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バイオプラスチックの種類と選び方 — 生分解性とバイオマスの違い

最終更新日 2026.06.09

監修:株式会社UNPLACED

「バイオマス」と「生分解性」は、同じ意味だと思われがちです。けれども前者は原料の話、後者は使い終わったあとの話で、まったく別の軸を指しています。そして生分解性は、どこに置いても勝手に土に還る性質ではありません。素材の種類、分解に必要な条件、規格と認証の見方、用途別の選び方を、公的資料で確認できる範囲に絞って整理します。

結論:「バイオマス由来」と「生分解性」は、別の軸です

バイオプラスチックをめぐる混乱のほとんどは、まったく違う2つの話が1つの言葉に押し込まれていることから起きます。

ひとつは原料の話。石油からつくるのか、植物などのバイオマスからつくるのか——これが「バイオマスプラスチック」の軸です。もうひとつは使い終わったあとの話。微生物の働きで分解されるのか、されないのか——これが「生分解性プラスチック」の軸です。日本バイオプラスチック協会(JBPA)は、2つを合わせた総称として「バイオプラスチック」を使っています※3※4

生分解する生分解しない
原料がバイオマス由来ポリ乳酸(PLA)、PHBH などバイオPE、バイオPET など
原料が化石資源由来PBAT、PBS・PBSA など一般的なPE・PP・PET

「植物由来だから土に還る」は成り立ちません。バイオPE・バイオPETは化学構造が従来樹脂と同じで、生分解しません。逆に「生分解するから植物由来」も成り立ちません。PBATやPBSは化石資源からつくられる生分解性プラスチックです※4

そしてもう1点。生分解性は「どこに置いても勝手に還る」性質ではありません。JBPAは、生分解の速度は温度・湿度・微生物の影響で変わり、一般には有機性廃棄物とともに大型堆肥化装置に投入すると短期間で生分解するよう設計されている、と説明しています※3

調達で最初に確認する3点
(1) バイオマス由来か、生分解性か、両方か
(2) 生分解性なら、どの環境(コンポスト・土壌・水系・海洋)で、どの試験によって確認されたのか
(3) 使い終わったあと、その環境を実際に用意できるのか

用語の整理 — 「バイオプラスチック」が指す範囲

バイオマスプラスチック。JBPAは「原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的又は生物学的に合成することにより得られる高分子材料」(化学的に未修飾な天然有機高分子材料は除く)と定めています※4。ポイントは「含み」。すべてがバイオマス由来である必要はありません。含有比率は「バイオマス度」と呼ばれ、0か100かではなく連続量です。

生分解性プラスチック。JBPAは「生分解とは、単にプラスチックがバラバラになることではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質」と説明しています※3細かく砕けることは生分解ではない——ここが核心です。

2軸が独立していることは統計にも表れます。JBPAの2023年国内市場推計は、バイオマスプラスチック10.4万トン、生分解性プラスチック7.9万トンで、うちバイオマス成分を含む生分解性プラスチックは15,800トン。生分解性のうちバイオマス由来成分を含むものは、記録上その一部です。

なぜ混同されるのか — 3つの理由

定義を並べれば違いは明らかなのに、実務では繰り返し混同が起きます。理由は3つあります。

  • 1. 名前が似ている。「バイオマスプラ」「生分解性プラ」「バイオプラ」——どれも「バイオ」から始まり、会話のなかでは区別が消えます。
  • 2. 呼び名が変わってきた。日本では長く「グリーンプラ」の名称で運営されてきましたが、JBPAは、この用語が植物由来のプラスチックをもっぱら想起させ生分解性の認証であると理解しづらいとの意見を踏まえ、2021年度総会で現名称へ変更した経緯を公開しています※2運営側自身が混同を認めて改称したわけです。
  • 3. 「環境にやさしい」でひとくくりにされる。何を減らしたいかで軸は変わります。化石資源の使用とCO2排出を減らしたいならバイオマス由来の軸回収しきれず環境に残るごみを減らしたいなら生分解性の軸です。

両方の目的が同時に立つ場合も、まず目的を分けて書き出すほうが軸がぶれません。

主な樹脂の種類 — 何がどちらの軸に入るのか

JBPAは「国内で展開されている生分解性プラスチック」の一覧を公開しており※3、国立環境研究所の環境技術解説はこれらを微生物産生系・天然物系・化学合成系の3つに整理しています※7

