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1on1ミーティングの進め方 — 面談を「報告会」にしないために

最終更新日 2026.04.17

監修:株式会社UNPLACED

30分の1on1が、気づくと10分の進捗確認と20分の指示で終わっている——よくある光景です。原因は上司の話しすぎではなく、評価面談と1on1の目的が混ざったまま同じ時間に押し込まれていることにあります。頻度・アジェンダ・聞き方・記録の扱いという4つの設計を、公的な調査資料を参照しながら順に決めていきます。

結論:1on1は上司が話す場ではなく、部下が言語化する場です

1on1ミーティングがうまくいかないとき、最初に疑うべきは進め方ではありません。その時間を何のために使うのかが、上司と部下でずれていることです。

1on1の目的は、部下が自分の状況を自分の言葉にすることを助ける点にあります。仕事の詰まりも、この先どうなりたいかも、頭の中にあるうちは輪郭がぼやけています。人に話して初めて「自分は何に困っていたのか」がはっきりする。その言語化を手伝うのが上司の役割です。指示を出す時間でも、進捗を確認する時間でもありません。

ここで問題になるのが評価面談との混同です。評価面談は、過去の期間の成果を判定し、処遇に接続するための場です。目的が違うだけでなく、力の向きが逆になっています。評価面談で部下が持つのは「よく見せる」動機であり、1on1で要るのは「困っていることを正直に出す」ことです。この2つを同じ時間に押し込むと、部下は安全側に倒れます。こうして1on1は報告会になります。

実装の要点は2つです。評価面談と1on1を切り分け、その切り分けを部下側にも伝えること。そして議題を部下が持つ仕組みにすること。聞き方の技術を管理職に教えても、ここが変わらなければ報告会に戻ります。

この記事の位置づけ
本記事は1on1という面談そのものの運用設計に絞っています。新人への指導計画はOJTの進め方 — 属人化させない計画書と、教える側の育て方、管理職の役割全体の変化はAI時代に管理職に求められる役割の変化で扱っています。重なる論点はそちらに譲ります。

1on1ミーティングとは — 他の面談との位置づけ

1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で、定期的に行う短い対話を指します。一般には、議題は部下側が持ち、上司は聞き役に回るものとして運用されます。

「1on1」という言葉に法令上の定義はありません。呼び方も中身も各社が決めています。だからこそ、社内で使い始めるときには「自社ではこう定義する」を先に書く必要があります

社内にはすでに複数の面談があるはずです。まず並べてください。

面談の種類主な目的議題を持つ側処遇との接続
1on1詰まりの解消と、部下の言語化の支援部下直接は接続しない
目標設定面談期の目標と評価基準のすり合わせ上司と部下接続する
評価面談期間の成果の判定と、その伝達上司接続する
キャリア面談中長期のキャリア形成の支援部下直接は接続しない
産業医等による面接指導健康の確保産業保健の専門職接続しない

この表を作ると、目的が重複している面談が見えてきます。重複したまま残すと、現場は同じ話を何度もすることになります。1on1を足すなら、どの面談と役割を分けるかを同時に決めてください。

なお、キャリア面談にあたるものは、公的な制度の文脈ではキャリアコンサルティングとして整理されています。厚生労働省は、これを研修と組み合わせて体系的・定期的に行う取組みを「セルフ・キャリアドック」と呼び、「キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み」と定義しています※31on1はこれを代替するものではありません。日常の詰まりを扱う1on1と、中長期のキャリアを扱う面談は、頻度も担当者も分けて設計するほうが機能します。

評価面談・進捗報告との違い — 3つを並べて比べる

もっとも混ざりやすい3つを、同じ観点で並べます。

1on1評価面談進捗報告(定例)
目的部下の言語化と詰まりの解消成果の判定と伝達状況の共有と調整
主役部下上司案件・業務
扱う時間軸いまと、この先過ぎた期間直近の予定
議題を作る人部下上司上司または担当者
頻度の目安週1回〜月1回半期または四半期週1回など
処遇への接続しないするしない
記録の共有範囲本人と上司人事を含むチーム全体
失敗時の症状報告会になる納得感が出ない読み上げ会になる

