ※4 プラスチックに係る資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(告示) 経済産業省・環境省(2026.08.03確認)
- ※5 プラスチック使用製品設計指針(告示) 経済産業省・環境省(2026.08.03確認)
- ※6 プラスチック使用製品設計指針と認定制度 環境省(2026.08.03確認)
- ※7 関連法令・手引き等 環境省(2026.08.03確認)
- ※8 特定プラスチック使用製品の使用の合理化 環境省(2026.08.03確認)
- ※9 特定プラスチック使用製品提供事業者の判断の基準となるべき事項等を定める省令 e-Gov法令検索(デジタル庁)(2026.08.03確認)
- ※10 排出事業者に求められる取組 環境省(2026.08.03確認)
- ※11 排出事業者の判断の基準となるべき事項等を定める命令 e-Gov法令検索(デジタル庁)(2026.08.03確認)
- ※12 市区町村の分別収集・再商品化 環境省(2026.08.03確認)
- ※13 製造・販売事業者等による自主回収・再資源化 環境省(2026.08.03確認)
- ※14 プラスチック製買物袋有料化 2020年7月1日スタート 経済産業省(2026.08.03確認)
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