バイオマス側についてJBPAは、「全面的バイオマス原料プラスチック」と「部分的バイオマス原料プラスチック」に分けています※4。前者はポリ乳酸や変性澱粉など、後者はポリ乳酸の共重合物や酢酸セルロース系などです。

略称高分子名称2軸での位置づけ(公的資料の記載範囲)
PLAポリ乳酸生分解性あり。バイオマス側は「全面的バイオマス原料」※4。透明性に優れ、農業用シートや食品トレイに※7
PHBHポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)生分解性あり。微生物産生系。PHAはポリプロピレンに近い融点・破壊強度※7
PBS・PBSAポリブチレンサクシネート/同アジペート生分解性あり。現在は石油原料。コハク酸と1,4ブタンジオールの両方が切り替われば全面的バイオマス原料に※4
PBATポリブチレンアジペート/テレフタレート生分解性あり。原料の1,4ブタンジオールをバイオマス原料へ切り替える計画※4
PCLポリカプロラクトン生分解性あり。融点60℃と低く、マルチフィルムやコンポスト用袋に※7
でんぷん系変性澱粉・澱粉ポリエステル等変性澱粉は全面的バイオマス原料。デンプン単独では性質が不十分でブレンドして使う※4※7
バイオPE・バイオPETバイオマス由来だが生分解しない。ロードマップでは類型1に例示※1

樹脂名だけでは判断できません。同じPBSでも原料が切り替われば位置づけが変わり、同じ「植物由来」でもバイオPEなら生分解しません。樹脂名・原料・分解性は別々に確認してください。

バイオプラスチックを表すイメージ。白い台に植物繊維の束、淡い色の樹脂ペレット、厚手の白いシート、透明フィルム、半円板、丸い円盤が横一列に並んでいる

「生分解」とは何を指すのか — 砕けることではありません

JBPAの定義は前述のとおり、単にバラバラになることではなく、分子レベルまで分解して最終的に二酸化炭素と水になる性質を指します※3。国立環境研究所の解説も「使用後は自然界の微生物などの働きによって生分解され、最終的には水と二酸化炭素に完全に分解されるプラスチック」としています※7

つまり「崩壊」と「生分解」は別のものです。細かくなっても分子として残っていれば生分解ではなく、細片化しただけの状態はむしろマイクロプラスチックの問題そのものです。

JBPAは、構成元素は炭素(C)・水素(H)・酸素(O)であり最終的に水と二酸化炭素へ100%分解されるため、生分解生成分が土中に蓄積されることはないと説明しています※3。ただしこれは生分解が完了したときの話です。

JBPAは、コンポスト施設で生ごみと同じ速度で生分解を受ける化学構造は脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリアミノ酸、多糖質などに限られるとし、生分解性プラスチックは熱可塑性のものに限られ熱硬化性のものはないと述べています※3熱硬化性樹脂を置き換えたい用途では、そもそも候補になりません。

分解には条件がある — どこでも自然に還るわけではありません

JBPAは、生分解性プラスチックを土に埋めても分解速度がばらつく理由について、「生分解の速度は温度・湿度・微生物の影響で変わります。一般的には廃棄後、有機性廃棄物と共に大型堆肥化装置に投入すると短期間で生分解するように設計されています」と回答しています※3短期間で分解する前提は、管理された環境を想定したものです。

海洋ではさらに厳しくなります。JBPAは、海洋では陸上に比べて微生物の密度が桁違いに低く、種類も異なると説明しています※2。だから別の制度・別の基準で扱われます。

土壌でも同じです。農研機構は生分解性マルチの分解を評価した研究で、浅い5cm深の部分では土壌の乾燥により分解が遅い傾向が見られたこと、作物残渣を同時にすき込むと土壌酵素活性が高まって分解が促進されたことを報告しています※11

条件内容実務上の含意
微生物分解の主体。密度と種類が環境で異なり、海洋は桁違いに少ない※2環境を特定せずに「生分解する」とは言えない
温度分解速度に影響。堆肥化装置は温度が管理される※3冬季の圃場と稼働中の施設は同条件ではない
水分(湿度)不足すると分解が進みにくい※11乾燥しやすい場所・浅い層では想定より遅くなり得る
期間所定の期間内の生分解度で判定される※2「いつまでに」の合意がないと運用が破綻する