いちばん大きな違いは「議題を誰が作るか」です。評価面談と進捗報告は上司が持ち、1on1だけが部下側にあります。ここが逆転した瞬間に、1on1は進捗報告に戻ります。

次に大きいのが処遇との接続です。話したことが評価に直結すると分かっていれば、部下は困りごとを出せません。「できていない」と言うことが不利になるからです。1on1の内容を評価の材料にしないという運用上の約束が、この場を成立させています。

とはいえ、上司は評価者でもあります。完全に切り離すことはできません。現実的な落としどころは、「1on1で聞いたことを、評価の根拠として新たに持ち出さない」という線です。この線を文書に書いておくと、上司側も迷わずに済みます。

時期の設計も要ります。評価面談の直前・直後に1on1を置かないほうが安全です。近接していると、部下は1on1を評価の前哨戦として受け取ります。

なぜ1on1が「報告会」になるのか — 5つの構造

報告会化は上司の姿勢の問題として語られがちですが、多くの場合、そうなるように場が設計されているだけです。原因は次の5つに整理できます。

  • 1. 議題が無いまま始まる。空白の30分を埋めるのは、情報を多く持っている側です。上司が「あの件はどうなりましたか」と聞き始め、そこから先は進捗確認になります。
  • 2. 上司が「何か助言しないと」と思っている。沈黙を自分の準備不足だと感じると、話し続けて埋めようとします。部下は聞き役に回り、話す準備をしなくなります。
  • 3. 評価の時期と重なっている。評価面談の前後に置かれた1on1では、部下は減点されない話し方を選びます。本人に悪気はなく、状況がそうさせています。
  • 4. 定例会議と役割が重なっている。チームの定例で進捗を共有しているのに、1on1でも同じ話をする。会議体の役割分担が決まっていないことの表れです。
  • 5. 間隔が空きすぎている。2か月ぶりの面談では、この間に何があったかの共有だけで時間が終わります。

このうち1と5は仕組みで解けます。議題を部下が事前に書く形にし、間隔を詰める。2は練習で変わります。3と4は制度側の調整が要ります。上司個人の努力に原因を求める前に、この5つを先に点検してください。

公的な調査から見える「定期的な面談」の現在地

1on1そのものを対象にした公的統計は見当たりません。近い位置にあるのが、厚生労働省の「能力開発基本調査」におけるキャリアコンサルティングに関する項目です。

令和7年6月27日に公表された令和6年度調査では、キャリアコンサルティングを行うしくみを導入している事業所は、正社員に対して49.4%、正社員以外に対して31.4%とされています※1

注目したいのは実施する時期です。導入している事業所の回答(正社員)は次のとおりです※2

実施する時期割合
1年に1回、3年に1回など、定期的に実施する53.8%
労働者から求めがあった時に実施する50.5%
人事評価のタイミングに合わせて実施する49.1%
昇進、異動、職場復帰の時など、人事管理の節目に実施する30.5%
入社3年目、5年目など、入社から一定の年数が経過した時に実施する19.9%
40歳、50歳など、一定の年齢に到達した時に実施する11.6%

約半数が「人事評価のタイミングに合わせて実施する」と答えています。運用の効率としては理解できますが、キャリアの相談と評価の伝達が同じ時期に置かれやすい構造を示しています。1on1を始めるときに、この構造をそのまま引き継がないよう注意が要ります。

導入していない事業所の理由も参考になります。正社員について多い順に、「労働者からの希望がない」46.3%、「キャリアコンサルタント等相談を受けることのできる人材を内部で育成することが難しい」39.8%と続きます※2最多が「希望がない」である点は示唆的です。制度が無い状態では、部下の側から面談を希望するという発想自体が出にくい。会社側から場を用意しないと始まらないということです。

なお、この調査はキャリアコンサルティングについてのものであり、1on1の実施率を示すものではありません。数値をそのまま読み替えないでください。

頻度と時間の決め方

最初に決めるのは頻度です。多くの組織が「月1回・60分」を選び、そして続かなくなります。

頻度1回の時間の目安向く状況起きやすい問題
週1回15〜20分立ち上がり期の新人、環境が大きく変わった直後話す材料が尽きる/上司の負荷が重い
隔週30分多くのチームにとっての標準的な選択肢予定が流れると1か月空く
月1回30〜45分業務が安定していて、他の接点も多い場合近況共有だけで終わりやすい
四半期に1回45〜60分キャリアや中長期の話に用途を絞る場合日常の詰まりは拾えない

選ぶときの原則は「1回の長さより、間隔を空けないこと」です。60分を月1回より、30分を隔週のほうが機能する場面が多くなります。困りごとには賞味期限があるからです。1か月前に詰まっていたことは、面談の頃には解決しているか手遅れかのどちらかです。

時間は30分を基準に、短くする方向で調整してください。長く確保すると、埋めるために報告が始まります。15分でも、間隔が詰まっていれば成立します。

上司が担当できる人数も制約になります。10人の部下に隔週30分なら、月に10時間が面談に固定されます。準備と記録を含めればそれ以上です。導入前にこの時間を計算し、上司の他の業務を減らすかどうかを決めてください。

そして延期のルールです。決めておくべきは「流れたら必ず振り替える」という一点です。振り替えずに次回へ送ると間隔が倍になり、次も流れます。在宅勤務規程で決めること — 労働時間・中抜け・費用負担・情報管理のように働く場所が分かれている場合は、立ち話が発生しないぶん、定期の接点の意味が大きくなります。

アジェンダは誰が作るか — 1on1シートの設計

結論から言うと、議題は部下が作ります。ここを上司が持つと、どれだけ聞き方を工夫しても報告会に戻ります。

ただし、いきなり「好きなことを話していい」と言われても書けません。そこで枠だけを渡します。これがいわゆる1on1シートです。

書くことこの欄がある理由
今日話したいこと(最大3つ)部下が事前に記入議題の所在を部下側に置く
前回の続き前回の合意事項と、その後どうなったか話が単発で終わらないようにする
困っていること・詰まっていること進捗ではなく、進行を妨げているもの報告と明確に区別する
上司に頼みたいこと判断・調整・情報の提供上司が何をする場かを示す
次回までにやること面談中に双方で記入合意を残し、次回の起点にする

欄は5つ以内にしてください。項目が多いと記入が負担になり、形骸化します。書かれない欄が出たら削ります。

「最大3つ」という上限にも意味があります。部下は何を優先するかを考えます。この作業自体が言語化の一部です。

記入のタイミングは面談の前日までとし、上司は当日までに目を通します。空欄で出てきた場合は、それ自体が情報です(後述します)。

シートの置き場所は、本人と上司の両方が見られる場所にします。上司の手元のメモだけにすると、部下からは何が書かれているか分からず、次第に話しにくくなります。

話すテーマの引き出し — 4つの領域(1on1のネタ)

「1on1で何を話せばよいか分からない」という声は、上司側からも部下側からも出ます。テーマを4つの領域に分けておくと選べるようになります。

領域扱うこと問いの例
業務いま詰まっていること、判断に迷っていること「決めきれずに止まっていることはありますか」
キャリア今後やってみたいこと、身につけたいこと「次に触ってみたい仕事はありますか」
関係チーム内の連携、他部署とのやりとり「相談しにくい場面はありますか」
体調・状況業務量、休みの取れ方、集中しにくさ「無理をして回している部分はありますか」

使い方の原則は「毎回すべてを扱わない」ことです。4領域を1回で回すと、どれも表面をなぞって終わります。1回につき1領域を軸にし、残りは部下が出してきたときに拾うくらいが現実的です。

領域の比重は相手によって変わります。入社直後は業務と関係が中心になり、3年目以降はキャリアの比重が上がります。経験の長い相手に業務の詰まりばかり聞くと、細かく管理されていると受け取られます。

体調・状況の領域は、扱い方に注意が要ります。厚生労働省のメンタルヘルス指針にもとづく「4つのケア」では、管理監督者が行う「ラインによるケア」として、心の健康に関する職場環境等の改善と、労働者に対する相談対応が挙げられています※4。1on1は、その日常的な接点として機能し得ます。ただし上司が行うのは、気づくことと、つなぐことまでです。診断や治療ではありません。気になる様子があれば、産業医・産業保健スタッフや社内の相談窓口につなぐ。この線引きを、導入時に管理職へ明示しておいてください。