ですから「自然に還る」を条件なしで使うことはできません。正確には「◯◯という環境で、◯◯の試験により、生分解度◯%が確認されている」となります。逆に言えば、条件が揃う場所で使うぶんには設計どおりに働きます。

試験と規格 — 「どの環境で測ったか」が本体です

生分解性は環境ごとに別々の試験方法で測られます。JBPAは、ISOが発行する生分解性試験法と対応JISを次のように示しています※3

試験環境ISO対応するJIS
コンポストISO 14855-1/ISO 14855-2JIS K6953-1/JIS K6953-2
土壌ISO 17556JIS K6955
水系ISO 14851/ISO 14852JIS K6950/JIS K6951
バイオガスプラント(嫌気)ISO 14583(水系)/ISO 13975(スラリー)/ISO 15985(乾式)ISO 14583は対応JISなし/JIS K6961/JIS K6960
海洋ISO 18830/ISO 19679いずれも対応JISなし

「生分解性」の一語では情報が足りません。コンポストで測ったのか、土壌か、海洋かで意味が変わります。カタログに「生分解性」とだけあれば、どの規格のどの試験かを聞くのが出発点です。

また、海洋の試験には現時点で対応するJISがありません※3。国内の標準化がなお進行中の領域です。判定は白黒ではなく所定の期間内に何%の生分解度が確認されたかという形をとります。「環境」「%」「期間」の3点セットで初めて意味を持つと考えてください。

認証マーク — 日本にある3つの識別表示制度

日本では、JBPAが3つの識別表示制度を運営しています※2

制度マークの名称主な基準運用の開始
バイオマスプラバイオマスプラポジティブリスト分類Aのバイオマス由来合成高分子化合物等を25.0重量%以上含む。使用禁止物質等の基準を満たす2006年度総会での承認を得て開始
生分解性プラ生分解性プラ/生分解性バイオマスプラ1重量%以上含まれるすべての有機材料が、指定する生分解性試験で60%以上の生分解度2000年度総会で承認。2021年度総会で「グリーンプラ」から改称
海洋生分解性プラ海洋生分解性プラ/海洋生分解性バイオマスプラ1重量%以上含まれるすべての有機材料が、指定する海洋生分解性試験で90%以上の生分解度2023年度総会での承認を受けて開始

数字の違いに注目してください。陸上は60%以上、海洋は90%以上です※2。また2つの制度は重なり得ます。生分解性プラのうちバイオマスプラの基準も満たす製品は「生分解性バイオマスプラ」の名称とマークを使えます※2。冒頭の2軸マトリクスが、制度としても実装されているわけです。

環境省の環境ラベル等データベースにも登録があります。生分解性プラマークは2000年から運用で、ごみ・コンポスト袋、包装用フィルム、容器、マルチフィルム、農林水産資材など広い範囲が対象です※5。海洋生分解性プラマークは2023年から運用で、包装資材やストロー・カトラリー等が登録されています※6認定製品の数には大きな差があり、海洋のほうは立ち上がりの段階です。

なお各制度はポジティブリスト制で、使用できる材料が事前に登録されています※2。裏を返せば、リストにない材料を使った製品はマークを取れません。

バイオマス度の測り方と、もう1つのマーク

バイオマス由来かどうかは見た目では分かりません。測定には炭素の同位体C-14を使います。JBPAは、C-14は石油等にほとんど含まれないがバイオマス材料には一定量含まれるため、加速器質量分析法(AMS法)等で測定することでバイオマス比率を算出できると説明しています※4

日本有機資源協会の「バイオマスマーク」もあります。バイオマスの割合が乾燥重量10%以上の商品が対象で、マークの数字は乾燥重量に対するバイオマスの割合(%)です。粗製品や食品・医薬品は対象外です※9

バイオマスプラ(JBPA)※2バイオマスマーク(日本有機資源協会)※9
対象プラスチック製品バイオマスを利用した商品全般(食品・医薬品等は対象外)
基準バイオマス由来成分を25.0重量%以上バイオマスの割合が乾燥重量10%以上
数値の表示基準は比率で規定マークにバイオマス度(%)を記載
検証ポジティブリスト制。材料構成と特定元素含有量を提出認定商品を無作為に選び、炭素法(C14法)で定期的に検証

閾値が違う点に注意してください。「バイオマスマークがついている=ほぼ植物でできている」ではありません。どちらの制度の認定で、バイオマス度は何%かまで確認してください。