1on1ミーティングを表すイメージ。白い製図用紙に描かれた円と方眼の上で、若い手と年配の手がシャープペンシルを持ち線を引いている

聞き方の型 — 開いた質問・沈黙・言い換え

聞き方は素質ではなく型です。次の3つで、話される量が変わります。

1つ目、開いた質問(オープンクエスチョン)。「はい/いいえ」で答えられる問い(閉じた質問)は、確認には向きますが、話を引き出しません。

閉じた質問開いた質問
順調ですかどのあたりが思ったより時間がかかっていますか
困っていることはないですかいま止まっているものはどれですか
この進め方でいいですかほかにどんな進め方が考えられそうですか
大丈夫ですか何があれば楽になりますか

「困っていることはないですか」は善意の問いですが、「ない」と答えるほうが楽な形をしています。答えやすい形に変えるだけで、返ってくる情報が変わります。

2つ目、沈黙を待つ。質問のあと、相手が考えている数秒を埋めないでください。多くの上司は2〜3秒で耐えられなくなり、言い換えたり自分の考えを足したりします。そこで相手の思考が中断されます。目安として5秒は黙って待つ、と決めておくと実行しやすくなります。

3つ目、言い換えて返す。相手が話したことを、要約して返します。「つまり、仕様が固まる前に見積もりを出さないといけないのが苦しい、ということですか」。合っていれば話が進み、違っていれば訂正が入ります。どちらに転んでも前に進みます。

あわせて、「なぜ」を減らすと楽になります。「なぜできなかったのですか」は詰問に聞こえます。「どこで止まりましたか」「何があれば進みましたか」に置き換えると、同じ情報が責める形を取らずに出てきます。

話す割合の目安として上司3割・部下7割という言い方をされることがあります。厳密な根拠のある数字ではありませんが、話しすぎていないかを振り返る目安にはなります。助言をするなという意味ではなく順番の問題で、聞き切ってから「私の考えを言ってもいいですか」と断って出す。それだけで受け取られ方が変わります。

部下が話さないときに何をするか

「話すことがない」と言われる。空欄のシートが出てくる。これらは失敗ではなく情報です。理由によって打ち手が違います。

沈黙の理由現れ方打ち手
話す材料が見つからない「特にありません」が続く領域を指定して聞く。直近の具体的な出来事から入る
話しても変わらないと思っている過去に頼んだことが放置されている前回の合意事項がどうなったかを、冒頭で先に報告する
評価につながることを警戒している良い話しか出てこない評価と切り離す運用を、口頭でもう一度伝える
相手として信用していない表面的な受け答えに終始する個人の努力で解こうとせず、制度で経路を増やす

材料が見つからない場合は、抽象的な問いをやめます。「最近どうですか」ではなく、「先週の見積もりの件、あの後どうなりましたか」から入る。具体的な事実から始めると、そこに紐づいて話が出てきます。

「話しても変わらない」が理由の場合、これは上司側の課題です。前回頼まれたことについて、やったのか、やれなかったのか、やれなかったなら何が障害だったのかを、面談の冒頭で報告してください。1on1が機能するかどうかは、聞き方より「聞いたあとに何をしたか」で決まります。できないことはできないと伝えてかまいません。放置だけが信頼を落とします。

3回続けて話が出てこない場合は、面談の設計そのものを疑ってください。頻度が合っていないか、時間が長すぎるか、他の場で足りているか。「話すことがないなら今日は10分で終わりにしましょう」と切り上げるのも、正しい判断です。時間を埋めるために報告をさせるより、短く終えるほうが次につながります。

相性の問題は個人の努力では解けないため、制度側で経路を増やしてください。直属の上司以外との面談(他部署の管理職や、斜めの関係にあたる先輩)を年に数回置く、といった形です。直属の上司との1on1だけが唯一の相談経路になっている状態は、それ自体がリスクだと考えてください。

1on1でやってはいけないこと

この場を壊す行為は、いくつかに絞られます。

やってはいけないことなぜ問題か
評価を示唆する・予告する部下が安全な話し方に切り替える。以後、困りごとが出てこなくなる
説教・叱責の場にする指導が必要なら別の場で行う。1on1を使うと、呼ばれること自体が罰になる
他の部下と比較する比較は評価の文脈。持ち込んだ時点で相談の場でなくなる
私生活に立ち入りすぎる本人が話していない範囲まで上司から掘り下げにいかない
話した内容を無断で共有する一度起きると、以後は本音が出てこない
予定を繰り返し流す優先度の低い時間だという合図になる

とくに注意したいのが説教と、私生活への立ち入りです。厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動として6つの類型を示しており、その中には「精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)」「個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)」が含まれます※5本人が話していない私的な事情を、上司の側から掘り下げにいくことは避けてください。体調や家庭の事情は、本人が話す範囲で受け取るのが原則です。

指導が必要な場面もあります。分けるべきは場と目的です。是正が必要な事実があるなら、その事実を扱う場を別に設け、記録を残して行う。1on1に混ぜると、部下は「相談すると叱られる」と学習します。相談の場と、指導の場は分けて用意してください。

記録の扱いと守秘 — どこまで書き、どこまで共有するか

記録は必要です。ただし何のために残すのかを決めないと、書けば書くほど話されなくなります

記録の目的は3つに絞れます。継続性(前回の続きから始められる)、合意の確認(次までに誰が何をするか)、引き継ぎ(上司が代わったときに関係をゼロから作り直さない)。この3つに要らないものは、書かなくてよいものです。

書くもの書かないもの
話したテーマの見出し発言の逐語
合意事項と期限、担当上司の主観的な評価・所感
上司が引き受けた宿題健康状態・通院・家庭の事情の詳細
次回に持ち越す論点第三者(他の社員)の実名を伴う評価

もっとも重要なのは、「誰が読めるか」を先に決めて本人に伝えることです。本人だけか、本人と上司か、人事や上司の上長も読むのか。ここが曖昧なまま運用すると、部下は最も広い範囲に読まれる前提で書きます。当たり障りのないことしか書きません。

実務的には、本人と上司が共同で編集し、双方が読める形が扱いやすくなります。人事が集約するのは実施の有無といった運用の記録に留め、面談の中身は集約しないのが原則です。中身まで人事に上げる設計にするなら、そのことを最初に全員へ伝えてください。

健康や家庭の事情など機微な内容が出た場合は、その場で「これは記録に残さないでおきます」と伝えて、実際に残さないでください。共有が必要なときは、誰に何を伝えるかを本人に確認してからにします。

上司が異動する場合の引き継ぎも、事前に本人へ伝えます。黙って全部を渡すのは、最も避けたい形です。

1on1ミーティングを表すイメージ。白い回廊を、二人が並んで歩いている後ろ姿

上司側の準備 — 面談前の15分でやること

準備は量ではなく順番の問題です。次の4つを面談前の15分でやります。

  • 前回の記録を読む。とくに自分が引き受けた宿題を確認します。これを忘れて臨むと、部下の側から見て「言っても無駄な場」になります。
  • 部下が書いたシートに目を通す。3つ挙がっていれば、どれから入るかを決めておきます。空欄なら、直近の具体的な出来事を1つ用意しておきます。
  • 自分が話したいことを1つに絞る。上司側にも伝えたいことはあります。ただし1つまで。複数持ち込むと、それだけで時間が埋まります。
  • 環境を整える。通知を切り、時間どおりに始めて終える。オンラインなら顔が見える設定にし、他の作業をしない。

加えて、上司自身が1on1を受けているかどうかが実は大きく効きます。聞いてもらう経験がないまま聞き役だけを担うのは、負荷が高く続きません。導入するなら経営層・部長層から順に「受ける側」を経験する設計にしてください。

もう1つ、上司が全部を解決しなくてよいと伝えておくことも重要です。「調べて次回までに返します」「私の権限では決められないので上に上げます」で十分です。解決役を演じるほど、上司は話し始めます。管理職に何を求めるかの全体像はAI時代に管理職に求められる役割の変化で扱っています。

導入と定着 — 最初の90日の進め方

全社一斉に始めるのは避けてください。管理職の負荷が一気に増え、質のばらつきが露呈します。

1か月目目的の定義と切り分けの明文化
2か月目試行部署での実施と練習
3か月目振り返りと標準の確定
4か月目〜対象範囲の拡大

1か月目:定義と切り分けを文書にする。自社にとっての1on1の目的、既存の面談との役割分担、評価に使わないという約束、記録の共有範囲。この4点を1枚にまとめます。ここを飛ばして始めると、以降の議論が毎回ゼロから始まります。あわせて、管理職1人あたりの面談時間を計算し、何を減らすかを決めます。