バイオプラスチックを表すイメージ。繊維の混ざった半透明のシートを、両手で持ち上げて光にかざしている場面

国の方針と、素材の選び方

国の方針は、2021年(令和3年)1月に環境省・経済産業省・農林水産省・文部科学省が合同で策定した「バイオプラスチック導入ロードマップ」に整理されています※1。これは「プラスチック資源循環戦略」(令和元年5月)に基づくもので、環境省のページには、同戦略で「2030年までに、バイオマスプラスチックの最大限(約200万トン)導入を目指す」ことが掲げられていると記されています※1数値目標が置かれているのはバイオマスプラスチックの側です。

ロードマップは3つの類型を示しています。類型1が「バイオマス由来の汎用プラスチック(バイオPE、バイオPET、バイオPP等)」等でリサイクルに悪影響がないもの、類型2がその他のバイオマスプラスチック(非生分解性)、類型3が「生分解性プラスチック(分解環境に適した生分解性機能を持つもの)」と示されています※1

注目したいのは類型3の但し書きです。「分解環境に適した」——国の整理でも、使う場面と分解される場面がセットで想定されています。概要版は使用場面として次を挙げています※1

  • 生ごみ用収集袋(堆肥化・バイオガス化の機能を活かす)
  • 農業用マルチフィルム(土壌にすき込む場合)
  • 肥料被覆材(土壌および海洋での生分解機能)
  • 漁具等の水産用生産資材(海洋生分解機能)

共通点は明快です。いずれも「回収が難しい」か「有機物と一緒に処理される」用途。分別回収できる用途では、生分解性は必ずしも最適解になりません。

用途別の選び方 — 分かれ目は「回収できるか」

選び方の基本形
回収して再生利用できる → バイオマス由来(非生分解性)。リサイクルとの調和を優先
回収が難しい/有機物と一緒に処理される → 生分解性。分解される環境を特定する
どちらの要請もある → 両方の軸を満たす素材。ただし基準と試験環境を必ず確認する
用途検討の起点確認すべきこと
食品残渣(生ごみ)の収集袋生分解性回収先の処理方式(堆肥化・メタンガス発酵)と、その施設が受け入れるか※3
農業用マルチフィルム生分解性土壌へのすき込みが前提か。埋設深さや水分条件で進み方が変わる※11
水産用資材・肥料被覆材海洋生分解性海洋生分解性試験で確認されているか(90%以上の基準)※2
一般の容器包装・ボトルバイオマス由来(非生分解性)既存のリサイクルルートに乗るか。ロードマップ類型1の考え方※1
レジ袋・ごみ袋用途による家庭で何と一緒に捨てられるか。自治体の分別区分
繊維製品・雑貨・ノベルティ目的によるCO2削減が目的か、環境への残留抑制が目的か

同じ製品カテゴリでも、使われ方で答えが変わります。堆肥化施設へ行く袋と焼却される袋では、生分解性を持たせる意味がまったく違います。製品ではなく「その製品がたどる経路」で判断する——これが選定の勘所です。

コスト・加工性・供給 — 現実的な制約

国立環境研究所の解説は、生分解性プラスチックの課題として従来のプラスチックより高価であること、物性・成形性が従来品に劣る場合が多いこと、コンポスト施設の整備が遅れていること、分解の制御が難しいことを挙げています※7置き換えれば同じ性能で同じ値段、とはいきません。

加工面では、生分解性プラスチックは熱可塑性に限られます※3。融点も樹脂ごとに異なり、ポリカプロラクトンは60℃と低いことが記されています※7耐熱性が要る用途では、選択肢がかなり絞られます。

ロードマップの導入基本方針は原料の多様化(食料競合等の持続可能性への配慮)、供給拡大、コスト最適化、使用時の機能向上、使用後のフロー調和性、ライフサイクル全体の持続可能性の確認を対応すべき事項に挙げています※1。これらが現時点の課題です。

食料競合についてJBPAは、使われているトウモロコシはデントコーンと呼ばれる家畜用飼料などに使用される種類で直接的には人間の食料ではないこと、サトウキビは砂糖を作る際に副生する廃糖蜜を使っていること、トウゴマのひまし油はもともと非可食であることを説明しています※4原料が何で、食料と競合しないかを確認できると説明がしやすくなります。