2か月目:一部の部署で試す。2〜3部署に絞ります。管理職には、聞き方の型(開いた質問・沈黙・言い換え)を、講義ではなく実際にやってみる形で練習してもらいます。管理職同士でペアを組み、15分ずつ交代するだけでも気づきが出ます。

3か月目:振り返って標準を決める。試行部署の上司と部下の双方から、続けたいか・何が負担か・シートは使えたかを聞きます。ここでシートの欄を削る判断になることが多くなります。

4か月目以降:範囲を広げる。試行部署の管理職に伝え役をお願いします。人事から説明するより、同じ立場の人が話すほうが伝わります。

人事が用意しておくもの
・1on1の定義と、既存面談との役割分担を書いた1枚
・1on1シートのテンプレート(欄は5つ以内)
・記録の置き場所と、閲覧範囲のルール
・直属の上司以外に相談できる経路
・管理職向けの練習の場(座学ではなく実践)

制度としての人材育成の枠組みに位置づける場合は、人材育成計画(事業内職業能力開発計画)の作り方 — 1枚で書き、更新できる形にするで扱っている計画の中に、面談の目的と頻度を書き込んでおくと、単発の施策で終わりにくくなります。

効果の見方 — 何を測り、何を測らないか

1on1は成果が見えにくい取組みです。測る対象を間違えると、すぐに形骸化します

測ってよいもの測ってはいけないもの
実施率(予定に対して実施された割合)面談の長さ
延期・振替の発生率部下の発言量
シートの事前記入率面談回数を管理職の評価に直結させること
部下側の主観(話しやすさ・合意の実行)相談として出てきた件数の多寡

回数や長さを管理職の評価に直結させると、実施そのものが目的になります。形だけの30分が積み上がるだけです。測るのであれば、実施率と、部下側の主観の2つで足ります。

部下側に聞く設問は、短く具体的にします。「1on1は役に立っていますか」ではなく、次のような形です。

  • 前回の面談で決めたことは、その後に実行されましたか
  • 話したいことを話せていますか
  • この場で話したことが評価に使われる心配は、ありますか

3つ目はとくに重要です。切り分けを宣言していても、伝わっていなければ意味がありません。「心配がある」という回答が一定数出るなら、運用の説明が届いていないということです。

効果が数字に出るまでには時間がかかります。短期で離職率や生産性に結びつけて評価しないでください。参考として、厚生労働省の委託事業として実施された「職場のハラスメントに関する実態調査」では、パワーハラスメントを経験した人の勤務先の特徴として「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」が挙げられており、経験の有無で回答に差がみられたと報告されています※6。因果関係を示すものではありませんが、日常的な対話の量が職場の状態と無関係ではないことの手がかりにはなります。

よくある失敗と、その避け方

導入と運用でつまずきやすい点を挙げます。

  • 失敗1:定義を置かずに名前だけ導入する。既存の面談が「1on1」と呼ばれるようになるだけで、中身は変わりません。目的・切り分け・評価との関係を、先に1枚にしてください。
  • 失敗2:上司が議題を持つ。もっとも多い失敗です。部下が事前にシートを書く運用にするだけで、かなりの部分が変わります。
  • 失敗3:管理職の負荷を計算せずに始める。他の業務が同じままなら、忙しくなったときに最初に削られるのが1on1です。
  • 失敗4:聞いたあとに何もしない。頼まれたことについて、やったのか、やれなかったのかを次回の冒頭で必ず返す。ここが抜けると、聞き方をいくら磨いても話されなくなります。
  • 失敗5:記録の閲覧範囲を決めない。誰が読むか分からない記録の前では、当たり障りのないことしか話されません。
  • 失敗6:回数を評価指標にする。実施が目的化します。測るなら実施率と部下側の主観に留めてください。
  • 失敗7:直属の上司との1on1だけにする。相性の問題は個人では解けません。別の相談経路を必ず用意してください。