進め方としては、全量を切り替えず一部の用途・ロットで試すほうが安全です。

リサイクルとの関係 — 混ぜる前に決めておく

ロードマップが類型1に「リサイクルに悪影響がない」という条件を置いているのは、この論点があるからです※1。化学構造が従来樹脂と同じバイオPE・バイオPETは既存の再生ルートに乗せやすい一方、生分解性プラスチックが従来樹脂の回収物に混ざると、再生材の品質に影響し得ます。

ですから採用時は「使い終わったあとどこへ行くか」を先に決める必要があります。JBPAが挙げる生分解性プラスチックのメリットも、屋外に置かれて回収しにくい製品の廃棄物削減と、食品残渣と一緒に生分解して堆肥などの資源にする再資源化の2つで、いずれも「どこで分解されるか」が組み込まれた使い方です※3

受け入れ条件は自治体や施設によって異なります。採用前に実際の排出先へ確認するのが確実です。ここを飛ばすと、説明と実態がずれる状態になりかねません。

制度面の全体像はプラスチック資源循環促進法と事業者の対応、方針を調達基準の条文へ落とす手順はサステナブル調達と企業の環境対応で扱います。

バイオプラスチックを表すイメージ。白い成形サンプルをノギスで挟み、寸法を測っている手元

誤解とグリーンウォッシュ — 表示で気をつけること

表示の書き方を誤ると誇大な主張になりやすい領域です。環境省の「環境表示ガイドライン」(令和8年3月改定)は、主に自己宣言により環境表示を行う事業者・事業者団体を対象に、ISO/JIS Q 14021規格に基づく「5つの基本項目」を定めています※8

  • あいまいな表現や環境主張は行わないこと
  • 環境主張の内容に説明文を付けること
  • 製品のライフサイクル全体を考慮すること
  • 環境主張の検証に必要なデータおよび評価方法が提供可能で、情報にアクセスが可能であること
  • 製品または工程における比較主張はLCA評価、数値等により適切になされていること

対象は商品パッケージ・カタログ・広告に加え、取引に直接関係しない環境表示(CSR、イメージ広告など)も含みます※8会社案内やウェブサイトの記述も範囲内です。

誤解を招きやすい表現何が問題かどう書き換えるか
「自然に還ります」分解の環境と条件が示されていない※3「◯◯の環境で、◯◯試験により生分解度◯%が確認」と条件つきで書く
「海に流れても分解します」海洋は微生物密度が桁違いに低く、別の基準(90%以上)で扱う※2海洋生分解性の認証の有無を明示し、「回収が原則」を併記する
「植物由来だから土に還る」原料と分解性は別の軸。バイオPE・バイオPETは生分解しない※1「バイオマス由来です(生分解性はありません)」と分けて書く
「バイオマス素材使用」だけの表示比率が不明。閾値は制度により25.0重量%、乾燥重量10%と異なる※2※9バイオマス度を数値で示し、どの制度の基準かを添える
「でんぷん配合で生分解」ポリエチレン+デンプン系は生分解性プラ識別表示制度で認められていない※3生分解性を主張しない。または認証の有無を明示する

最後の行についてJBPAは「ポリエチレンは生分解性プラスチックではありませんから、ポジティブリストに登録されることはありません」と述べています※3「植物成分を混ぜた」ことと「生分解性である」ことは別だという判断が明示されています。

もう1点。海洋生分解性は「海に捨ててよい」という意味ではありません。JBPAは、使用後の回収が原則であるとしたうえで、それでもなお意図せず環境中に漏出するプラスチックが多い、という文脈でこの制度を位置づけています※2意図せぬ漏出への備えであって、投棄の許可ではありません。

調達側のチェックポイント

供給側の説明を評価するために聞く項目を整理します。どこまで根拠が揃っているかを把握するのが目的です。

項目聞き方曖昧なときの読み方
軸の特定バイオマス由来ですか、生分解性ですか、両方ですか即答できないなら供給側でも整理されていない可能性がある
バイオマス度比率は何%ですか。どう測定しましたかC-14(AMS法)等の測定方法まで答えられるか※4
分解環境どの環境で分解しますか(コンポスト/土壌/水系/海洋)環境を特定せず「生分解します」だけなら要確認
試験どの規格の試験ですか。生分解度は何%、期間は何日ですかISO/JISの番号で答えられるか※3
認証識別表示制度の認証はありますかなければ根拠資料を求める※2
使用後想定処理は何ですか。受け入れ先はありますか排出先が未定だと生分解性の意味が失われる※1
供給条件最小ロット、リードタイム、価格の前提数量は試作と量産で条件が変わることがある
表示の根拠表示文言の根拠資料はありますか環境表示ガイドラインの5つの基本項目で確認する※8

目的は供給者を試すことではなく、自社が対外的に何を言えるかを確定させることです。根拠が手元にない主張は、そのまま自社のリスクになります。回答は文書で受け取り、社内向けには「言えること」と「言えないこと」を1枚にまとめておくと、営業資料やプレスリリースで根拠のない表現が出ていくのを防げます。

自社の取り組み — ジュート由来のバイオプラスチック「ソナリ」

UNPLACEDは、バングラデシュ生まれのジュート(黄麻)由来バイオプラスチック「ソナリ」について、調達支援・共同実証・製品企画を、日本の企業・自治体向けに行っています。

ソナリは、ジュートのセルロースからつくられた生分解性のバイオプラスチックです。従来のポリ袋に代わる素材として国際的に注目され、「ゴールデンバッグ」「ジュートポリマー」とも呼ばれます。原料のジュートは、栽培に化学肥料や殺虫剤をほとんど必要としない再生可能な植物繊維です。マイクロプラスチックを発生させず、分解後の土壌で植物が育つことが確認されています。この記事の2軸で言えば、原料がバイオマス由来であり、かつ生分解性をもつ——冒頭のマトリクスの左上にあたります。

ただし本記事で述べてきたとおり、実際の分解の進み方は温度・水分・微生物といった環境条件に左右されます。当社としては数値を先に置いて訴求するのではなく、想定する使用環境と排出先を確認したうえで、共同実証を通じて確かめる進め方をとっています。用途としては、レジ袋・ごみ袋・農業資材・ノベルティなどを扱っています。

価格・供給条件は用途と数量により異なります。サンプル提供からのスモールスタートに対応しています。

これから — 評価技術の整備と、市場の現在地

評価技術の整備が進んでいます。NEDOは「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」を2020年度から2024年度にかけて実施し(2024年度予算3.3億円)、「海洋生分解メカニズムに裏付けされた評価手法の開発」と「新技術・新素材の開発」を研究開発項目に掲げています※10。各海洋域の生分解性を評価して基礎データを収集し、実用化の際に共通して活用できる評価手法を確立することが目指されています。「海洋で分解する」を客観的に測る物差しをつくっている段階です。

制度も動いています。海洋生分解性プラ識別表示制度が始まったのは2023年で、日本政府が2019年5月に「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」を策定したことを受けた動きだとJBPAは説明しています※210年前には存在しなかった制度です。裏を返せば、いま調べた内容が数年後も同じとは限らないということです。

市場の規模はまだ限定的です。2023年の国内市場推計はバイオマスプラスチック10.4万トン、生分解性プラスチック7.9万トン。ロードマップが2030年に掲げる「バイオマスプラスチック約200万トン」とは、なお開きがあります※1選択肢は増えているが、まだ主流ではない——これが現在地です。

実務としては2点です。素材の情報は更新されるという前提で、参照した資料の版数と確認日を残すこと。そして根拠の確認を仕組みにすることです。

素材の切り替え自体は目的ではありません。何を減らしたいのかを決め、目的に合う軸を選び、条件を確認する。この順序さえ守れば、選択肢が増えることは追い風になります。環境対応を事業の継続という観点から見る話はゴーイング・コンサーンとはでも触れています。

よくある質問

見ている軸が違います。バイオマスプラスチックは「原料が再生可能な有機資源由来か」という原料の話、生分解性プラスチックは「微生物の働きで分子レベルまで分解し、最終的に二酸化炭素と水になるか」という使用後の話です。両方を満たすものも、片方だけのものもあります。

還るとは限りません。バイオPEやバイオPETのように、原料が植物でも化学構造は従来の樹脂と同じで生分解しないものがあります。逆にPBATやPBSのように、現状は化石資源からつくられる生分解性プラスチックもあります。原料と分解性は、それぞれ別に確認してください。

いいえ。日本バイオプラスチック協会は、生分解の速度は温度・湿度・微生物の影響で変わり、一般には廃棄後に有機性廃棄物とともに大型堆肥化装置に投入すると短期間で生分解するよう設計されている、と説明しています。分解される環境が用意されて初めて機能する素材です。