最後に1つ。1on1をやめる、あるいは頻度を下げる判断も選択肢に入れておいてください。相談が日常的に行われているチームでは、形式的な面談がかえって負担になります。目的は面談を実施することではなく、部下が詰まったときにそれを言葉にできる状態を作ることです。

よくある質問

上司と部下が1対1で定期的に行う短い対話を指します。法令上の定義はなく、中身は各社が決めています。一般的には議題を部下側が持ち、上司は聞き役に回る形で運用されます。目的は指示や進捗確認ではなく、部下が自分の状況を言葉にすることを助ける点にあります。

目的と、働く力の向きが違います。評価面談は過去の成果を判定して処遇に接続する場で、議題は上司が持ちます。1on1は現在進行形の詰まりを扱う場で、議題は部下が持ち、処遇には直接接続しません。同じ時間に混ぜると部下は安全な話し方を選ぶため、どちらも機能しにくくなります。

1回の長さより間隔を優先してください。60分を月1回より、30分を隔週のほうが機能する場面が多くなります。困りごとには賞味期限があり、1か月空くと自力で解決済みか手遅れかのどちらかになりやすいためです。立ち上がり期であれば、週1回15〜20分という選び方もあります。

理由によって打ち手が違います。材料が見つからないだけなら、抽象的な問いをやめて直近の具体的な出来事から入ります。過去に頼まれたことが放置されていることが理由なら、前回の合意事項がどうなったかを冒頭で報告してください。3回続けて出てこない場合は、頻度や時間の設計自体を見直します。

部下です。上司が議題を持った時点で、聞き方をどれだけ工夫しても進捗報告に戻ります。ただし最初は書けないため、枠だけを渡します。前日までに記入してもらい、上司は当日までに目を通す運用にすると、上司側の準備も同時に片づきます。

「今日話したいこと(最大3つ)」「前回の続き」「困っていること」「上司に頼みたいこと」「次回までにやること」の5つで足ります。欄を増やすと記入が負担になり形骸化するため、運用して書かれない欄が出たら削ってください。上限を設けることには、部下が優先順位を考えるという効果もあります。

誰が読めるかを先に決めて本人に伝えることが前提です。実務的には、本人と上司が共同で編集して双方が読める形にし、人事が集約するのは実施の有無などの運用記録に留めます。健康や家庭の事情など機微な内容は、その場で記録に残さない旨を伝え、共有が必要なときは本人に確認してからにします。

上司が行うのは、気づくこととつなぐことまでで、診断や治療ではありません。厚生労働省のメンタルヘルス指針にもとづく「4つのケア」でも、管理監督者の役割は職場環境等の改善と労働者に対する相談対応とされています。気になる様子があれば、産業医・産業保健スタッフや社内の相談窓口につないでください。

実施率と、部下側の主観の2つで足ります。面談の長さや回数を管理職の評価に直結させると、実施そのものが目的化します。部下への設問は「前回決めたことは実行されたか」「話したいことを話せているか」「評価に使われる心配はないか」のように、短く具体的にしてください。

重くなります。10人に隔週30分なら月に10時間が固定され、準備と記録を含めればそれ以上です。始める前に時間を計算し、他の業務を減らすかどうかを決めてください。対象を絞って試行し、段階的に広げる進め方が現実的です。

参考文献

  1. ※1 令和6年度「能力開発基本調査」の結果を公表します(令和7年6月27日) 厚生労働省(2026.08.03確認)
  2. ※2 令和6年度「能力開発基本調査」の結果について 厚生労働省(2026.08.03確認)
  3. ※3 企業・学校等においてキャリア形成支援に取り組みたい方へ(セルフ・キャリアドック) 厚生労働省(2026.08.03確認)
  4. ※4 4つのケア(用語解説) 厚生労働省「こころの耳」(2026.08.03確認)
  5. ※5 職場におけるハラスメントの防止のために 厚生労働省(2026.08.03確認)
  6. ※6 職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要(令和5年度厚生労働省委託事業) 厚生労働省(2026.08.03確認)

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株式会社UNPLACED

「場所にとらわれず、居場所をつくる。」を理念に、企業向けのAI基礎研修・AIコンサルティング、ジュート由来の生分解性プラスチック「ソナリ」、ワークマネジメントサービス「OginAI」を提供しています。人手不足・DX・環境対応という経営課題に向き合う企業と伴走します。

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