海に捨ててよいという意味ではありません。日本バイオプラスチック協会は、使用後の回収が原則としたうえで、意図せず環境中に漏出する分への対策として海洋生分解性を位置づけています。海洋は陸上に比べて微生物の密度が桁違いに低いため、別の基準(指定する試験で生分解度90%以上)で扱われます。

日本バイオプラスチック協会の生分解性プラスチック一覧に掲載され、バイオマス側では「全面的バイオマス原料プラスチック」に分類されています。つまり原料がバイオマス由来で、かつ生分解性をもつ樹脂です。国立環境研究所の解説では、透明性に優れ農業用シートや食品トレイなどに使われるとされています。分解の条件は環境に左右されます。

国立環境研究所の解説は、従来のプラスチックより高価であること、物性・成形性が従来品に劣る場合が多いこと、コンポスト施設の整備が遅れていること、分解の制御が難しいことを課題として挙げています。また同協会によれば熱硬化性のものはなく、耐熱性が要る用途では選択肢が絞られます。

日本バイオプラスチック協会が「バイオマスプラ」「生分解性プラ」「海洋生分解性プラ」の3つの識別表示制度を運営しています。主な基準は、バイオマスプラがバイオマス由来成分25.0重量%以上、生分解性プラが指定する試験で60%以上の生分解度、海洋生分解性プラが90%以上の生分解度です。ほかに日本有機資源協会の「バイオマスマーク」(乾燥重量10%以上)もあります。

日本バイオプラスチック協会は、生分解性プラ識別表示制度においてポリエチレン+デンプン系製品を生分解性プラスチック製品と認めていないと明言しています。ポリエチレンは生分解性プラスチックではないためポジティブリストに登録されず、生分解性プラマークが付くことはないと説明されています。

混ぜる前提では考えないほうが安全です。国のバイオプラスチック導入ロードマップは、バイオマス由来の汎用プラスチックのうち「リサイクルに悪影響がない」ものを1つの類型として区別しています。生分解性プラスチックは、堆肥化・バイオガス化や土壌へのすき込みなど、分解される場面が想定された用途に向きます。

素材を探す前に「何を減らしたいのか」を決めてください。化石資源の使用とCO2排出を減らしたいならバイオマス由来の軸、回収しきれず環境へ残るごみを減らしたいなら生分解性の軸です。そのあとで分解環境・試験規格・認証の有無・排出先を順に確認すれば、比較がぶれません。

参考文献

  1. ※1 バイオプラスチック導入ロードマップ(令和3年1月策定) 環境省(2026.08.03確認)
  2. ※2 識別表示制度(バイオマスプラ/生分解性プラ/海洋生分解性プラ) 一般社団法人日本バイオプラスチック協会(2026.08.03確認)
  3. ※3 生分解性プラスチック入門 一般社団法人日本バイオプラスチック協会(2026.08.03確認)
  4. ※4 バイオマスプラスチック入門 一般社団法人日本バイオプラスチック協会(2026.08.03確認)
  5. ※5 環境ラベル等データベース:生分解性プラマーク(生分解性プラ識別表示制度) 環境省(2026.08.03確認)
  6. ※6 環境ラベル等データベース:海洋生分解性プラマーク(海洋生分解性プラ識別表示制度) 環境省(2026.08.03確認)
  7. ※7 環境技術解説:生分解性プラスチック 国立環境研究所 環境展望台(2026.08.03確認)
  8. ※8 環境表示ガイドライン(令和8年3月改定) 環境省(2026.08.03確認)
  9. ※9 バイオマスマーク(よくある質問) 一般社団法人日本有機資源協会(2026.08.03確認)
  10. ※10 海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)(2026.08.03確認)
  11. ※11 作物残渣の同時すき込みによる生分解性マルチの土壌分解促進を簡易メッシュバッグ法で評価 農研機構(2026.08.03確認)

Author

株式会社UNPLACED

「場所にとらわれず、居場所をつくる。」を理念に、企業向けのAI基礎研修・AIコンサルティング、ジュート由来の生分解性プラスチック「ソナリ」、ワークマネジメントサービス「OginAI」を提供しています。人手不足・DX・環境対応という経営課題に向き合う企業と伴走します。

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